あの人の家つまみ ~料理研究家 藤本早苗さん~
フードライターの白央篤司さんが、気になるあの人の家飲みを拝見する「あの人の家つまみ」。今回は、SNSアカウント「さなえごはん」が人気の料理研究家・藤本早苗さんを訪ねます。「作ってみたい!」と感じるようなレシピを届けたいと発信を続ける藤本さんらしい、ときめきが詰まったおつまみを紹介してくれました。

家つまみを紹介してくれたのはこの方
藤本早苗 さん
広島県生まれ、料理研究家。「さなえごはん」アカウントでのSNS発信が楽しみというファンは多数。初の著書『毎日がときめくひとりごはん(ときどき、ふたりごはん)』(家の光協会)をこの春に発売、話題を呼んでいる。 Instagram

食材や調味料をどう使うか、考えるのが楽しくて

藤 はい(笑)。お恥ずかしながらほぼ毎日の晩酌と、休日の昼飲みを欠かさない生活です。休肝日を設定できる大人になりたい…!
白 ははは、私も似たようなもんです(笑)。このサイトはその名のとおり「家飲み」がテーマなんですが、早苗さんは普段どんなものをおつまみにされていますか。

白 見た目も春っぽくていいですね! あ、桜塩と鯛…合うなあ。味が引き締まって、桜の香りもつまみ感を引き立てるものですね。
藤 これは3時間ぐらいマリネしてますが、ひと晩ぐらい冷蔵庫で置いてもいいです。1サクに対して刻んだ桜花塩漬けを4gぐらいまぶして置くだけ。ほたてや赤えびなどでやってもおいしいですよ。
白 桜の塩漬けも、先に挙げたカルダモンや山椒もそうですけど、決まった使い方をしがちな素材を、ちょっと違う方向で使ってみるなら…的に考えていくんですか。
藤 そうなんですよー、他にどんなふうに使えるかと考えるのが楽しくて。今、山椒が出てきましたが、きょうは「オレンジと山椒のカプレーゼ」も用意してます。

藤 そうですね。むいたオレンジをオリーブオイル、塩、山椒で和えてモッツァレラに添えてます。モッツァレラ自体も塩とオリーブオイル少々をかけて。山椒もオレンジも同じミカン科ですが、同じ「科」同士のものって大体相性がいいんですよ。
白 おおー、なるほど。モッツァレラは丸のまま、というのも手軽でいい。
藤 その都度、自分の好きな大きさに切って食べるのもいいかな、と。ナイフとフォークで食べたい気分の日はこうしてます。箸で食べたい気分の日は、モッツァレラは手でちぎって和える。そうすると断面がガタガタしていて味がよくからみ、また違うおいしさが生まれます。
白 その日の気分でレシピも変わるの、よーく分かります。話を聞いていたら、冷奴を思い出しました。ドンとお皿にのせたい日もあれば、切り分けて食べやすくしたい日もあるし、手崩しで盛りたい日もある。
藤 食の衝動が細分化してますね、私もそういう人間です。
白 食の衝動の、細分化?
藤 何が食べたい、飲みたいというのはもちろん、さっきの「きょうはフォークとナイフを使って食べたい」とか、あるいは…私だと、「層になった葉っぱを咀嚼したい」なんて衝動の日もあるんです。
白 それ、どういうもの食べるんですか。
藤 生春巻きとか、レタスサンドとか。
白 なるほどー! 話をカプレーゼに戻すと、オレンジの甘さとモッツァレラのまろやかさを山椒の香りがピリッとシメて、これまたつまみにいいもんですねえ…白ワインが進むなあ。

白 あ、確かに。最初に冷蔵庫から出して、他の作業を始めるとちょうどよさそう。ときに家飲みって、普段はどのくらい飲まれますか。
藤 ビールのロング缶1本から始めて、レモンチューハイを3杯ぐらいですかねえ。飲み始めるのは17時ぐらい、つまみを作りながら飲み始めます。
白 飲み終えるのは?
藤 眠くなるまで(笑)。
白 あはは、私も一緒だ。本日最後のおつまみ、こちらはなんでしょう。

白 さばのうま味とガリの甘酢っぱさ、クレソンのほろ苦さがいいアンサンブル! 白ワインにも日本酒にも合いそう。さて、早苗さん。おつまみはもちろん、メイン料理やおかずレシピがたっぷり詰まった料理本を最近出版されましたね。
料理への「ときめき」を呼び起こす、藤本さんの初書籍

白 目次を読んでるだけで「これ、どんな味なんだろう…?」とワクワクしましたよ。そういう「調理的ときめき」を掘り起こす力が、早苗さんはすごく強い。
藤 ありがとうございます。
白 日頃、自分の料理にマンネリを感じてる人にもすすめたい1冊でした。早苗さん、きょうはありがとうございました!
※記事の情報は2025年3月31日時点のものです。
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