「平成の酒」といえば? 割安なビール、クラフトビール、ウイスキーハイボール

酒文化研究所が酒好きモニターに聞いた、「平成の酒」とは?

メインビジュアル:「平成の酒」といえば? 割安なビール、クラフトビール、ウイスキーハイボール
平成の30年間でインターネットとスマートフォンが普及し、私たちの生活は様変わりしました。ネットで朝、注文した商品がその日のうち届くようになり、通勤電車で多くの人が見ているのはスマホです。SNSで普通の人が発信した情報が世界中で話題になり、現金がなくてもスマホがあれば支払いができるようになりつつあります。働き方も共働き世帯が増え、終身雇用が崩れ、残業をなくし有休を消化しろと大号令がかかっています。経済面では、失われた30年と言われて所得は増えずにデフレが進みました。日本は今、先進国の中で食事や酒がもっとも安価な国なのではないでしょうか。

酒は世の中を映す鏡です。時代が変われば酒も変わります。平成の30年間を代表する酒といったら、あなたは何を思い浮かべますか?

平成の酒アンケート「発泡酒・新ジャンル」が第1位

酒文化研究所の酒好きモニター約100人に「平成の酒といえば?」と聞いてみました。カテゴリー別の1位は、経済的な「第発泡酒・新ジャンル」で42%にのぼりました。平成6年(1994年)にサントリー『ホップス』が発売されると、発泡酒は瞬く間に市場を拡大します。後に新ジャンルに土俵を映しながら経済的なビール風飲料は支持を集め、今では国産ビール類の半分強を占めています。家飲みではビールといえば新ジャンルを指すことが当たり前になり、今年も本格的なリニューアルや大型新製品の投入が続きます。これまでのスタンダードな味わいに加えて、旨味とコク系とキレ系のカテゴリーで激しい争いが繰り広げられそうです。気軽に試せる商品ですから、ぜひ飲み比べてください。
「平成の酒は?」という質問に、経済的なビール風飲料の「新ジャンル」がトップに
「平成の酒は?」という質問に、経済的なビール風飲料の「新ジャンル」がトップに
新のどごし生と金麦
昨年はキリン『のどごし生』のリニューアル。パッケージに「新」を大きく書いて成功。今年はサントリー『金麦』が味をブラッシュアップしてリニューアル。裏ラベルでは「新しい金麦」を表示。缶に手書きメッセージは珍しい
本麒麟、金麦〈ゴールド・ラガー〉、麦とホップ
旨味とコクをアピールした『本麒麟』が大ヒット。今年はサントリーが赤いパッケージで『金麦〈ゴールド・ラガー〉』を発売、サッポロは『麦とホップ』をリニューアルして旨コク系で対抗
極上〈キレ味〉、マグナムドライ、本格辛口
アサヒは得意の辛口キレ系で『極上〈キレ味〉』を投入、サントリーは新ジャンルのキレ系で『マグナムドライ』を復活、サッポロは『本格辛口』で勝負をかける

第2位はクラフトビール

第2位はクラフトビールです。29%得票しました。こちらも平成6年の細川内閣のときにビール製造免許の規制が緩和され、中小規模でのビール製造参入が可能になったことが起点です。各地に地ビールブルワリーが誕生し、紆余曲折を経て10年ほど前からクラフトビールとして人気が復活、ビアフェスには熱烈なファンが大勢集まります。

クラフトビールにはさまざまな特徴がありますが、わかりやすいのはホップをたっぷり使っていることでしょう。一般的なビールの2~3倍、商品によっては10倍ものホップを投入します。苦みを強くしたい、華やかな香りを出したい、ホップの柑橘系の香りを強調したいなど、狙いによってホップの種類と量を加減し、製造工程のどこでホップを投入するかを工夫します。まずはホップ感の違いに注目して飲むことをおすすめします。
ネスト
いち早く海外に進出し日本のクラフトビールを牽引する『ネスト』。茨城の木内酒造が製造
和の彩り
問屋や小売店のオリジナル商品も増えてきた。『和の彩り』は赤(ペールエール)と白(ホワイトエール)の2種類。三井食品が企画販売する(製造は黄桜)
アンカー
クラフトビールはM&Aも盛んで、アメリカン・クラフトビールのパイオニアである『アンカー』は日本のサッポロビールの傘下
グランドレザーブ
ベルギービールのなかでも特別の存在である修道院ビールの『シメイ』。注目はビンテージで味わいが異なる『グランドレザーブ』

そしてウイスキーハイボール

第3位はウイスキーハイボールです。ほぼクラフトビールと並ぶ27%を得票しました。ウイスキーの需要が低迷していた平成前~中期から地道にハイボールのおいしい飲み方を啓蒙し、2008年に飲食店で一杯目にジョッキで飲ませるスタイルがヒット、家飲みにもすぐに広がって、ここ数年のウイスキー全体の需要拡大へとつながっていきました。サントリーウイスキー『角瓶』の小雪さんのテレビコマーシャルを覚えている方も多いと思います。ネットでは小雪さんが教える「おいしいハイボールのつくり方」動画が評判になりSNSで拡散、インターネットの情報発信力の強さが際立ちます。
ロックフィッシュ
ハイボールの名店「ロックフィッシュ」では、『角瓶』を冷凍庫でキンキンに冷やし、冷たいソーダで割るノー・アイススタイル。氷が解けて薄まらないと口コミで広がった
角ハイボール
『角ハイボール』は食中酒としてすっかり定着した

商品では『スーパードライ』『獺祭』『プレモル』

平成を代表する商品も聞いてみました。トップは『アサヒスーパードライ』と『獺祭』がともに32%で並びました。前者は昭和62年(1987年)の発売ながら平成に入っても勢いは衰えず、ビールのトップブランドとして日本を代表する酒になりました。後者が広く知られるようになったのはここ5年ほどですが、発売は平成2年(1990年)です。おいしさの追求に妥協せず、合理的な思考をそのまま行動に移すバイタリティで障害を次々に乗り越えてきました。銀座に直営店を構え、昨年はパリにJ・ロブション氏と共同でレストランを開店、現在はアメリカのニューヨークに酒蔵を建設しています。
獺祭
昨年、DASSAI DESIGN AWARDを開催し、最優秀作品を『獺祭』のパッケージに採用
この2つに続いたのが『サントリー ザ・プレミアム・モルツ』の15%、そして『サントリーウイスキー角瓶」13%です。支持率が10%超えたのはここまでで、どれも平成の時代に新しい価値を提案し市場を創造できた商品です。以下は評価した人のコメントからです。

アサヒスーパードライ(昭和62年発売)
「この味が、時代を変えた。今も記憶に残るメッセージです」(20代男性)
「ビールを苦さの飲み物からスッキリ辛口へと一新した」(60代男性)

●獺祭(平成2年発売)
「日本酒をすっきりしたワインのような飲み物として日本酒ファンを拡げた」(60代男性)
「味もメッセージも世界を見据えた新時代の日本酒」(40代男性)

●サントリーザ・プレミアム・モルツ(平成13年発売)
「30代の頃に香りと高級感に魅かれて飲みまくったビールです。」(50代女性)
「プレミアムビールをはじめて知り、TPOで飲み分けるようになった」(50代男性)

●サントリーウイスキー角瓶(昭和12年発売)
「角ハイはウイスキーを食事しながら飲む酒に変えた」(50代男性)
「ハイボールでウイスキーを若者も飲む酒にした」(50代女性)
 
プレミアムモルツ
プレミアムビールという新しい価値を確立した功績は大きい

昭和の代表は国産ビール、日本酒、ジャパニーズウイスキー

平成と比較する意味で昭和を代表する酒も聞いてみました。昭和の時代は酒類販売の価格競争もなく、市場は右肩上がりで常に成長してきました。主要種類のシェアは安定し、トップブランドの交代が起きにくい時代でした。そんな昭和の酒の第1位は「国産ビール」です。キリンビールがトップを維持し、シェアが高まり過ぎて独占禁止法に抵触するとまで言われました。

第2位は「日本酒」です。際立つトップブランドこそありませんでしたが、全国に販路を広げ、マス広告で知名度を高めた灘・伏見の大手メーカーの全盛期です。地酒が中心であった全国津々浦々へと展開して、じわじわと集中度が高まりました。

第3位には「ジャパニーズウイスキー」があがりました。『サントリーオールド』が昭和後半の20年以上トップの地位を維持し、高い人気を誇りました。
昭和の酒ランキング
昭和の酒のランキング。古き良き時代と感じるのは50代以上の方でしょう
さて、もうすぐはじまる新しい時代をリードする酒はどうなるでしょうか。今から楽しみです。

  

『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。

さけ通信ロゴ
※記事の情報は2019年2月23日時点のものです。
  • 1現在のページ