2017.08.08
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イタリア流! 猛暑に最高のパスタとワインの組み合わせ

ベネチア

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが在住していたヴェネツィアをはじめイタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は夏の暑さを乗り切るためにイタリア人が好んで食べるものについてご紹介します。

暑い日のパスタとワインのベストマッチ

厳しい残暑はまだ続きそうだ。日本では夏のとてつもない暑さを「猛暑」というが、イタリア語では”Caldo cane”[カルド カーネ]と表現する。Caldoは「暑さ」を意味するが, caneは「犬」である。直訳すれば「犬の暑さ」となるが、これで「ひどく苛立つような暑さ」というニュアンスらしい。そういえば、英語でも”Dog day”といえば「盛夏」を指す。あちらでは「犬」はちょっと激しい意味があるようだ。

 

さて、前々回のコラムで「イタリアの夏バテ対策」として生ハムメロンを紹介したばかりだが、やはりこの日本版「犬の暑さ」に負けないためにも、家飲みメニューを充実させたい。そこでもう1つ、イタリア流の猛暑に効くレシピを共有したい。それが「冷製パスタと白ワイン」の組み合わせである。

 

まず「冷製パスタ」(Pasta fredda[パスタ フレッダ]という)だが、できるだけシンプルに作るのがポイントだ。例えば、私のヴェネツィア留学時代、お世話になった下宿の大家さんがよく振舞ってくれた冷製パスタは、ツナとオリーブとケッパーだけだった。それが実に喉をよく通るのだ。疲れているときには、味を複雑にしないほうがいい。前の「生ハムメロン」もうそうだが、味はシンプル、組み合わせの妙によって食が進むのだ。

 

さらに、次の3点を守っていただければ、一気にイタリア流のパスタになる。

 

1.茹で上がったパスタは、冷やすのではなく、常温で冷ますだけ。

2.具材とパスタは混ぜ合わせるだけ。これも冷やさない。

3.ケッパーが味の決め手。瓶詰めのケッパーには「酢漬け」と「塩漬け」があるが「塩漬け」を選ぶ。

 

つまり、出来上がりは「ぬるい」パスタになるのだ。「冷製」と聞くと、日本人なら「冷やしそうめん」や「ざるそば」など、しっかり冷えた麺をイメージするだろう。だが、イタリア流は「ぬるい」のである。その代わり、大切なのは、組み合わせる「白ワインをキリッと冷やす」ことだ。このパスタの「ぬるさ」と、冷えたワインの刺激の相性が絶妙なのである。これで夏バテ状態の内臓も回復しないわけはない。

もう一歩進んだ冷製パスタと白の組み合わせ

さて、ここまでなら日本で手に入る材料やワインで十分真似ができる。だがさらに、もう一歩進んだイタリア流の「冷製パスタと白ワイン」を楽しみたい方に、おすすめしたい組み合わせがある。それは私がナポリを旅行したときに味わったものだ。

 

まず冷製パスタだが、ある土地特産のケッパーを使うと一気に味が南イタリア風になる。イタリア語でcapperi[カッペーリ]と呼ばれる「ケッパー」は、現地ではパンテッレリア島産のケッパーが最高とされる。パンテッレリア島はシチリア島の北沖にある。日本で普及しているケッパーはスペインものが多く、小さな粒のものが主流だが、パンテッレリア島産は大豆ほどの大きさがあり、竺付きで売っていたりする。日本でもイタリア専門の食材店や通販で瓶詰めが手に入る。その「塩漬け」を使っていただきたい。独特の風味があり、スパイシーさを感じる。まったりした酸味と塩気がパスタに絡まって南の香りがする一品となる。

 

それに合わせる白ワインには、同じく南部の島、イスキア島の白をおすすめしたい。Ischia Bianco[イスキア ビアンコ]と呼ばれ、イタリアでは独特な白ワインとして有名だ。ナポリの沖に浮かぶ小さな島だが、そこに土着のブドウがいくつも栽培されている。島だから生産量は少なく、どれも貴重だ。特に白ワイン用として有名な土着品種に「ビアンコレッラ」と「フォラステラ」があるが、これらを100%使用したイスキア・ビアンコは、非常にミネラル感が高く、塩味さえ感じられるほどの独特な刺激を持つ。これをしっかりと冷やして、先のパンテッレリア島産ケッパー入り冷製パスタに合わせていただくと、暑い夏の南イタリアでも美味しくいただける最高の組み合わせとなる。私もこれらをいただくたびに、ナポリ湾を見渡すホテルで過ごした夏の午後を思い出してしまう。

 

※記事の情報は2017年8月8日時点のものです。

京藤好男

京藤好男

東京外国語大学イタリア語学科卒業。1995年ヴェネツィア大学留学。イタリア文学専攻。その滞在期間中、ヴェネト州のヴェローナ、ピエモンテ州のランゲ、トスカーナ州のモンタルチーノなど、ワイン名産地の人々と親交を持ち、イタリア・ワインに親しむ。現在、慶應義塾大学など複数の大学で講師を務めるほか、2006-2008年にNHKラジオ『イタリア語講座』、2007年にNHK『テレビイタリア語会話』で講師を務めるなど、様々なメディアで講師活動をしつつ、ワインを始めとするイタリア文化の普及に努めている。著書に『指せば通じる旅のらくらく会話 イタリア』、『文法から学べるイタリア語』(共にナツメ社)、『中級へのイタリア語文法』(三修社)など多数。

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