知られざるワインの栄養と健康効果

ワインの健康効果というとフレンチパラドックスで有名になった赤ワインが思い浮かびますが、白ワインやロゼにも体に嬉しい栄養が豊富に含まれているんです。管理栄養士の森由香子さんが詳しく解説します。

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「フレンチパラドックス」で一躍有名に! 赤ワインの健康効果

レストラン、バー、そして自宅でと気軽に楽しめるお酒のひとつにワインがあります。特に、健康効果が話題になり人気が高まったのがフレンチパラドックスで有名な赤ワインです。

フレンチパラドックスとは、フランス人が肉やバターなど脂の多い料理を好むのにも関わらず、きわめて心臓病死亡率が低いという事実があり、これはフランス人が食事と一緒に赤ワイン(ポリフェノールが動脈硬化を進行しにくくしている)を飲んでいるためであるとして、赤ワインに健康効果があると考えられるようになりました。

フレンチバラドックスが世の中に知れ渡ると、普段、お酒を口にしない方まで健康効果を期待して嗜むようになり、赤ワインは健康飲料になりえるほどの絶大な地位を築きあげました。

赤だけじゃない! 白ワインやロゼの嬉しい栄養成分

実は、健康効果が期待できるのは赤ワインだけでありません。

白ワインもロゼワインも、赤ワインと同じようにポリフェノールを含むいろいろな栄養成分が含まれています。ワインのアルコール含有量は平均12.0~12.5%、そして、アルコールや水を除いた約8%が栄養成分なのです。

8%程度と聞くと少ない印象を受ける方もいると思いますが、その中に含まれる成分は多岐にわたり、これらの成分がワインの色、香味、熟成などの個性を作りだす重要な役目を果たしています。

8%に含まれる成分をご紹介しましょう。

カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類や、ナイアシン、ビタミンB6 、パントテン酸、そして赤ワインのみに含まれるピオチンなどのビタミンB群です。

他にも、酢酸、クエン酸などの有機酸、ブトウ糖、果糖などの糖類、アルギニン、グルタミン酸、アラニン、グリシンなどのアミノ酸、含硫黄化合物、テルペノイド、ケルセチン、カテキン、タンニン、レスベラトロール、アントシアニンなどのポリフェノール類などがあります。これらの成分の働きは後ほど説明します。

その前に、白、赤、ロゼそれぞれ100gあたりのエネルギー量(kcal)、ミネラルの含有量を次の表からみていきましょう。
 
ワインの成分表
ご覧の通り、ワイン100g当たりのエネルギ―量は、白、赤が73kcal、ロゼは77kcalと若干高めとなっていますが、ワイン全体でみると意外と低いですね。グラス1杯程度で抑えられたら、体重の増加にも影響しなさそうです。
ワインを注ぐ

ワインの栄養成分① ミネラル類

次に、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄をはじめとしたミネラル類の栄養成分の説明をしていきたいと思います。

■カリウム
赤ワインが110mgと白やロゼの倍近くあります。カリウムは、食塩(ナトリウム)の摂り過ぎによる高血圧に対して降圧作用があります。美味しいおつまみに塩分(ナトリウム)はつきものなので、お酒好きには嬉しいですね。

ワインのほかにカリウムの多い食品に、生野菜、さといも、鰆、鶏肉、納豆、ヒジキ、切り干し大根、アボカドがあります。これらを使った料理とワインの組み合わせでカリウム量をさらに増やして、ナトリウム(塩分)を排泄しやすくしましょう。

■カルシウム
ロゼが10mgと高いですね。カルシウムはご存じのとおり、骨や歯の成分で心臓やすべての筋肉が正常に収縮するのを保ったり、血液の凝固、酵素の活性化などの働きがあります。

血中のカルシウム濃度は、9~11mg/dlとほぼ一定に保たれているので、血中のカルシウム濃度が低下すると、その濃度を保つために骨のカルシウムが血中に溶けだし骨の形成に影響がでます。

カルシウムはビタミンDがないと吸収が高まりません。ビタミンDは、吸収率をアップさせるだけでなく血中のカルシウムバランスも整えてくれます。ビタミンDは、アンコウの肝、鮭、サンマ、しらす干し、マガレイ、うなぎのかば焼き、クロマグロ、鶏卵、キクラゲなどに多く含まれています。

■マグネシウム
赤ワインが比較的多いですね。マグネシウムは、カルシウムとともに骨の構成成分や約300種類の酵素反応に関与して体のエネルギー産生、体温の調節、神経伝達、筋肉収縮、ホルモンの分泌などに作用しています。マグネシウムも骨に貯蔵され足りなくなると骨から血中にでます。

マグネシウムは、アルコールやストレスがたまったとき、カフェイン飲料を飲んだときにたくさん消費されます。

ワインのマグネシウムと合わせて、おつまみにもマグネシウムの多い蒸し大豆、絹ごし豆腐、ひじき、金目鯛、するめ、ほうれんそう、アーモンド、ゴマなどをいただきましょう。

■鉄
血液成分である赤血球の合成に利用されます。ヘモグロビンと結合しており、肺から取り込んだ酸素を全身の細胞へ供給しています。

植物性食品の鉄は動物性食品の鉄に比べて吸収率が低いので、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高まります。ビタミンCは、じゃがいも、赤ピーマン、ブロッコリーなどに多く含まれています。ビタミンCは、アルコールを代謝するときに発生する活性酸素を消去する抗酸化作用もありますので、積極的に摂りたいですね。  

余談ですが、よく言われる「赤ワインに魚介類は合わない」、こちらは赤ワインに含まれる鉄が魚介の脂質の酸化を促進させ、生臭さを生み出す成分を生じさせるため、生臭みを感じやすいということがわかっています。

そのため、鉄分の少ない白ワインであれば魚介と組み合わせても生臭みがでないとのことです。表をみると、やはり白ワインは赤やロゼよりも含有量が少ないです。
ワイングラス

ワインの栄養成分②アミノ酸

上の表には載せていませんが、ワインにはプロリン、グルタミン酸、アルギニン、グリシンなどのアミノ酸もわずかながら含まれています。

■プロリン
コラーゲン(皮膚のコラーゲンは、柔軟性を保持)の修復作用があります。

■グルタミン酸
免疫細胞のエネルギー源であるグルタミンの材料になっています。

■アルギニン、グリシン、グルタミン酸
GABA(γーアミノ酪酸 血圧の低下や精神の安定作用)の原料になっています。

ワインの栄養成分③ ビタミンB群

ナイアシン、ビタミンB6 、パントテン酸、赤ワインのみに含まれるピオチンは、ビタミンB群に属しています。ビタミンB群は、糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝、アルコールの代謝に関わっています。  

また最新の時間栄養学によると、ビタミンB群は昼の体への吸収率が朝、夕方、深夜に比べて30~50%程度高いことが分かっています。アルコールを代謝する肝臓は、午前中に働きがピークを迎えるというデータもあります。総合すると飲酒のベストタイムは、“何も予定のないお休みの日中”と言えるでしょうか。

ワインの栄養成分④ 有機酸

まだまだ、ワインには健康効果を期待できる成分があります。

酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸は、ミネラルの吸収アップ、食欲増進効果があります。

有機酸は、抗菌性にも関わっています。これは、酒石酸やリンゴ酸によるものです。pHが低いワイン(酸性度が高いワイン)ほど抗菌性が強いということが分かっています。

ご存知の方もいるかもしれませんが、白ワインのほうが赤ワインよりもpHが低いため、食中毒菌にたいする抗菌作用がより高いという研究データもあります。

ワインの栄養成分⑤ 糖類、ポリフェノール類

最後に、ブトウ糖、果糖などの糖類や、ポリフェノール類が含まれていることも忘れてはいけません。

ブドウ糖、果糖は、エネルギー源になりますし、含硫黄化合物、テルペノイド、ケルセチン、カテキン、タンニン、レスベラトロール、アントシアニンなどのポリフェノール類は、老化の原因をつくる活性酸素を消去する抗酸化作用があります。

たくさん書き連ねましたが、このように、ワインには体の働きを助ける栄養成分が多種類含まれています。ご紹介した成分以外にも沢山あります。

とはいえ、健康効果を期待して沢山飲んでもよいということにはなりませんので、ワインやおつまみの味が楽しめる程度の酔いにとどめる飲酒量を心がけ、健やかな飲酒ライフをおくりましょう。

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※記事の情報は2020年12月17日時点のものです。
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