自然のままにワインを造る新潟県【胎内高原ワイナリー】を訪ねました。
自然派ワイナリーのブドウ栽培哲学と自慢のワインたち
複雑な土壌と強い風
まずは、気候や土壌の特徴を教えてください。
佐藤:この畑は、高坪山という山の中腹にあります。粘土層がベースなんですが、海が近いので堆積岩があったり、砂の層があったり、すごく複雑な土壌ですね。標高は250メートルぐらい、新潟県内の葡萄畑としては標高は高いほうですが、全国的にみるとそうでもないかもしれません。斜面は南西に向いていて日当たりは良いです。ここの大きな特徴としては、「だしの風」という強い風が吹くというところです。風通しが良いので、粘土質が入った土壌にもかかわらず、乾燥して、病害虫の被害が少ないんです。そのため、農薬も自然由来のものだけで充分やっていけます。
雑草に耕してもらう?
ずばり、葡萄畑のコンセプトをお聞かせください。
佐藤:極力人為的なことはやらずに自然そのままで育てたいという前提を持っています。極力、化学農薬は使わず、自然由来のものを使います。肥料もつかいません。無肥料栽培です。土も、「草生(そうせい)栽培」といって、人為的に耕さず、畑を覆った雑草の根で耕す方法をとっています。雑草の根が土の中に入り込んで伸びていくことで耕され、土の中に空気が入っていきます。
葡萄畑、今は(6月下旬)一年の中でどんな季節なんですか?
佐藤:今は、ちょうど開花の季節です。あまり花らしい形はしていませんが、この一つ一つが葡萄の粒になります。
冬は冬眠
佐藤:冬になると2メートルの積雪になりますから、畑には入れなくなってしまいます。なので、12月に雪が降り始める前、11月に2万本を剪定して、枝を片付けたらその年は畑仕事はおしまいになります。そのあとは春まで畑は「冬眠」してしまいます(笑)。春になったら、まず、雪かき、そして、傾いでしまった木を起こすところから1年の葡萄づくりが始まります。
田んぼの中のワイナリー
実力派! お薦めのワインたち
最近は受賞も重なっています。
坂上:畑に葡萄を植えてから10年ぐらい経って木が熟成してきたことがポイントだと思います。特に変わったことはしていないんですが、私達の畑のポテンシャルが認められてきたんだと思います。
お薦めのワインを教えてください。
●ツヴァイゲルトレーベ
坂上:日本ワインコンクールで高評価を頂いたワインです。酸がしっかりしていて、果実味もふくよか、バランスも良いワインだと思います。このツヴァイゲルトレーベという品種は、新潟で栽培すると寒いということもあって、ちょっと他の地域とは違う柔らかさが出ると思います。肉料理にも合いますが、砂糖醤油で甘く煮付けた魚などの和食にも良く合います。
●ヴァン ペティアン 白・ロゼ
坂上:瓶内二次発酵のスパークリングワインです。白はシャルドネ100%。炭酸は強めで、酸がしっかりした辛口。ドライな飲み口です。酸化防止剤なども一切使っていません。年間2~3千本ぐらいしか造れないワインです。発売は毎年初夏のころ。ロゼの方は、メルローとツヴァイゲルトレーベで造っています。どちらも瓶内二次発酵でキリッとドライな飲み口です。こちらはさらに少なく、年間千本ぐらいの出荷です。両方とも、瓶内二次発酵でろ過を一切していなので澱が瓶のそこに溜まっています。
●アッサンブラージュシリーズ
坂上:アッサンブラージュシリーズは、葡萄品種をうたわずにブレンド(アッサンブラージュ)して造るワインです。赤と白があり、赤はメルローとツヴァイゲルトレーベ、白はシャルドネとソービニヨンブランで造ります。しっかり造っている人気商品で、味わいはその年その年の状況でみんなでテイスティングしながら決めています。今年の白はシャルドネが多く入っていて、辛口。香りも強く酸もスッキリした飲み口の良いワインです。赤は凝縮感が強く、ボディがしっかり、果実味、酸もしっかりしています。このアッサンブラージュシリーズは、品種名をうたわない分、この土地そのものの味わいが出ていると思います。
自治体が造るワイン
坂上:自治体が栽培、製造から販売まで手がけるということで、利益主義に走ることなく、コストがかかってもしっかり、真面目に造っているというのが良いところだと思います。最近では販路も新潟県内、東京、大阪、名古屋と拡大してきましたし、東京のホテルのソムリエさんなどからも高い評価を頂き、お問い合わせも増えています。まずは、畑のポテンシャルを高めることがメイン、そして今後もしっかりと品質を高めていこうと考えています。
※記事の情報は2018年8月27日時点のものです。
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