夏バテ回復のために!イタリアで人気のレシピとおすすめワイン
イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが在住していたヴェネツィアをはじめイタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は、イタリア人が夏バテになったときに食べたくなる料理についてご紹介します。
夏バテしたら、イタリア人ならこの一品
「夏バテ」イタリア人が、そんなときでも、これだけは食べたくなる、という一品。それは、
Prosciutto e melone[プロッシュット エ メローネ]「生ハム・メロン」
薄切りしたメロンに生ハムをグルっと巻くだけ。とてもシンプルな前菜です。メロンのちょっとカリカリした食感とみずみずしい甘み、それに生ハムの柔らかくも弾力ある歯ごたえ、そしてやさしい塩味が、口の中で絶妙に溶け合い、清々しい「マリアージュ」を生み出してくれます。これなら、うだるような暑さの中でも、口が勝手によろこんで食べてくれること請け合い。そんな一品を、日本でもさらに美味しくいただく工夫を、後ほどお教えします。
生ハム・メロンと相性のいいワイン
第1位 ランブルスコ(Lambrusco)
赤のスパークリング・ワインです。ハムは豚肉であり、塩味が凝縮した加工食品。しかし薄くスライスするので、その味はかなり繊細なもの。そんなデリケートさを損なわず、しかも肉の旨味を引き立てるには、「赤」の要素がありつつ、軽く、爽やかなワインが最適。スパークリングなら軽やかさに加え、その炭酸の刺激が、食欲増進にもつながります。エミリア=ロマーニャ地方で採れる、土着のブドウ「ランブルスコ種」は果実味がしっかりあり、ミネラル感も豊富な黒ブドウ。渋みが少なく、酸味と甘みのバランスのいいワインに仕上がります。赤発泡には「甘口」「中甘口」「辛口」がありますが、食欲減退のときなら「辛口」がおすすめ。
第2位 ピノ・グリージョ・ロゼ(Pinot Grigio Rose)
「ピノ・グリージョ」とは、黒ブドウでありながら、白ワイン用に作られるというおもしろい品種。したがって、白ワインになったときには、通常の白に比べて、渋みが多く、コクのある白に仕上がります。以前、このコラムで書きましたが、「ロゼ」の製法は、赤ワイン用のブドウを使い、途中から白ワインの製法に切り替えて作ります。ピノ・グリージョはまさにその要素を最初から備えていると言ってもいいブドウで、ロゼになると味の丸みが増します。元来ハム、サラミ、ソーセージなどにぴったりで、生ハム・メロンの繊細な味に最適です。
と、ここまで1位、2位と書きましたが、つまりは、「赤のスパークリング」か「ロゼ」なら、お好みで、いかなるワインでもオーケーです。また「ロゼのスパークリング」も当然合います。気になるワインがあれば試してください。
日本で本場の生ハム・メロンを再現する工夫
Mi sento tanto debole per questo caldo estivo che non ho molto appetito.
(この夏の暑さに体力が萎えて、あまり食欲もない)
このように意訳するしかありません。
しかし、似たような症状はやはりイタリア人にもあります。イタリアの夏の日差しの強さはハンパではなく、うっかり暑さ対策を忘れて、街中を歩き回ろうものなら、頭痛、吐き気、めまい、そして食欲減退といったことにつながります。そんなイタリアで「夏バテ」を感じたときの、これぞという一品が「生ハム・メロン」。実は、メロンに生ハムを巻くというと、日本人には「果物とハム?」と、嫌悪される方も少なくありません。
その原因は、日本のメロン品種にあります。日本のメロンは「マスクメロン」が主流で、甘みと柔らかさ(完熟度)を重視しています。これに「ハム」を組み合わせては、甘みと塩味のバランスが悪すぎます。メロンは「ウリ科」の植物ですが、イタリアのメロンは、甘さ控えめ、食感はカリカリで、まさに瓜を食べている感じなのです。その感覚であれば、生ハムとの組み合わせは絶妙です。
そこで、日本でその味を再現するならば、
「マクワウリ」
を試してみることをおすすめします。マクワウリはウリの食感をしっかり残したまま、果物のような甘みを備えており、イタリアのメロンと似ています。
さらにおすすめなのは、「サン・ダニエーレ産の生ハム」です。日本では輸入量が少ないハムですが、一般的に多く日本に入ってきている「パルマ産」よりも味が繊細です。違いを一言でいえば、サン・ダニエーレ産は塊の状態で、一度水分を抜くためにプレスしています。したがって、肉の部分がほぐれた感じになっており、やや乾燥した食感が特徴です。これがメロンのジューシーさと見事に合います。「マクワウリとサン・ダニエーレ産生ハム」は、日本の夏を元気に乗り切るための、新たな救世主になってくれるでしょう。
※記事の情報は2017年7月25日時点のものです。
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