2017.10.05
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大吟醸もお燗でうまい!-全国燗酒コンテスト2017

大吟醸もお燗でうまい!-全国燗酒コンテスト2017

『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。

発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。

今年で9回目を迎えた全国燗酒コンテストの結果が発表されました。
入賞したお酒をよく見ると、冷やして飲んでおいしいはずの「大吟醸」や「にごり酒」が最高金賞をとっています。

入賞酒の一覧はこちら

“えっ、そんな馬鹿な”。
人に自慢できるくらいたくさん、いろいろな日本酒を飲んできましたが、裏ラベルに「お燗で」と書かれた「大吟醸」は記憶にありません。「にごり酒」だって、いつも冷蔵庫で冷やしていました。

これは審査員が素人、あるいは売らんがための出来レース? でも審査員の顔触れは、酒づくりを技術指導してきた研究者や名だたる地酒専門店のご主人、ソムリエ、酒スクールの講師など酒の専門家ばかりです。どういうことなのか確かめねばならないと、主催者である全国燗酒コンテスト実行委員会のMr.燗酒さんに聞いてみました。

「辛口・ぬる燗・いい酒は冷やして」の次に進め

―― 大吟醸やにごり酒は冷やして飲むものだと思っていましたが、全国燗酒コンテストではいろいろなお酒が入賞しています。ちょっと驚きでした。

Mr.燗酒 あなたは最近の典型的な地酒ファンのようですね。
大吟醸は燗をしてはいけない、
飲み放題の酒はおいしくない、
最初はひどい目にあったけれどあの酒で日本酒に目覚めた、
とか言ったことがありませんか?

―― はぁ? まあ、言ったことはありますが……それが何か?

Mr.燗酒 間違いとは言いませんが、日本酒好きに昔から伝わる神話に影響されると、そうなりがちです。酒は辛口、燗ならぬる燗、も酒通の都市伝説です。ほんとうは甘口や熱燗が好きな方が多い。ほんらい日本酒はもっと自由で、好きに飲んでいいんです。

燗をするのも電子レンジがダメなんて嘘。ていねいに湯煎してもらったら、もてなされた気分になりますけどね、おいしくないと思ったら、別のやり方にすればいい。それだけです。

―― どうすれば上手にお燗ができますか?

Mr.燗酒 鍋に湯を沸かして徳利に酒を入れて湯煎するのが基本です(写真①)。
電子レンジで温めたら、別の徳利に移し替えると温度ムラがなくなります(写真②)。

電子レンジではくびれのない寸胴の器を使えば、あるいはお箸を一本入れておくと温度ムラができにくくなります。湯豆腐のような鍋のときは徳利を鍋に入れてしまうと楽ちんですし、BBQなら炭火の上に直において構いません。囲炉裏があれば鳩徳利を刺して楽しむのは外国人に受けます。

―― ではお燗でおいしいのはどんなお酒なんですか?
Mr.燗酒
 一概に言えないので専門家のフィルターを通してみたのがこのコンテストです。たいていの日本酒は、燗でも、常温でも、冷しても、そこそこ飲めます。だから酒蔵の方も実は真剣に考えなくてもよかった。

コンテストには4つの部門があります。
「(お値打ち)熱燗(720ml 1100円以下・税別)」
「(お値打ち)ぬる燗( 〃 )」
「プレミアム燗酒(720ml 1100円超・税別)」
「特殊燗酒(樽・にごり・極甘・多酸など)」

です。

出品いただいている酒蔵に聞いてみると、どの部門になにをエントリーするか決めるために、初めて燗で本当においしいのはどれかを考えて、審査温度に合わせて蔵人みんなで試している感じがあります。プレミアム燗酒部門では大吟醸・吟醸が対象になってきますし、特殊燗酒部門はにごり酒や極甘の酒も対象です。こういう酒は燗で試したことがなかったという声を蔵の方からもよく聞きます。

―― へえ、そんなもんですか。

Mr.燗酒 はい。そんなものです。
酒蔵にとって燗酒は昔からある当たり前のものでしたからね。冷やして飲むのが広がったのは1980年代で、まだわずか35年です。その前は全部、燗酒でした。当時、吟醸酒は蔵人が腕を磨くためにつくるもので商品化するものではありませんでした。F1マシンは公道を走るものではないみたいな感じです。
それを市販したら手応えがあった。高くても喜んで買う人がいたんです。

―― お金持ちのグルメですか?

Mr.燗酒 もっと幅広かったと思います。
果物のような香りとすっきりした味が気にいられたのが一番ですが、“違いのわかる人”になりたいと思う人は少なくありません。ちょうどグルメ漫画の『美味しんぼ』の連載が始まった頃です。そんな人たちに、これまでとは違う新しい酒として「吟醸酒」を伝えるために、ことさら「冷やして飲む」と強調する必要があったのではないでしょうか。

話を元に戻すと、燗でおいしいお酒は、酒の規格(本醸造・純米・吟醸・大吟醸など)では一概に言えないので、
とりあえずコンテストで入賞したものを試していただくのがいいと思います。
吟醸でもうまく熟成したものや、
舌の脇を支えるような酸のしっかりしたもの、
香りがおだやかなもの、
甘くジューシーすぎないものなど、
だんだん燗でおいしいタイプがわかってきます。

脂が溶けてうま味が増し増し

―― 燗にするとお酒の味はどう変わるのですか?

Mr.燗酒 柔らかく膨らんで、旨味が増したように感じます。
温かいものは、ほっこりした気分にさせます。オフに切り替えるのにもちょうどいいですね。

―― はい。それはわかります。

Mr.燗酒 うま味が増すので食事との相性が一層よくなります。
ワインと違って強い酸味や苦味・渋味がありませんから、ほとんどの料理に寄り添ってくれます。

―― たしかに。

Mr.燗酒 日本で味付けによく使う醤油・味噌・酢は、どれも発酵調味料でうま味がベースです。うま味が持ち味の燗酒とは仲のいいお友達。
薄味のものは出汁で味を支えます。これもうま味なので燗酒にピッタリ。うま味とうま味の相乗効果でとてもおいしい。

―― そうするとやっぱり和食ですね。

Mr.燗酒 もちろん和食にピッタリですけれど、最近はフレンチに代表される西洋の料理もソースに頼らず素材の味を生かすように変わってきています。和食のスタイルを取り入れたものが増えてきていて、こうした料理に合うからとワインリストに日本酒を加える著名なシェフやソムリエが何人もいます。

―― へえー。そうなんだ。

Mr.燗酒 以前、このコンテストの入賞酒のお披露目会で、和洋さまざまなメニューを用意して、燗酒に合ったと思うメニューを選ぶ人気投票をやりました。

―― おもしろそうですね。

Mr.燗酒 はい。とてもおもしろかったです。
結果は第1位がなんとお肉でした。黒毛和牛の旨煮です。
2位はナチュラルチーズ
3位はイクラの醤油漬け。
魚介類を燗酒が合うのは当たり前、肉とチーズがその上をいったので皆さん大うけでした。

―― 黒毛和牛ぅぅぅう。食べたい。(笑)

Mr.燗酒 でしょう。
今年の会でもご用意しますからぜひお越しください。
10月18日(水)の19時から東京銀座です

たくさんの燗酒を飲み比べられる、世界でたった一つの催しです。

全国燗酒コンテスト入賞酒お披露目会の詳細はこちら

―― チーズも合うんですね。

Mr.燗酒 ミルクを発酵させてつくるチーズはうま味の塊です。適度に脂があって燗酒で引き立ちます。

―― 脂があるのと燗酒は関係しますか?

Mr.燗酒 脂はうま味をたっぷり含んでいます。
トロや霜降り肉のおいしさは脂です。ただ脂は溶けないとおいしくありません。

―― はい。太るからなるべく脂は避けていますが、肉汁たっぷりのお肉はたまりません。

Mr.燗酒 ははは、こうして話しているだけで涎が出てきますね。脂は溶ける温度がいろいろで、牛脂は人間の体温では溶けません。だから加熱して脂を溶かして仕上げます。マグロの脂は口に入れただけで溶けるので刺身でもおいしい。豚も脂が溶ける温度が低いので、薄くカットしたの生ハムは脂のうま味と塩味がジュワジュワと溢れる。そこで燗酒を飲むとうま味とうま味が合わさって・・・・・・。

お披露目会ではこれもご用意しますから、お楽しみに。

燗酒体験は「入賞酒お披露目会」で

―― お披露目会は何種類くらいお酒が出るのですか?

Mr.燗 80種類あまりです。
どれも入賞したお酒なので品質はたしかです。あとは好みですね。

―― 燗酒を飲み比べる機会はあまりないので、ちょっと行ってみようかな。

Mr.燗酒 そうなんです冷酒は冷蔵庫で冷やいしておけばいいので、何種類もお出しすることができますが、その都度、温める燗酒は一度にたくさん用意できません。お披露目会でもそれが悩みの種で、結局、セカンドベストとして720mlを瓶ごと湯煎して出します。毎年、3人がかりで2時間かけて200本近い4合瓶を燗しています。

―― 燗をしても置いておくと冷めてしまいますよね。

Mr.燗酒 飛行機で機内食を配膳する保温ワゴンがありますよね。燗がついたものからあれに入れて待機しています。

―― うわぁ、すごいですね。いろいろ大変なんだ、お燗は。

Mr.燗酒 お燗を好きになっていただくためなら何でもやります。大勢でお出かけください。

 

※記事の情報は2017年10月5日時点のものです。

さけ通信編集長

山田聡昭(酒文化研究所*『さけ通信』編集長)

ビール、清酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、スピリッツ、リキュール、もちろんチューハイと、お酒ならなんでも来い。国内47都道府県をすべて訪ね、海外では25カ国以上で、飲んだり、食べたり、酒蔵を訪ねたりした経験をもとに、家飲みをおもしろくする知恵を絞ります。1963年、埼玉県生まれ。男性・既婚

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