ジビエと秋の日本酒は相性抜群!
秋はジビエの季節。そして、秋の日本酒が出回る時期でもあります。日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する日本酒ラヴァー、簗塲友何里(やなば ゆかり)さんによる、ジビエと日本酒のコラムです。ジビエと日本酒その抜群の相性とは?
「ジビエ」と「秋の日本酒」の季節がやって来ました!
秋も深まる11月15日、ジビエの狩猟解禁日です。日本では、11月15日から2月15日(北海道は10月1日から)が狩猟期間で、ジビエが出回ると秋だなーと感じます。前回もコラムでお話ししたように、日本酒にも秋の日本酒があります。この時期に、ジビエと日本酒で秋を楽しむのは、いかがでしょうか。いつもは日本酒を中心にお話ししていますが、今回は、ジビエの魅力もお伝えしたいと思います。
ジビエは貴族料理だった
ジビエとは、狩猟で捕った野生の鳥獣の食肉。フランスでは元々は貴族のみが食べることのできた特別な料理です。ジビエに合わせる定番のソースは、貴族に由来する名前を持つものが多くあります。鹿肉に合わせるグランヴヌールソースもその一例。「グランヴヌール」とは、貴族が狩りに出かけるときの狩猟頭のこと。ジビエを煮出し、ワインビネガーと胡椒を効かせたベースに、仕上げとしてクランベリージャムを加えたソースです。
私が経営する発酵フレンチと日本酒のレストランでは、この季節、ジビエのコースもご用意しています。当店のシェフは、かつて3年間フランスの星付きレストランで働いていたことがあり、さまざまなジビエを扱った経験があります。彼によると、毎年この時期、フランスのレストランでは、毎日50羽ほどの野生の鳥を、狩猟されたばかりの状態から仕込むこともあるそうです。
命をいただくということ
自然の中で生活していたジビエは、脂身が少な目で独特の味わいですが「野生を食べている」といった何とも言えない魅力があります。まさに、この命をいただいている感覚が、一般的な食材との大きな違いです。
いただいた命を余すところなく使い切るため、様々な部位を大切に調理に使い、素材の特徴を味わうソースを作り上げます。骨やくず肉を焼き、赤ワインやフォンドヴォー、ブイヨンで煮詰めてバターを加えた、サルミソースが定番です。濃厚で凝縮した味わいのソースが、素材の良さを引き出します。
ジビエの王様は、ベキャス
ジビエの王様といわれるのは、ベキャス(ヤマシギ)です。夜行性でジグザグに飛行するので狩猟が難しい鳥です。年々狩猟数も減り、貴重で高貴なジビエです。フランス本国では保護鳥に指定され、狩猟が禁止されてしまいました。
体長30㎝ほどで、長いくちばしを持ち、茶褐色のうろこ柄の毛で覆われています。味は旨味がしっかりしています。しっとりした食感に、なぜか鰹のような味わい。熟成させると、よりジビエ独特の野性味あふれる味へと変化します。内臓も全て美味しくいただけます。
ジビエに合わせて秋の日本酒をどうぞ
深まる秋に自然そのものをいただくジビエ。そんなジビエに秋の日本酒はぴったりです。最近は、ジビエに合わせるための日本酒を造っている蔵もありますが、おすすめなのは、半年ほど熟成した1回火入れのひやおろしの日本酒です。旨味も増し、料理の味わいを引き立てる落ち着いた味わい。素材の味を充分に楽しみたいジビエには、ひやおろしはぴったりと言えるでしょう。
また、濃厚なソースには、ひやおろしを、さらにもう一年熟成させた日本酒もよく合います。熟成することで柔らかい旨味とコクが生まれ、ソースを引き立てます。
山間部の地酒を選ぶ
普段からジビエに親しんでいる山間部の酒蔵が醸す、しっかりとした味わいの秋の日本酒も良いでしょう。地の物には地のお酒が合うという法則により、普段からジビエを食べている地域の日本酒は、ジビエに良く合います。日本酒でゆっくりとジビエを堪能し、命をいただくことを考える。それも秋の落ち着いた時期にはぴったりかと思います。
ジビエを味わってみましょう!
ジビエは、仕込みも大変で、慣れていないと調理も難しいです。まずは、毛や羽毛がついているジビエは厨房には持ち込めない決まりがあります。野生動物のため、ダニなどさまざまなものが毛に付着している可能性があるからです。
脂身も少な目なため、火入れを上手くしなければ、ぱさぱさの味になってしまい、貴重なジビエ独特の味わいが台無しになってしまいます。そして、古くから伝わる伝統的なそれぞれの肉に合わせたジビエのソースがポイント。全てが合わさり、その時の貴重な1皿ができあがります。
SAKE Scene 〼福では、2,3週間前にご予約いただければ、ジビエのフランス料理フルコースと日本酒のマリアージュをご用意いたします(2~6名の偶数人数・お一人10000~12000円)。魚で言うところの養殖ではなく天然物、ジビエ。ぜひこの時期だけの至福の時間をご堪能くださいませ。
※記事の情報は2019年11月22日時点のものです