うまいもの王国“やまがた”。ガストロノミーな田舎が始まる
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
名物にうまいものなしと言いますが、山形の名物はうまいものばかり。地域ごとに独特の漬物があり、地元のスーパーにはびっくりするほど広い漬物売場。そのなかでも尾花沢の「ぺちょら漬け」は好物で、あとから追いかけてくる唐辛子の辛さは酒の肴にピッタリ。酒はもちろん山形の酒、ワインもおいしく、欧州で注目されているガストロノミーな田舎町は日本では山形から始まりそうな予感がします。
IWCのSAKE部門が山形で開催
審査会の前後には県内各地でチャリティ試飲会が開催され、審査員たちは県内の名所や地元の食材を使った料理を堪能、帰国してからは山形の観光PRの役目も果たしてくれることでしょう。
地理的表示GI山形
欧州では酒や食品の産地をブランド化して保護する動きが盛んです。フランスではワイン法によってワインの産地が格付けされ、産地ブランドが古くから確立していました。南米やオセアニアなどの新世界から安価で良質なワインが欧州に輸出されるようになって、欧州の他の産地も産地ブランド化の必要性を実感し、EU統合とともに各国で次々に整備されました。これはワインに限った話ではなく、食品や職人による加工品などにも広がっていることはご存じのとおりです。
日本でも酒類の地理的表示を制度化し推進する方向にあります。これまで本格焼酎・泡盛では「壱岐」「球磨」「琉球」「薩摩」、日本酒で「白山」「(国としての)日本」「山形」「灘五郷」、ワインで「山梨」「北海道」が認定されています。詳細はこちら。
日本産の酒類が海外に輸出されたり、海外産のものが日本に入ってきたりするなかで、産地を保護する制度が必要になってきました。たとえばEUとの貿易交渉で、EUの産地表示を認める代わりに、日本の産地表示を認めて欲しいと議論する際、拠り所となる制度がないことは不利になります。また、他国で日本の地名を名乗る商品が製造されても、差し止める根拠がないと制止できません。
山形県の酒蔵は協議を重ねてルールを固め「山形」を地理的表示することで合意、ここで定める条件を満たさないものは山形をイメージさせる名称(山形、出羽、最上、庄内、米沢など)を使えないことにしました。日本酒の地理的表示で県単位でまとまったのは山形県が唯一です。品質を高めて山形の酒をブランド化して内外に発信する意欲を感じます。
フードもワインもおいしい山形
こうした例が各地に出てくると、日本でも「おいしいものを食べに地方に行く」という文化が育ちます。東京よりも安くおいしいものが食べられるからではなく、そこでしか食べられない魅力的な料理と酒を楽しみに行くというふうに、山形は10年先を見越して動き始めたのかもしれません。
今年は7月7日の11時スタートです。どうぞ泊りでお出かけください。一昨年出かけた時には、周辺の温泉ではこのイベントに合わせて素泊まりプランもありました。
また、翌日には近くのワイナリーをバスで巡る「ワインツーリズムやまがた」も開催されます。
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