お酒とむくみの関係は? 予防法もアドバイス
ビールが美味しい季節です。でも気がかりなのが、翌朝の顔のむくみ…。なぜお酒を飲むとむくみが生じるのか、管理栄養士の森由香子さんが原因とメカニズムを解説。むくみ予防のために摂るべき栄養素も教えてくれました。
お酒をたくさん飲んだ翌朝、顔がむくむのはなぜ?
夏の夜の醍醐味といえば、冷たいビール。乾いたノドを潤す瞬間は、何ものにも代えがたいものがあります。
ご存知のようにお酒は利尿作用があるため水分補給にはならず、かえって水分不足をまねきます。
例えばビール100ml飲むごとに、体内ではアルコール代謝などにより120mlの水分を消費することがわかっています。
しかし、体の水分を消費するといっても、お酒をたくさん飲んだ翌朝は顔がむくんでパンパン、特にまぶたが腫れぼったくなっていて、水分消費とはちょっと考えにくい状態になっていることが多くないでしょうか。
そもそもむくみは、何が原因で起こるのでしょう?
【むくみの原因①】飲酒による血中アルコール濃度の上昇
飲酒すると血中のアルコール濃度が高くなり、血管が拡張して、血管から水分が漏れ出します。
私たちの体の細胞には、その内側と外側の水分濃度を同じにしようとする働き(浸透圧)がありますが、何らかの原因でバランスが崩れると、血管内の水分が外に出て戻れなくなり、細胞と細胞の間にとどまることがおきます。このようにして余分な水分が体内に溜め込まれてしまう状態となり、むくみが生じるのです。
【むくみの原因②】塩分の摂り過ぎ
思い出してみてください。たいてい、お酒を飲むときには、味の濃いおつまみをいただくことが多いですね。 私たちの体は、たくさんの塩分を摂取すると血液中のナトリウム濃度が上昇しますが、この情報はすぐに脳に伝わり、ノドの渇きによる飲水行動を起こします。
同時に脳は、抗利尿ホルモンを分泌して尿量を減らす指令も出します。こうして体液量を増やして、ナトリウム濃度を元に戻そうとするのです。体は塩分(ナトリウム)濃度を一定に保つ働きがあるため、体内に水分が蓄えられやすくなりむくみの原因をつくります。
午前中は顔、午後は下半身がむくみやすくなる
午後は、下半身にうつります。原因は長時間、同じ姿勢でいたりなど血行不良が原因で入浴やマッサージで解消できます。
一時的な飲酒や塩分(ナトリウム)摂取、血行不良などによるむくみは、数時間や1日程度で解消されます。
【むくみの予防法①】おつまみの塩分量に注意
1つは、当然のことですが薄味を心がけることです。
例えば、ごま、しょうが、にんにく、七味、こしょう、ワサビ、大葉、ネギなどの薬味や香辛料、レモン、ゆず、カボスなどの酸味、シイタケ、カツオ、昆布などの旨味食品を利用しましょう。
また、調味料に含まれる小さじ1杯あたりの食塩量を確認することから始めましょう。ちなみに、食塩5.9g、濃口しょうゆ0.9g、ウスターソース0.5g 辛味噌(赤色)0.9gとなります。
また、できれば加工食品に含まれる塩分量にも注意を払いましょう。栄養成分表示にNa(ナトリウム)の数値があれば下の計算式で塩分量を求めることができます。
食塩(g)=Na(ナトリウム)量(mg)×2.54
ちなみに、平成29年度の国民健康・栄養調査における男性の平均食塩摂取量は10.8g/日、女性は9.1g/日。
一方、日本人の食事摂取基準(2020年版)で示される目標量は、男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満。高血圧治療ガイドライン2019で示された高血圧者の減塩目標は、6g/日未満です。
目標値に対して、日本人の平均食塩摂取量は男女ともに多いのが実情です。
【むくみの予防法➁】カリウムを積極的に摂る
ちょっと味が濃い食事かなと感じたら、これらの食品からカリウムを補給しましょう。そして、お水をたくさん摂って排尿を促し、体内の余分な塩分を体外に排出しましょう。
お酒は適量、おつまみは薄味を心がけて
むくみは、水分が溜まっているとイメージするため、水分摂取を控えようと考えがちですが、それは逆効果です。ただ水を飲んでも、浸透圧を一定に保とうする作用が働いて、時間が経つと尿となり出てしまうので体液量は増えません。むくみを懸念して飲水を控えるのは良くありません。
控えるべきは、飲酒量と濃い味付けの料理です。飲酒量は適量、おつまみは薄味を心がけ、むくみ知らずの食習慣をつくりましょう。
※記事の情報は2020年7月13日時点のものです。
参考資料
『減塩のすべて 理論から実践まで』日本高血圧学会減塩委員会編(南江堂)
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