世界の蒸留酒とリキュールをめぐる話<お酒のたしなみ入門③>
渋谷のワインバー bar bossa店主・林伸次さんが綴る連載コラム。今回は楽しみ方を身に付ければ、ぐっとオトナになれる蒸留酒とリキュールのお話です。
①原価が安いのでお店側が売りたい
例えば、ビールの原価は百数十円なのですが、ハイボールは数十円です。お店としては儲かるのでオススメしたいですよね。
②ビールと比べて糖分やプリン体の心配がない
知人がお医者さんに、「ビールをハイボールにかえなさい」と指導されたそうです。お医者さんもすすめるんですね。
さて、そんなハイボール、もちろん原料はウイスキーと炭酸ですが、このウイスキーは蒸留酒です。蒸留酒はビールのような醸造酒と比べて、「不純物」が少ないので、二日酔いになりにくいと言われています。蒸留酒、気になりますよね。今回はそんな蒸留酒と、その親戚のリキュールについて説明いたします。
果物からできる蒸留酒「ブランデー」
そのワインを、例えばお鍋でぐつぐつ煮込むと、空気中にアルコールが飛び散りますよね。その飛び散ったアルコールを集めた物が、蒸留酒です。このブドウのような、果物から出来た蒸留酒を「ブランデー」と呼びます。
ブランデーで思いつく銘柄は何ですか? ヘネシーが有名ですよね。ヘネシーは、コニャック地方のブランデーなので、コニャックと呼びます。
もちろん、コニャック地方以外にも、世界中でブランデーは作られています。例えば、リンゴのブランデーもありまして、一番有名なのは、フランスのカルバドス地方のリンゴのブランデーで、やっぱりカルバドスと呼びます。これは、もちろんシードルのようなリンゴの醸造酒を蒸留したお酒です。
穀物からできる蒸留酒「ウイスキー」
ウイスキーで一番有名なのは、スコットランド地方で作られた、スコッチ・ウイスキーです。
ここで話が複雑になってくるのですが、バランタインやシーバスリーガルといった有名なスコッチは、色んなスコットランドの蒸留所のウイスキーを混ぜています。混ぜる専門のブレンダーという人がいて、「これがバランタインの味だ」とか「これがシーバスリーガルの味だ」という感じで、少しずつ混ぜて、そのウイスキーのブランドの味を作り出しています。それをブレンデッド・ウイスキーと呼びます。
一方で、その蒸留所だけで作られた単一のウイスキーをシングルモルト・ウイスキーと呼びます。こちらは混ぜていないので、その蒸留所のウイスキーの味の個性がよく出ます。マッカランやボウモアなんかが有名です。
アメリカにバーボン・ウイスキーというものがあります。ケンタッキー州で作られた、トウモロコシを51%以上、他は大麦、小麦、ライ麦を原料にしたウイスキーです。I.W.ハーパーとかジムビームが有名です。
ジャック・ダニエルというアメリカのウイスキーがありますが、こちらはテネシー州で作っているのでバーボン・ウイスキーとは呼びません。テネシー・ウイスキーと呼びます。
その他の世界の蒸留酒
ジンは穀物が原料のイギリスの蒸留酒です。穀物が原料の蒸留酒にジュニパーベリーというスパイスで香り付けがされていて、独特の爽やかな香りがします。タンカレーやビーフィーターが有名です。
ウオッカは穀物が原料の蒸留酒で白樺の炭で濾過され、無味無色無臭が特徴的です。ロシアが起源ですが周辺のポーランドやフィンランドといった国でも作られています。ロシア革命の時にアメリカに逃げたスミノフというブランドのウオッカも世界的に有名です。
ラムはサトウキビが原料の蒸留酒です。サトウキビがとれるところなら、奄美大島でもフィリピンでも作られていますが、やはりカリブ海が有名です。ラムは宗主国によって味が違うのが面白いです。イギリスが宗主国のジャマイカで作られるラムは、イギリスの海軍で消費されたので、パンチが強いラムですし、フランスが宗主国のハイチで作られるラムはフランス料理向けにブランデーのような上品さがあります。マイヤーズやバカルディが有名です。
テキーラはアガベというリュウゼツランが原料の蒸留酒です。ちなみにテキーラの原料はサボテンとよく言われていますが、サボテンとリュウゼツランは別物です。アガベは51%まで入っていればテキーラと呼んでもいいことになっていて、ほとんどのテキーラが穀物の蒸留酒がたくさんブレンドされています。そして100%アガベのテキーラは高級テキーラとなります。
蒸留酒に果実やハーブを加えた「リキュール」
もちろん世界中で同じことが行われています。
例えば、カシス・ソーダってご存知かと思いますが、カシス・リキュールに炭酸を足したものです。このカシス・リキュールは、蒸留酒にカシスを漬け込み、後で糖分を足したものです。
そんなスピリッツに何かを溶かしこんで、フレーバーを足したり、糖分を足して甘くしたお酒を「リキュール」と呼びます。
これはたくさんヴァリエーションがあります。蒸留酒にコーヒーの抽出液と糖分を加えたリキュールがカルーアですし、杏の核を漬け込んだのがアマレット。コニャックにオレンジのエキスを加えたのがグランマニエで、ラムにココナッツを漬け込んだのがマリブです。
ハーブを漬け込んだリキュールもたくさんあります。
一番有名なのはカンパリでしょう。リンドウの根を漬け込んでいて独特の苦みがありますね。シャルトリューズやベネディクティンという修道院で作られたハーブを漬け込んだリキュールもあります。
アブサンというリキュールもあります。ニガヨモギを溶け込ませたリキュールですが、幻覚作用があるとされ禁止されました。その後、アブサンに似た代用酒としてペルノーやリカールといったリキュールが作られて、それはパスティス酒と呼びます。
蒸留酒とリキュール、なんとなくわかってきましたか? 難しいですが、まあ飲むと覚えられます。まずはバーで片っ端から飲んでいきましょう。
※記事の情報は2019年1月29日時点のものです。
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