銘酒 蔵元探訪記01「頚城酒造(新潟県上越市)」

全国各地の酒蔵と銘酒を訪ね紹介する「銘酒 蔵元探訪記」。1回目の今回は、国内有数の酒どころ新潟県の南西部にある「柿崎」という小さな町にある頚城(くびき)酒造をご紹介します。日本四大杜氏のひとつに数えられる越後杜氏。その中でも名杜氏を輩出し続けている頚城杜氏の伝統を脈々と受け継ぐ蔵元です。酒造りに必要なものは「米」と「水」と「人(技術)」、そして環境と語る頚城酒造を率いる若き社長、八木崇博さんに酒造りへの熱き思いをうかがいました。

地域のポテンシャルを最大限に生かした酒をめざす

地域のポテンシャルを最大限に生かした酒をめざす

切れ味がよく、食事とともに楽しむ日本酒

頚城酒造が目指すお酒というのは、一言でいうと「食事の中で生きる酒」です。先代の社長であり現会長である私の父も非常にお酒が好きで、私も小さい頃から日本酒が食卓に並び、日常の食事とともに日本酒を楽しむというのは、僕にとっては当たり前の光景でした。食事とともに楽しむお酒というのが、うちの酒造りのコンセプトでもあります。日本酒らしく米の旨味をしっかりと感じる。それでいて、きちっと後味が切れることで、次の一口をまた美味しく食べることができる。そんな酒を心掛けて造っています。

地酒の酒蔵としての存在意義

蔵の立ち位置としては、「柿崎の地酒」として存在意義のある酒蔵でいたいと。それがうちの酒造りの根幹にあるのかなと思っています。地元の水、その自ら生まれた地元の米、そして材料がそろってもそれだけでは足りなくて、やはり最後は人。人の技術、人の和、そういった地域の資源をフルに活用して「柿崎の酒」を造る。それがうちの酒造りでもっとも大切なことですし、こだわっている部分です。
人の和ということで言うと、酒造りにはチームワークが大事ですし、その点もありがたいことにいい雰囲気でやれているなと思っています。杜氏のリーダーシップのもと、一人一人が自分の役割を分かって、かつ楽しまなきゃ損だなって思ってくれていると思うんですよね。造った酒がどういう酒なのか、それをお客様がそんな風に飲んでくださるのか、喜んでくださったのか、そういうことを楽しみながらやってくれている部分もあって。蔵人にはベテランも若い人もいる。恵まれてるなと思っています。
地酒の酒蔵としての存在意義

めざす酒造りとは?

私は今40歳なんで60歳で息子に蔵を継がせたいなと考えると、あと20回しか酒が造れないんですよ。その20回で、どれだけ妥協なく酒造りに取り組めるか、思いが製品になるか。一番は、柿崎のポテンシャルがすべて発信できるような、そんな酒に辿りつけたらと。ただ「美味しい」だけじゃなく、柿崎の水、米を使って柿崎の人が造り、「柿崎ってすごいね」って言ってもらえるような、地域の凄みが前面に表れるような製品が造ることをめざしています。
めざす酒造りとは?

頚城酒造を表す3つのキーワード

●契約栽培米
米作りの盛んな柿崎は、酒米作りも盛ん。頚城酒造は30年以上前から契約栽培での酒米作りを行っている。現在は柿崎の8組の農家に4種類の酒米作りを依頼。春夏は酒米作り、秋冬は酒造りと両方に携わる栽培農家兼蔵人(くらびと)もいる。
米作りの盛んな柿崎は、酒米作りも盛ん
頚城酒造は30年以上前から契約栽培での酒米作りを行っている
●霊峰米山の伏流水
仕込み水には越後富士とも言われる霊峰米山を使用。水が豊かな柿崎は古くから多くの井戸があり、蔵でも酒造りに最適な軟水が湧き出ている。酒の仕込み派この米山の伏流水をメインに行い、一部特別な製品には、平成20年に環境省による「平成の名水百選」に選ばれた湧水「大出口泉水」を使用している。
仕込み水には越後富士とも言われる霊峰米山を使用
霊峰米山の伏流水
●頚城杜氏
日本四大杜氏のひとつに数えられる越後杜氏。その中でも大きな勢力を保ち名杜氏を輩出してきたのが「頚城杜氏」。今も脈々と受け継がれてきた伝統を継承した地元の蔵人で行っており、その技術の高さは定評がある。現杜氏の山田晃氏は入蔵して32年、杜氏に就任して20年のベテラン。数々の日本酒品評会で入賞する名杜氏。
「頚城杜氏」
今も脈々と受け継がれてきた伝統を継承した地元の蔵人で行っており、その技術の高さは定評
※記事の情報は2017年4月25日時点のものです。
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