2017.05.15
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代表的なイタリアワイン「キャンティ」と「キャンティ・クラッシコ」、何が違う?

キャンティぶどう畑

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが在住していたヴェネツィアをはじめイタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は、「キャンティ」の選び方について解説します。

まずは「キャンティ」と「キャンティ・クラッシコ」を区別しよう

家飲みワイン愛好家の友人から、イタリア・ワインについてよく聞かれる質問がある。

 

「キャンティは、どれを飲むのがいいの?」

 

確かに、このワインは悩み所が多い。キャンティについては、以前のこのコラムでも映画『ローマの休日』に絡めて、少し触れたことがある。だがそれでは不十分なので、ここでもう少し詳しくまとめてみたい。もちろん、家飲みの視点で!

 

「キャンティ(Chianti)」は、おそらく世界一バリエーションの大変多いワインだ。「キャンティ」とは、土地の名に過ぎない。つまり、トスカーナ州のキャンティ地区で作られたワインは「キャンティ」を名乗ることができる。このキャンティ地区の作付け面積240,000ヘクタールともいわれ、トスカーナ州全体の面積の10%にも相当する広大なものだ。その出荷量もハンパない。D.O.C.G.としてはイタリア最大で、ボトルにしてなんと年間1億3千万本ともいわれている。

 

それがイタリア国内はもとより、世界中に渡るのだ。玉石混交となっても仕方がない。日本でもちょっと注意してもらうとわかる思うが、キャンティは、普通のスーパーにも気軽に並んでいるし、高級デパートやワイン専門店のカーヴで大切に保存されていたりもする。価格も1000円を切るものから、1万円を超えるものまである。どれも「キャンティ」だ。つまり、偽物ではない。この幅の広さが、キャンティをわかりにくくさせている。では、その差は何なのか?

 

「キャンティ」の選択で間違えないコツは、まず「キャンティ」と「キャンティ・クラッシコ」を区別することだと、イタリアではよく言われる。その差は大きい。結論から言うと「キャンティ・クラッシコ(Chianti Classico)」を選ぶことを私はおすすめしたい。味の好みには個人差があるが、キャンティの主要品種サンジョヴェーゼ(Sangiovese)のポテンシャルをしっかりと味わえるのは「キャンティ・クラッシコ」であると思うからだ。

「キャンティ」と「キャンティ・クラッシコ」の中身の違いを知ろう

わかりやすくなると思うので、専門的な話も交えさせていただく。キャンティという地域はワイン生産において、大きく2つに分けられる。伝統的なワイン生産の実績を誇る「キャンティ・クラッシコ地区」とその他の「キャンティ地区」だ。誤解を恐れずに言えば「キャンティ・クラッシコ」は「老舗」であり、その他の「キャンティ」は「新参者」である。(厳密に言うと、広いキャンティ地区から、1996年に伝統あるキャンティ・クラッシコ地区が独立した形)。それにより「キャンティ・クラッシコ地区」とその他の「キャンティ地区」では、政府の指導基準に違いが現れた。例えば、

 

【キャンティ地区】サンジョヴェーゼ最低75%使用、黒ブドウ、白ブドウの混醸も可能(ブドウ品種1つあたり最大10%)

 

【キャンティ・クラッシコ地区】サンジョヴェーゼ最低80%使用、混醸は黒ブドウのみ。白ブドウの混醸は2006年以降禁止

 

まずは上の通り、使用されるブドウの内容が違うのだ。極端な例を言えば、サンジョヴェーゼに白ブドウを20%以上混ぜ込んだワインも、サンジョヴェーゼ100%のワインもラベルには「Chianti」の名がつく。だが、その味が全く別物になることは、想像に難くないだろう。

 

さらに別の例をあげよう。

 

【キャンティ地区】最低熟成期間4ヶ月、リゼルヴァは最低熟成期間26ヶ月

 

【キャンティ・クラッシコ地区】最低熟成期間11ヶ月、リゼルヴァは最低熟成期間24ヶ月、さらに瓶内熟成3ヶ月(合計27ヶ月)

 

この「熟成期間」がブドウのポテンシャルを引き出すわけだが、上の通り、「キャンティ・クラッシコ」のほうが時間を長く確保していることがわかる。「キャンティ地区」ならば、多様なブドウを混ぜ込み、わずか4ヶ月寝かせただけで出荷が可能だ。そのようなワインは、口当たりは良いものの、ブドウが持つ深みを味わうことはできない。だが大量生産には向いている。

 

このように両者の特徴は一目瞭然、「キャンティ地区」は自由度が高く、「キャンティ・クラッシコ地区」のほうが規律が厳しい。この自由度を作り出す原因に、キャンティの特徴の1つ「混醸」がある。これは、先のコラムにも書いたが、元々トスカーナ地方にはサンジョヴェーゼを混醸する「ゴヴェルノ」という醸造法があり、さらに1850年代にベッティーノ・リカーゾリ男爵が、他種と混醸する手法を確立したことが基盤となって現代に至っている。

 

このようにサンジョヴェーゼは、単独でよりも、ブレンドされることが歴史的に長いブドウであった。というのも、この品種は土地や気候の影響を受けやすく、例えばほんの数百メートル離れただけで変異種を生み出すことも稀ではない繊細さを持っている(それが良いほうに出たものにブルネッロがある)。したがって収穫の質にも波がある。この不安定なサンジョヴェーゼを、より安定的に、より良い品質で80%以上も使える地域が「キャンティ・クラッシコ地区」というわけだ。つまりこのブドウの栽培により適した地域であり、さらにそのポテンシャルを十分に引き出す規律が整っている。ブドウの個性をしっかり引き出すワインを、安定的に生み出せる環境が整っているのが「クラッシコ地区」だと言えよう。

同じ「D.O.C.G.(統制保証原産地呼称ワイン)」の表示でも中身は異なることを知ろう

「キャンティ」と「キャンティ・クラッシコ」の違いは、これだけでもわかっていただけるかと思う。ただもう一つ、両者をわかりにくくしているものがある。「D.O.C.G.」の表示だ。イタリアのワイン法で定められる格付けのことで、D.O.C.G.とは最高ランクの印である。実は「キャンティ」も「キャンティ・クラッシコ」も、ともにD.O.C.G.に認定されいるのだ。この認定を得たワインには、ボトルの首の部分を巻くように、細長いシールが貼られている。これを見るとつい安心して買ってしまう。歴史的には、まず1967年にキャンティ地区全体がD.O.C.のランクに認定され、1984年にD.O.C.G.に昇格する。つまり、先に地区全体が最高ランクの認定を得たのであるが、その後の一部の生産者の姿勢や品質に「危機感」を覚えた伝統ある地区が、より厳しい規律のもとに結束し、1996年独自にD.O.C.G.の認定を勝ち取ったのが「キャンティ・クラッシコ地区」というわけなのだ。だから、同じ「D.O.C.G.」のラベルを見ても、異なる基準で作られており、ワインの内容は違ったものであることを、先の説明から思い出していただきたい。

 

ここで、少しだけ補足させていただく。ここまで読んで、もし「キャンティ地区」のワインに否定的な印象を受けたら、お許し願いたい。そうではない。「キャンティ」は「自由度が高い」と先ほど書いた。そのため逆に、独自のブレンドなど創作もしやすい。したがって、驚くほど個性的なワインが生み出せるのも「キャンティ」の魅力だ。「キャンティ地区」のワインでも評価の高いワインはいくらでもある(キャンティ地区の中に7つの特別認定地域があり、ワインにその地名を入れブランド化できたりする)。すると、価格の高い「キャンティ地区」のワインも存在する。逆に「クラッシコ」でも量産タイプだと低価格だったりする。このような事情も迷いを生む要因になるだろう。ただ、一般の店頭で求める場合、「外れ」を避け、サンジョヴェーゼの旨味を安定して味わうならば「クラッシコ」のほうが相応しいと思うわけだ。

 

さてここまでの話で、「キャンティ」に興味を持っていただいたならば、さらに「おいしい」話が続く。特に「クラッシコ」のワインは日本の食事との相性のいい数少ない赤ワインだと私は思っている。たとえ肉料理であっても、和の調理法と赤ワインは合わせにくいものだ。そんななか、良質な「キャンティ」は絶妙に和食に順応してくれる。そんな話を、次回コラムでご紹介したい。それまでワインを飲んで、楽しみにお待ちください。

 

※記事の情報は2017年5月15日時点のものです。

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