チョーヤ梅酒の魅力を探る! 本格梅酒の工場を訪問
梅酒の有名メーカーといえばもちろんチョーヤ梅酒。「梅酒は家でつけるもの」という世間の常識を覆し「本格梅酒」という製品ジャンルを確立させた、梅酒のフロンティアです。今回は、そのチョーヤ梅酒の工場へ潜入。最盛期を迎えた梅の漬け込みの作業や瓶詰めの工程を見せていただきました。
チョーヤ梅酒伊賀工場 日本が誇る梅を世界に
今回お邪魔したのは、チョーヤ梅酒伊賀上野工場。忍者の里、三重県伊賀市にあるチョーヤ梅酒最大の工場です。名古屋の酒問屋イズミックのチーフバイヤーで、イエノミスタイルのバイヤーズレポートでもお馴染みの、青田俊一さんとご一緒しました。
梅の大群がころころ転がる、梅酒のつけ込み工程を見学
コンベアに梅の実を乗せると、ころころ転がりながら洗浄され、細長いゴンドラに乗ってタンクへと運ばれていきます。この装置は、チョーヤ梅酒の長年の経験が詰まったオリジナル機械。
タンクの中には、ホワイトリカーが梅の実を待ち受けています。
自然のままにつくる梅酒
飯田工場長:もちろん、こだわりは「本格梅酒」です。酸味料も香料も使わず、梅と砂糖とアルコールだけでつくる梅酒ですね。余計なものを一切足さず、自然のままにつくっています。そのためには原材料の選定がもっとも大切なんです。
青田:梅の選定にはどんなことに気をつかうのでしょう?
飯田:きれいな大粒の梅をふんだんに使うということですね。大きな梅は果肉が厚くて、果汁が多く、梅の酸が出やすいんです。3L、4Lといわれる大粒の梅がおいしいです。
飯田:はい、果肉だけではなくて、種のエキスを出すためにはやはり、それなりの時間が必要です。梅酒の香りは、堅い種の中の「仁(じん)」という柔らかい部分に入っているんですが、これを引き出すのに1年かかります。
飯田:ええ。1年寝かせれば香りの成分が引き出され、3年寝かせるとまろやかさが出てきます。1年熟成は爽やかな感じですが、3年寝かせるといわゆる熟成香が出てきます。
青田:熟成にはどういった環境が必要なんですか?
飯田:最大のお手本は、昔ながらの家庭で行う梅酒づくりです。家庭で梅酒をつけるときには、冷暗所に置くというのが基本です。それと同じで、タンクのある場所は、光が当たらず、温度が一定になるように、断熱材をいれた建屋にしています。
青田:家庭の梅酒がお手本というのはちょっとびっくりです。
飯田:家庭の梅酒づくりと同じことを丁寧に、しかも、大規模に行うというのがチョーヤの梅酒づくりです。
飯田:たまに、瓶をくるくる回すといいんですよ。私たちの工場でも熟成タンクを定期的に攪拌していますが、こうすると熟成が均等に進むんです。
青田:なるほど。
本格梅酒とは?
飯田:実は、梅酒の生産量と梅の出荷量の調査をしてみたところ、おかしなことがわかったんです。平成13年から平成23年の10年間で、梅酒の生産量が2倍に増えているのに、梅の実の出荷量はほとんど変わらなかったんですよ。これはおかしい、と。つまり、梅酒は2倍つくられているのに、原材料である梅の量が変わらない。
青田:梅の使用量が少ない梅酒が多かったと……。
飯田:ええ。少ない梅で、酸味料とか香料を使用した梅酒が多かったわけですね。そこに危機感を覚えまして、和歌山県さんとうちとで、酸味料や香料を一切使わない梅酒を「本格梅酒」と呼ぼうと行政に働きかけをしました。2015年に、日本洋酒酒造組合の自主基準により、梅、糖類、酒類のみを原料とする梅酒は「本格梅酒」と表示することができるようになったんです。
青田:他のメーカーさんでも、梅と砂糖とアルコールだけでつくった梅酒であれば「本格梅酒」を名乗っていいわけですか?
飯田:もちろんです。ただ本格梅酒を商業ベースでやろうとすると、大変な手間と暇がかかります。それなりの本数をつくろうと思えば梅酒の貯蔵量も多くなりますし。本格的にやっているのは今のところチョーヤぐらいではないでしょうか
チョーヤ梅酒の原材料 有機梅のふるさとを訪ねる
梅農家を40年営む田中稔さんにお話を伺いました。
田中:有機栽培では、農薬も有機として認められた限られたものしか使えません。天候によっては病気がすぐに出てしまうんです。それと肥料の管理も難しいですね。肥料をたくさんやれば実はたくさんなりますが、病気に弱くなってしまうんです。痩せ気味に管理しないといけません。
青田:普通の栽培法よりも収量は少なくなるわけですね。
田中:そうですね、普通の栽培法だと1本の木で2トンぐらいは収穫できますが、有機だと1トン程度です。
青田:そうなんですね。今年の梅はいかがですか?。
田中:今年は、雨が少なかったので、きれいな梅が出来たと思います。梅づくりは天候に左右されやすく、特に夏場の高温には注意が必要です。有機ではきれいな梅は出来にくいんですが、そこを頑張ってきれいなものをつくるようにしています。
青田:では、今年の梅酒は期待できますね。
田中:そう願いたいですね。
田中:有機の梅の方がまろやかになります。うちでも梅酒をつけていますが、有機栽培の梅を使うと、まろやかな出来映えになります。有機だと、自然とおいしい梅酒になると思います。
梅酒づくりは農業だ
有福:当社の梅酒は無添加ですので、原材料の品質の影響がとても大きいんです。しかも、梅は豊凶の差がとても大きな農産物です。豊作の時は頑張って大量に仕入れさせていただいて生産者の皆様に貢献させていただきます。過去には予定の2倍以上仕入れたこともあります。そうした信頼関係があってこそ、不作の時に、チョーヤのためならば、と梅を出荷していただけます。
青田:信頼関係が大切なんですね。
有福:大先輩の時代から生産者さんとの絆を深くして、梅の仕入れを途切れることなく続けてきました。生産者さん、農協さん、チョーヤ、という3者の信頼性を大切にしています。
青田:梅の生産という点でいうと、なにか特別な取り組みはされているのですか?
有福:まずは、有機農業、減農薬の取り組み、そして、新しい梅の品種改良などにも取り組んでいます。今梅酒づくりに使っている南高梅は果肉も多くて梅酒向きなんですが、自家受粉ができない品種なんです。そのため、豊作、不作の差が大きいという悩みがあります。これを解決するために農協さん、生産者さんと協力して、自家受粉可能な南高梅の開発に取り組んでいます。
青田:品種改良にも取り組んでらっしゃるとは!
有福:あとは、完熟梅の製品化ですね。梅酒に使う梅は、完熟して木から落ちる前に収穫しますが、今取り組んでいるのは、完熟の梅を使った製品づくりです。梅の木の下にネットをしいて、枝から自然に離れた完熟梅を収穫します。
チョーヤの技術の真骨頂はブレンドにあり
青田:農産物である梅は年によって出来に差があると思いますが、どうやって均一な製品にしているんですか?
飯田:梅は豊作凶作が激しい果物でして、その年によって出来映えも違うし、梅酒にしたあとの出来映えも違います。普通ですと、香料や酸味料を使って調整するという発想になるのでしょうが、本格梅酒は梅の味だけで勝負しないといけません。なので、ブレンドという作業がとても大事になってきます。
青田:梅酒をブレンドするんですか?
飯田:ええ。産地や熟度の違う梅をタンクを分けて仕込んでいるんです。そのため、タンクによって味に個性があるわけです。タンクが全部で400数十本ありますが、それぞれ個性的なんです。
青田:それらをブレンドして均一な味を守っているわけですね。
飯田:ええ、専門のブレンダーがブレンドして、味がぶれないようにしています。このあたりが、農作物を扱う難しさでもあり、無添加である本格梅酒の大変さのひとつですね。
チョーヤの本格梅酒を飲んでみる
The CHOYA AGED 3 YEARS
飯田:The CHOYA AGED 3 YEARS(エイジド・スリーイヤーズ)が好きですね。3年寝かせた梅酒です。これは良く出来ていますよ。ロックで飲むのが好きです。
青田:3年も寝かすのですか。
飯田:そうです。タンクが3年間占領されてしまうので工場としては大変なんですが、3年経つと、いわゆる熟成香が出てきて、とてもおいしくなります。
青田:(飲んで)確かに、良い香りで、コクがありますね。
The CHOYA SINGLE YEAR
青田:(飲んで)これは爽やかですね。
飯田:これら、もちろん本格梅酒なので、水で割っても良く伸びて、薄い感じにならないんですよ。本格梅酒と、香料酸味料を使った梅酒を、それぞれ2倍に薄めて飲み比べたら、おそらく、誰にでも違いが分かると思いますよ。
すべて有機の本格梅酒 The CHOYA 大地の梅
梅が中国から日本に渡ってきたのは、なんと弥生時代だそうです。そして江戸時代にはすでに梅酒がつくられていたとか。伝統の製法を守り、余計なものを何も足さずにつくる、チョーヤの本格梅酒は、これからも「梅酒の定番」でありつづけることでしょう。
※記事の情報は2019年7月30日時点のものです。
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