【コンビニ家飲み大作戦!!】ぬる燗トロ~リ半熟でぽっかぽか

「コンビニ家飲み大作戦」とは、身近なコンビ二エンスストアの棚を探索して、理想の家飲みを組み立てる、世にもささやかな「大作戦」です。今回は、そぼ降る秋雨の中、とある公認会計士がコンビニで見つけた、とろ~りとろける晩酌。

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今回のコンビニイエノミスタ

半沢祐吉(仮名)

会計事務所勤務の音楽好き公認会計士、39才。クライアントの書類の不備には慣れっこだが、たまに心が折れそうになる日も。

半沢祐吉(仮名)

雨のコンビニカップ酒

今担当してる喫茶店の店主、登記簿謄本持ってきてって言ったら、なぜか、3年前の持ってきちゃって、資本金から何から違うし、なんでですか、最新のに決まってるじゃん。いい人なんだけど、とんでもないとこヌケてるんだよね。3ヶ月に一度ぐらい、こんな日があるんです。結局、今日は仕事、何も片付かなかった。もう、ほんと、なんだかなー。

最寄りの駅を降りると、細かい雨が降っています。とりあえず傘をさすほどでもないんですが、でもそれなりにじっとり濡れる、微妙な雨。ちょっとコンビニでも寄って家飲みといきましょうか…… と、いつもはほとんど寄ることもない、駅前のコンビニへ足をむけたのです。前に寄ったのはいつだったか。確か、半年ぐらい前、同僚のお父さんのお通夜の日、香典袋を買ったのが最後? 首筋をスウスウ通り過ぎる秋の風と、冷たい雨粒に刺激されて、もう、飲む酒は決まっているんです。日本酒。このなんだかショボい気分を癒やしてくれるのは、日本酒しかない!

まずは酒の棚の前に佇み、カップ酒を物色。最近のカップ酒、いろいろ出てるんだなあ。昔ながらのワンカップ大関も「大吟醸」なんてある。ん?これは?ひときわスマートな容姿で主張してくるカップ酒があります。有名ブランド「八海山」のカップか。銀色のフィルムに覆われて、なかなかの男前です。よしこれにしよ!
よしこれにしよ!

惣菜の小道に迷って

しかし、惣菜の品揃えがここまでとは! 日本酒と決めたからには、そうそうツマミにブレはないだろうと思っていたんですが、どうして、色々悩んでしまいます。意外に、デミグラスハンバーグに日本酒でも合うんじゃないか、とか。そんなフラフラした目線で棚を眺めていくと、なんだか妙に卵が気になって来ました。卵かあ、いいね。メインのつまみは卵に決めるとして…… どの卵か。味付きゆで卵に、半熟味玉、卵焼きもあります。うーん、卵ならレジ前のおでんという手もあるし。今時のコンビニ、たかが卵でこんなに悩ませるとは。おでんの卵なら、ほっくりしてて、しかも暖かい汁つき。味玉なら、中身とろ~り。しばし熟考するうち、日本酒のまったり感と合わせるなら、とろっとした半熟の黄身か?という気がしてきました。そうです半熟です。そう、これ、「半熟煮たまご」、こいつに決めましょう。
とろっと卵黄の半熟煮たまご

黒豆の誘惑

さて、もう一品。とろっとした半熟卵に、まったり日本酒。あとは何? 惣菜の棚をじっくり眺めていくと…ぽりぽりっと漬物? あ、卯の花なんてのもあるな。その右側は? ひじき煮かあ。どうするか……、と、かわいらしいパックに入った煮豆を発見! 黒豆の煮豆、煮豆なんてものがこの世にあることすら忘れかけていた。いいね、これ。白くて丸い卵と、黒くて丸い黒豆。今日のつまみは、煮玉子と煮豆の兄弟だ。
黒豆の誘惑

ぬる燗とろ~りの晩酌

全身じめっとした衣服を脱ぎ捨て、とりあえシャワーでさっぱりしたら、晩酌開始。
さてと、日本酒。ここはぬる燗で、ゆるゆると行くとしましょう。レンジでチン! ならカンタンですが、ここは、家飲み好きの職場の先輩に教わったあれを試してみるのです。ポットでお湯を沸かし、どんぶり的な器に注ぐ…… そこに、蓋をはずしたカップ酒をとぷん。カップ酒のお風呂燗というわけ。
本日の晩酌
蓋をはずしたカップ酒をとぷん
味玉に割り箸を入れると、トロッとした黄身が顔を覗かせます。ちょっと冷えているので流れ出すまではちょっと時間が必要。出汁が滲みた白身に黄身をまとわりつかせて…… 口の中に。そして、人肌まで温まったカップ酒を一口。とろっとした黄身と出汁の風味、それを優しい人肌燗が包み込む……! 幸せです、私、幸せです。そして、お久しぶりです、煮豆さん。黒くてつやっとしたのを、落とさないよう、慎重に箸でつまんで、ぽいっと口へ。甘い! 柔らかい! そして、思った以上に酒に合う!
味玉に割り箸を入れると、トロッとした黄身が顔を覗かせます
つやつや黒豆
風呂に浸かったカップ酒はぬる燗ぐらいに温まってきました。うん、ぬる燗、うまい。とろ~り卵黄とぬる燗カップ酒、甘露甘露の煮豆。この三角形を繰り返すうち、どんどん心が温まって来ます。窓の外、雨はまたちょっと強くなったようです。だけど、私の心はぽっかぽっかに。

シメは出汁割りとジャズ

残る酒もあと四分の一、お名残り惜しい。…と、煮玉子のパッケージに残った出汁汁がなにか囁きかけてきます。ふむふむ、なるほど、これを酒に入れて……そう、おでん屋台では定番の出汁割りです。残ったカップ酒に、煮玉子の汁を慎重にそーっと注ぎ入れます。濃厚な出汁に、酒の風味、絶品! これはいい! そうだ、久々に、ジャズでも聴いちゃおうかな。目をつむってCD棚からひっぱり出したのは、スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト、あれ、これはジャズじゃくて、ボサノバか? まあ、どっちでもいいよね。秋雨の夜に、こんな晩酌、悪くない。


※記事の情報は2017年10月27日時点のものです。
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