酒米の三大品種とオススメ日本酒のご紹介!

収穫の秋。日本酒造りに欠かせない「酒米」もたわわに実る季節がやってきました。今回は日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する日本酒ラヴァー、簗塲友何里(やなば ゆかり)さんによる、酒米三大品種の解説とオススメ日本酒をお送りします。

ライター:簗塲友何里簗塲友何里
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日本酒の醸造に適した「酒米」とは?

私が経営する「SAKE Scene〼福」は、日本酒をご提供する際には、なるべく原料のお米の情報もご紹介しています。それぞれの日本酒蔵のストーリーや味わいはもちろん大切ですが、お米についての情報がラベルに記載されている場合は、酒蔵様も飲み手に伝えたい大事な情報だと解釈して、お客様になるべく丁寧に伝えるようにしています。それだけ日本酒にとってお米は大切な要素です。それではまず、米の特徴を簡単にご説明しましょう。

酒米の正式名称は「酒造好適米」

多くの場合、日本酒造りには「酒米」を使います。正式には「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」と言い、特に日本酒の醸造に適したお米の品種を指します。私たちが普段食べている食用米との違いは、大きさや削りやすさ、そして成分などが挙げられます。

酒米が酒造りに向いているわけ

酒米と食米の違い、心白
酒米は粒が大きく、中心に心白がある
酒米には、心白(しんぱく)という、白く不透明な部分があります。心白の部分は、たんぱく質や脂肪が少なく、日本酒にした時に雑味が残りにくくなります。そして心白の中は隙間が多いので麹菌が入り込みやすく、繁殖がしやすいため良い麹ができるのです。

日本酒を造る際には玄米をある程度削りますが、酒米は食用米に比べて米粒自体が大きいので、削る際にも砕けにくく雑味が少なくなります。さらに吸水率、保水率が高いため、米の内側に水分を含みやすいというのも特徴です。

酒米の説明をざっくりとしましたが、実は酒米は100種類以上もあります。その中でも代表的な3つの品種をご紹介しましょう。
 

代表的な酒米の種類① 山田錦(やまだにしき)

外国人のお客様にも「酒米のキング」とよく説明していますが、一番有名な酒米です。代表的な産地は兵庫県です。80年ほど前、兵庫県立能地試験場にて山田穂と短稈渡船の交配により誕生しました。現在でも山田錦の全国総生産量の70%が兵庫県産です。酒質によっては徳島県産の阿波山田錦も好んで使われます。

山田錦は、繊細なまろやかな奥深い豊醇な味わいに仕上がります。高精米の日本酒が多い、鑑評会用の出品酒にも多くの蔵が使用します。また、山田錦は熟成にも向いています。

おすすめの山田錦の日本酒は、神奈川県の川西屋酒造店の「隆(りゅう)純米大吟醸」です。阿波山田錦を100%使用し、なめらかな旨味と芳醇な優しい香り、綺麗ながらも印象に残る美しい日本酒です。
隆
神奈川県川西屋酒造店の「隆(りゅう)純米大吟醸」

代表的な酒米の種類② 雄町(おまち)

「雄町スト(おまちすと)」と名乗る熱狂的なファンがいるほど人気の酒米です。古い歴史のある酒米で、100年以上前から作られている品種です。今回挙げている代表的な酒米、山田錦や五百万石をはじめ有名な酒米の中には、この雄町の系譜から連なる品種が多くあります。

岡山県が代表的な生産地です。栽培地域によって「備前雄町」や「赤磐雄町」というブランドもあります。味わいは濃醇で旨味があり、まろやかで華やかな存在感を感じます。

私のおすすめは、山梨県の笹一酒造の「旦(だん)山廃純米吟醸 備前雄町」です。出来たては旨味を感じる華やかでジューシーな味わいですが、熟成するとカスタードクリームのようなコクを感じ、お燗をするとより奥行きとまろやかさが出てきます。
 
だん
山梨県笹一酒造「旦(だん)山廃純米吟醸 備前雄町」

代表的な酒米の種類③ 五百万石(ごひゃくまんごく)

新潟県農事試験場で育成された酒米です。北陸地方で中心的に栽培されています。味わいは淡麗のすっきりとした、キレのあるタイプの日本酒に仕上がりやすいです。新潟県産の日本酒は淡麗辛口という印象がありますが、この五百万石があるからこそ生まれた味わいだといわれています。

ちょっとコクがある日本酒が好きな私のおすすめは、島根県の旭日酒造の「十旭日(じゅうじあさひ) 純米酒ひやおろし」です。辛口ながらも旨味を感じる純米酒で、夏を越して秋に出荷される「ひやおろし」のため、すっきりとした味わいに旨味と柔らかい滑らかさが生まれて、お食事にも良く合います。イチョウのラベルが可愛い、季節限定の日本酒です。
 
十字朝日
島根県旭日酒造「十旭日(じゅうじあさひ)純米酒ひやおろし」

好きな酒米を見つけてみましょう

日本酒は、造り手、水、風土、酵母など、お米以外にも味わいや香りを決める要素が多く、なかなか米だけの特徴を感じにくいものです。

私の経営する日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」では、同じ蔵の米違いの飲み比べができるよう、限られた蔵の銘柄違いで日本酒を揃えています。ぜひ味わってみて、好きな酒米を探してみてくださいね。

【この記事でご紹介した蔵元】

神奈川県・川西屋酒造店

山梨県・笹一酒造

島根県・旭日酒造


※記事の情報は2019年10月16日時点のものです
こちらの記事でも、酒米ミニ知識をご紹介しています。
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