シチリアワインの歴史を変えた革新のワイナリー「プラネタ」
地中海に浮かぶイタリアのシチリア島。海の交通の要所として古くから栄えたこの島のワインが世界的に注目を浴びるようになったのは、つい近年のこと。今回は、そのきっかけとなったワイナリー「プラネタ」をご紹介します。
シチリアワインの歴史
地中海に浮かぶイタリア、シチリア島。地中海の交通の要所として様々な国に支配されてきたシチリアは、古代文明の交差点とも呼ばれており、古くからワイン造りも盛んで、その歴史は紀元前4000年に遡るとも言われています。
地中海の要所であったことから、いくつもの民族、文明がこの島を往来してきたという歴史があります。ブドウ品種についても然りで、西アジアが原産とされるヴィティス・ヴィニフェラがギリシャ経由で持ち込まれ、古代ローマ帝国の領土拡大ととも北上しヨーロッパ全土に広がっていったと考えられていることから、数多の品種がここシチリアを経由したものだと推測されています。
事実、シチリアには今でも数えきれないほどの固有品種が存在しており、白ブドウのインツォリア、カタラット、グレカニコ、カリカンテ、グリッロ、黒ブドウのネロ・ダーヴォラ、フラッパート、ペリコーネなど、例を挙げればキリがないくらいです。
そんな恵まれた環境のシチリアですが、1990年代までは生産量は多いものの、そのほとんどが輸出コストの低いバルクワインとして出荷されており、品質の高いワインを生産する産地としては認識されていませんでした。
この歴史を塗り替えたのが、今回ご紹介するワイナリー「プラネタ」です。
シチリアのワインの歴史を変えた「プラネタ」
プラネタは300年前からこの地でブドウ栽培に携わるプラネタ家の当主ディエゴ・プラネタ氏の指導のもと、当時20代のアレッシオ・プラネタ氏がディエゴの娘フランチェスカと弟のサンティを中心に設立した家族経営のワイナリーです。
今回はそのプラネタ社にて現在、醸造責任者を務めるアッレシオ・プラネタ氏が来日されるということで、いろいろとお話を伺いました。
なぜ家族経営のプラネタが5つのエリアに6つものワイナリーを所有しているのでしょうか。その答えは、ブドウ畑を取り巻く自然環境要因、すなわちテロワールです。
シチリア“島”と聞くとどんな大きさを思い浮かべるでしょうか。島と言ってもその面積は四国と九州の間くらいにはなるので、私たちが一般的に想像する島の大きさとは全くの別物。なので同じシチリア島でもエリアによってそのテロワールは様々。もちろんこの5つのエリアもテロワールがそれぞれ異なります。
プラネタが最初のブドウを植樹した地、シチリアの西部に位置する「メンフィ」は、シャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーといった国際品種から始まり、今ではグレカニコ、ネロ・ダーヴォラ、グリッロといったシチリアの土着品種まで幅広く栽培するプラネタの最重要エリアで、オリーブオイルの製造にも力を入れています。
次にプラネタはシチリアの南東部に位置し、シチリア唯一のDOCGであるチェラズオーロ・ディ・ヴィットリアのあるエリア、「ヴィットリア」に植樹を開始。続いて最南端に位置する「ノート」、古代品種に力を入れている北東部の「エトナ」、北端に位置する「カーポ・ミラッツォ」と、5つのエリアにワイナリーを拡大してきました。
では、そんなプラネタを代表するワインをいくつかご紹介したいと思います。
プラネタを代表する品種、シャルドネの最高傑作「ディダクス」
プラネタは1985年の設立当初、メンフィのウルモという場所にシャルドネを植樹しました。この4ヘクタールのシャルドネの畑が今日のプラネタ社の始まりです。
このディダクスは一番最初に植えた1985年のシャルドネのうち、厳選に厳選を重ねたブドウのみを使用し、酵母、樽、全てをこだわり抜いて造られた特別なシャルドネで、イタリア最高級のシャルドネとの呼び声も高い逸品です。
ちなみに“ディダクス”とは、ディエゴ氏の父、ヴィト・プラネタ氏がイタズラばかりするディエゴ氏を怒る時に呼んだ名前だそう。ディエゴ氏自身のお気に入りの名前だったことから、思い入れのあるワインにこの名前を付けたそうです。
イタリアらしさに回帰した白ワイン「コメータ」
アレッシオ氏はイタリアの土着品種を使って、世界に通用する白ワインを造りたいという思いから、1990年代から南イタリアの土着品種を使った実験的なワイン造りを開始します。中でも特に仕上がりが良かったのがカンパーニア州原産の古代品種フィアーノでした。
この古代品種フィアーノは元々、アレッシオ氏のお気に入りの品種でした。自身としても自信作ではあったものの、世間に受け入れられることなく一瞬で消えてしまうかもしれないワインとして、彗星を意味する「コメータ」と名付けたそうです。
今日では最も重要な南イタリアの白ワインの1つに数えられているほどなので、名前のルーツはアレッシオ氏の自虐的なジョークだったのかもしれません。
プラネタの進化を感じた「ロゼ」
実はこのロゼ、フランス3大ロゼの産地のひとつ、プロヴァンスでの醸造経験のあるフランス人を招き、その知見を取り入れているそうです。これまでの伝統は大切にしながらも、新しい風もまた積極的に取り入れていかなければいけないというプラネタ社の進化を象徴するワインなのではないかと思います。
ちなみにこの2021年ヴィンテージはサクラアワード2022でゴールドを受賞しており、それも納得の味わいです。
シチリアの土着品種を昇華させた「サンタ・チェチリア」
そんなシチリアの固有品種であるネロ・ダーヴォラに注力してできたのが、この「サンタ・チェチリア」です。サンタ・チェチリアとはプラネタ家の正式名称”プラネタ・ディ・サンタ・チェチリア”に由来して名付けられており、その名前からもプラネタ社の力の入れ具合が分かるのではないかと思います。
ここまでの3本の産地はすべてメンフィでしたが、こちらはネロ・ダーヴォラの最高産地と称されるノートです。ノートはシチリア島の最南端、実はアフリカのチュニジアよりも南に位置するというかなり温暖なエリアで、ネロ・ダーヴォラの育成には最適な環境となっています。
どれも伝統と革新の息づくプラネタのスピリッツを感じることのできる素晴らしいワインでした。プラネタが歴史を塗り替えた新しいシチリアのワイン、ぜひ家飲みでもお楽しみいただければと思います。
ちなみにプラネタの各ワイナリーには宿泊施設があり、シチリアの料理や自然、文化を身近に感じることができるよう、テーラーメイドなおもてなしも大切にしているそうです。いつかこの状況に終わりが来たら、シチリアの素晴らしい環境を体感しに行きたいものです。アレッシオさん、ありがとうございました。
※記事の情報は2022年7月18日時点のものです。
【商品概要】プラネタ ディダクス・シャルドネ
- 原料品種:シャルドネ100%
- 生産国:イタリア シチリア州
- 容量 / 容器:750ml / 瓶
- 参考小売価格:16,000円(税抜)
- 輸入元:日欧商事
【商品概要】プラネタ コメータ
- 原料品種:フィアーノ100%
- 生産国:イタリア シチリア州
- 容量 / 容器:750ml / 瓶
- 参考小売価格:6,300円(税抜)
- 輸入元:日欧商事
【商品概要】プラネタ ロゼ
- 原料品種:シラー50%、ネロ・ダーヴォラ50%
- 生産国:イタリア シチリア州
- 容量 / 容器:750ml / 瓶
- 参考小売価格:2,600円(税抜)
- 輸入元:日欧商事
【商品概要】プラネタ サンタ・チェチリア
- 原料品種:ネロ・ダーヴォラ100%
- 生産国:イタリア シチリア州
- 容量 / 容器:750ml / 瓶
- 参考小売価格:6,800円(税抜)
- 輸入元:日欧商事
- 1現在のページ