海外から来た日本酒ラヴァーたち

日本酒とフレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する日本酒ラヴァー、簗塲友何里(やなば ゆかり)さん。家で飲む日本酒の魅力と楽しみ方を、ゆるりと綴っていただきます。今回は、近ごろ、外国人に日本酒が人気、というお話。

ライター:簗塲友何里簗塲友何里
メインビジュアル:海外から来た日本酒ラヴァーたち

ロンドンっ子が懐かしむ味わい?

ノスタルジック…そのお客さまは、ひと口日本酒を召し上がると、そうつぶやいて、懐かしそうに微笑んだのでした。私の経営するお店で、若いイギリス人のお客さまに、お燗酒をご提供した時のことです。おいしい、の前に、ノスタルジック! お燗酒を召し上がったイギリス人から開口一番そんな言葉が出てくるなんて、とても意外でした。

よく聞いてみると、幼少時代のクリスマスの記憶と、このお酒の香りが結びついたんだそう。このときご提供したのは、数年間の熟成を重ねた、少しチョコレートのような香ばしい香りのする芳醇なお酒です。子供の頃、クリスマスになると、お母さんがキッチンでチキンやパイを焼く「香ばしい」匂いが、家いいっぱいに広がっていたそうです。お酒の「香ばしい香り」が子供の頃のクリスマスのワクワクした記憶と呼び覚ましたのです。熟成日本酒の香りがロンドンのクリスマスと結びつくなんて、面白いですね。

これからは、このお酒、クリスマスの香りの日本酒と前置きしてご提供しようかしら。

外国人にも優しい日本酒専門店を経営していると、いろいろな国の方の率直な意見を聞くことができます。皆さん、SAKE / Tastingなどで検索してお店を見つけていただき、ちょっとドキドキしながらご来店くださいます。そして、日本酒を飲むときの作法はどうしたら良いかなど聞いて、丁寧に日本酒に向き合っていただけます。

パリからのお客さま

金融のお仕事の出張で来日して、お店の近所に泊っているというフランス人の女性が、一人で来店いただいたことがありました。年の頃なら30代、落ち着いた雰囲気のその女性は、どこかでご飯を食べようと歩いていて当店を見つけ、スッと躊躇なく入って来てくださいました。あまり飲めないけれど、日本酒をください、あなたのおすすめで、と言ってくださったので、まずは軽やかですっきりとした透明感のある日本酒を、冷酒でお出ししてみました。

とっても飲みやすくて美味しい!と好反応。

あともう1種類ということで、今度はお燗酒をおすすめしました。優しくお米の香りがする穏やかな余韻の純米吟醸です。そして、これまた、こんなやさしい日本酒飲んだことがないわ!と、嬉しいお言葉。聞いてみると、フランスで飲める日本酒は、総じて味も香りもきつく、飲むのに疲れてしまうそうです。口に含むとパワフルで身構えてしまいます、とのこと。

その日の冷酒もお燗酒も、ゆったりと飲めて、日本酒がこんなに優しく、ソフトだと思わなかったというコメントでした。海外の一般的なレストランでは飲めない、本格的な日本酒の魅力を味わっていただけて嬉しい限りです。このお客さまとは、パリに来たら、連絡してねと連絡先まで交換しました。

はっきりした味わいがお好み

海外のお客さまも、そのお好みはさまざま、飲んだときの反応も色々です。
軽く「これ良いね」というニュアンスから、「すごく美味しい」「これはどこで買えるの?」「パワフルな味~!」などなど。気の合う同年代の同じ国出身のグループでも、お好みはバラバラです。
でも、総合的には、どちらかというとハッキリとしたお味がお好きな方が多いようです。
白ワインのようなフルーティーなもの、旨味とコクがありパワフルな生原酒、そして、最近人気の発泡性の日本酒も好評です。

香港では日本酒がリキュール?

そういえば、以前、香港に行った際に、星付きレストランのソムリエに「日本酒を飲んだことはある?」と聞いたところ、「ストレートでは飲んだことないよ」というお答えが。ん?日本酒がリキュール扱い?と思いましたが、よく聞いてみれば、日本酒を使ったカクテルを出している店が香港にあり、時々そこで飲むんだそうです。「今度はぜひ繊細な日本酒をストレートで味わってみてね!」と、地道に日本酒ラヴァーズを増やす活動に勤しむのでした。外国の方のあいだで、確実に日本酒ファンは増えてきている、と実感する毎日です。


※記事の情報は2017年8月9日時点のものです。
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