ついに新酒の季節到来。フレッシュな日本酒を楽しもう。
日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する簗塲友何里(やなば ゆかり)さんのお酒コラム。今回は、待ちに待った新酒の季節到来! 新酒の楽しみ方や、おすすめの新酒をご紹介いただきます。
新酒が出始めました!
できたばかりのピチピチ、生き生きとした軽やかさは、晩酌の最初の一杯にぴったりですね。この時期限定の軽快な味わいをぜひ、楽しみたいものです。新酒は、出るそばからその日本酒蔵のファンが買っていってしまいますから、高競争率のお酒です。酒屋さんの新酒入荷情報をどうかお見逃しなく。
日本酒造りは、秋に米の収穫が終わると同時に始まります。早いところでは11月下旬頃から新酒が楽しめる蔵もあります。また仕込みのスケジュールによっては、2月以降に出てくる新酒もあります。酒屋さんでは「しぼりたて」「新酒」「初しぼり」などが表記されているものが新酒。製造年月日をたしかかめれば、間違いありませんね。
最もフレッシュな「究極のしぼりたて」の新酒を味わいたい場合は、立春朝搾りをどうぞ。これは立春の朝に搾り、その日のうちに地元の酒屋さんで購入できる日本酒です。
日本酒蔵では、新酒ができると新しい緑色の杉玉を軒先に吊るします。新酒ができたよ! というしるしです。これを見るとワクワクしますね。
おすすめの新酒
まずは超ハイレベルな新酒から。香川県金比羅宮近くの琴平でカリスマ的人気を誇る蔵、丸尾本店の新酒。芳醇な旨味と軸となる酸味、複雑性と余韻の長さが魅力な日本酒を造り続けています。
この蔵の新酒は、高い醸造技術をお持ちの蔵元であり杜氏の丸尾忠興さんの一文字を入れた「興」です。新酒らしい軽やかさだけでは終わらない、雑味のないすっきりした味わい、ボリューム、スケールの大きさ、複雑性、そしてトロっとした滑らかさもあり、さすが凱陣の一言。通常、新酒は早飲みをおすすめしていますが、こちらは熟成させても味のりがして来て美味しくなります。また、温めても飲むのもおすすめです。
◯すっぴんるみ子の酒 純米無濾過生原酒(写真中)
三重の森喜酒造場の新酒は、無濾過、無炭素、無加水、無添加のお化粧をしていない日本酒で「すっぴん」と名付けられています。ラベルは、漫画「夏子の酒」の作者、尾瀬あきら先生がこの蔵を取り仕切る専務、るみ子さんを描いたものです。すっきりとした新酒らしい飲みやすさの中にも米の自然な甘味、生原酒のコク、程よい酸のバランスとみずみずしさが魅力的な味わいです。
◯残草蓬莱(ざるそうほうらい)純米 緑ラベル しぼりたて生原酒(写真右)
180年以上前に神奈川県の山間部の小さな町に創業し、現在8代目となる大矢孝酒造。酒蔵内は、昭和初期にタイムスリップしたかのような空間。蔵元ほぼお一人で、温故知新の精神を大事にしながら造っている日本酒です。残草蓬莱の新酒は、しっかりとした酸味と生原酒のパワフルさ、爽やかなハーブ感があり、余韻の長いバランスの良い食中酒です。
フレッシュなまま味わうには
一般的には、開栓したら早めに飲み切った方が良いいでしょう。ただし、ものによっては少し経つと「味のり」してくるものもあります。この「味のり」とは軽快でみずみずしいだけでは終わらない深みのある味わいが出てくること。コクが出てきて、お米の甘さや優しさが感じられる味わいのことです。新酒を飲みきらずに少し残しておいて、味の変化を確かめてみるのもいいかもしれません。
お料理と合わせて楽しむ
◯ハーブのような味わいの爽やかな新酒には……
例えば、今が旬、脂ののった鰆(さわら)の酢締めは如何でしょう? 私の店ではパセリのエマルジョンソースで仕上げた鰆の酢締めに、ハーブのような味わいの爽やかな新酒を合わせご好評を頂いています。
◯ボリューム感を感じる新酒には……
フランス、アルザス地方の鍋料理ベッコフも新酒と良く合います。豚肉や牛肉、じゃがいも、玉ねぎなどをたっぷりのハーブで煮込んだ料理です。現地では白ワインを合わせるのが主流ですが、フレッシュでボリューム感がある日本酒の新酒もぴったり。
こちらも旬、にごり酒
にごり酒も、デリケートなお酒なので、冷蔵庫で保管しましょう。冷やして飲んで美味しいのはもちろんですが、意外に、お燗にしてもさらにまろやかになって美味しいです。特に酸味を感じるにごり酒は、お燗したときにその酸味が味の軸になってとってもバランスが良い味わいになります。
また甘酒のような、甘いにごり酒は、しょうが汁を少し入れても美味しくいただけます。寒い冬にはぴったりですね。
「活性にごり酒」は、瓶の中でなお発酵を続けている「生きた」お酒です。開栓した時に中身が溢れ出してしまう恐れがありますので、開栓前に冷蔵庫で静かに冷やし、落ち着かせてから蓋をあけましょう。活性度が高い日本酒は、特に開栓注意です!
新鮮なうちに飲み比べ
※記事の情報は2018年1月31日時点のものです。
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