イタリアワインのニューウェーブ! 復活・再生ワインとは!?
ポンペイ遺跡のブドウ畑で2000年前と同じ品種、同じ製法で作られたワインをはじめ、イタリアでは「復活」や「再生」をテーマにしたワインに流行の兆しがあるのだそうです。
イタリア語講座のディレクターが持ってきた謎の赤ワイン
その収録最終日、ディレクターのHさんが「幻のワイン」ともいわれる貴重な品を入手して、打ち上げに花を添えてくれました。それがこのVilla dei Misteri[ヴィッラ・デイ・ミステーリ]という赤ワイン。
実はこのワイン、ポンペイの遺跡の中で見つかった約2000年前のブドウ畑で、当時植えられていたものと同じブドウ品種を栽培し、古代の人々と同じ製法でもって再現するという「古代ワイン復活プロジェクト」によって蘇ったワインなのです。つまり、古代ローマの人々と同じワインが飲めるというわけ。
そのプロジェクトを担ったのは、1878年創業、地元では戦前から続く唯一のワイナリー「マストロベラルディーノ社」のピエーロ社長。彼が今回、番組出演にも応じてくれ、古代遺跡内にあるブドウ畑を自ら案内。古代ワインの製法の研究、ブドウの育成方法、再現のプロセスなどを存分に紹介してくれます。その模様は2月27日(火)午前0時の放送にて。ご期待ください!
さて、気になるそのお味ですが、なんと、想像以上に洗練されており、まったく現代のワインと遜色がないのに驚きました。香りは華やかでバラやブラックチェリーのニュアンス。味にはスッキリとした酸味があり、タンニンもしっかり感じますが、のど越しは爽やかで、思っていたほど雑味がありません。しっかりボディはあるけれども、軽い印象で、ブドウの特徴がしっかり抽出されていると思います。使用されたブドウの品種は、発掘による研究からピエディロッソ種が主体。この品種は現在でも「カンピ・フレグレイD.O.C.」など、カンパニア州を代表するワインの主力品種となっており、いわば「現役のブドウ」です。
「こんなに高度な技術が2000年前にもうあったのか」
とため息まじりにワインを味わっていると、
「ブドウからワインを造り出すことに関しては、実は2000年前も今もあまり変わりないんだ。衛生面や作業機械の導入など、現在の方が進んでいる部分もあるけれど、製法に大きな違いはないんだよ」
解説するピエーロ社長の声が、モニター画面から聞こえてくるではありませんか。ワイン造りの基本は、何千年も前に完成しているわけですね。大昔から受け継がれる、ワインの伝統と歴史の重みに脱帽する思いでした。
他にもあるワインの復活プロジェクト
ピエモンテ州の土着品種「ブッサネッロ(Bussanello)」
アスティ県の小村にあるワイナリー「クロティン社」がこの品種を再生させています。かつて、この地方で盛んに栽培されていた品種でしたが、フレイザ種やバルベーラ種にその座を奪われ、絶滅しかかっていました。2003年頃、社主のフェデリーコ・ルッソ氏がこのブドウの栽培を復活させ、その単一品種での白ワインの生産に成功。この地でしか作れない土着ワインとして売り出しています。
プーリア州の土着品種「ススマニエッロ(Susumaniello)」
イタリア南部のサレント半島でワイン造りをする「テヌーテ・ルビーノ社」の社主、ルイージ・ルビーノ氏が、この品種を復活させています。このブドウは、栽培に非常に手がかかり、大量生産に向かないことから1980年代に廃れてしまいました。しかしルイージ氏は、逆にこのプーリア州独特の広い平野と温暖な気候、そして海に近いサレント半島のテロワールを生かして、この地でしか育めない黒ブドウの可能性を追求し、見事に再生させました。今ではこのブドウの単一使用で、独特の魅力的な赤ワインが産み出されています。
このように土着品種の特徴を活かした、他にないワイン造りは、今後もイタリアで増え続けて行くことでしょう。そうして復活・再生される、古くて新しいワインが、いつか「トレンド」になるかもしれません。こうした楽しみを見つけると、イタリア・ワインの動向から益々目が離せなくなります。
※記事の情報は2018年2月20日時点のものです。
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