【ウイスキーグラスの選び方】至福の一杯に出会うグラス探しの旅
ウイスキーの香りや味わい、美しさを引き出す「ウイスキーグラス」。どんなグラスで飲むかで、一杯から得られる幸福感は大きく変わります。一流バーテンダーも御用達というグラス専門店「創吉」オーナーの関場吉五郎さんに、ウイスキーグラス選びのヒントを教えていただきました。
この方にお聞きしました
関場 吉五郎(せきば きちごろう) さん
グラスファクトリー「創吉」店主。学生時代よりグラスの美しさに魅せられ、日本では数少ないグラスショップを浅草で開業。店内には自ら海外で買い付けてきたグラスや希少なアンティークグラス、オリジナル商品など約1000点のグラスやバーツールが並ぶ。そのセレクトセンスの高さと品揃えの豊富さから、国内外のバーテンダーやレストラン関係者から厚い信頼を得ている。
ウイスキーグラス選びは、装い選び
関場 まずウイスキーは嗜好品ですので、「個人の趣味」が大切にされるべきお酒です。だからグラスにしても、自分が本当に好きと思えるものを選んでいただくことが一番。それが家飲みの楽しさでもありますから。
例えば、バーではウイスキーが色付きグラスで出てくることはほぼありません。だけど、家飲みでは「僕は江戸切子が好きだから、これで飲む」というのはありだと思います。
一方で、グラスは洋服と一緒で、その日の気分を変えてくれる大切なツールでもあります。正装すれば背筋がピンと伸びるような気持ちがするし、Tシャツを着ればリラックスしますよね。ウイスキーは雰囲気を楽しむお酒でもありますから、その時どんなグラスで飲むかはこだわりたいところです。
―グラスは実際に美味しさにも影響するものなんでしょうか?
関場 もちろん。同じ銘柄のウイスキーでも、どんなグラスで飲むかで受ける味わいの印象は大きく変わります。そこもグラス選びの面白いところです。
ただ、どれを「美味しい」「美味しくない」と感じるかは飲み手の嗜好によりますので、「このグラスで飲むと美味しいですよ」とは一概に言えません。アルコールがガツンの来るものを美味しいと感じる方もいれば、まろやかな飲み口のものを好まれる方もいるでしょう。ウイスキーの美味しさは、ウイスキー、グラス、飲み手が三位一体となって初めて生まれるものなんです。
―では、自分にとって「美味しい!」と感じるウイスキーグラスに出会うには?
関場 やはり一番は色んなグラスを試していただくことですね。値段の高いウイスキーグラスを買えば間違いないかというと、全くそんなこともありません。自分が気になったものを1つずつ試していくと、「このウイスキーをこのグラスで飲んだ時が一番美味しいと感じるな」と、ご自身にとっても発見になると思います。
この後、飲み方別にグラスの一例を紹介しますので、お気に入りのウイスキーグラスを見つける手がかりになれば嬉しいです。
【ウイスキーグラスの選び方①】ストレートで飲むなら?
テイスティンググラスにもワイン用、ウイスキー用など様々あり、どのグラスを使うかで飲んだ時の香りやごくんと飲み込んだ後の余韻が変わります。飲み比べしてみると面白いですよ。
本来はワイン用のテイスティンググラスですが、これにウイスキーを注ぐと、香りをかいだ時にアルコールが先に来て、味わいも強めに感じられます。ガツンとした飲み応えを求める方におすすめです。
■SKテイスティング2グラス(写真中央)
ウイスキー用のテイスティンググラス。縁の部分が少し外側に反っているため、アルコールが前面に来ずウイスキー全体の香りや味わいがまとまり良く感じられます。開栓したてのウイスキーより、ボトルに少し残ったウイスキーが好き、という方に向いています。
■グレンケアンブレンダーズモルトグラス(写真右)
これもウイスキー用テイスティンググラスで、スコットランドにあるグレンケアン社というメーカーが作っているものです。幅広いタイプのウイスキーに使えると、バーテンダーからも指名買いされることが多いグラスです。
【ウイスキーグラスの選び方②】トワイスアップで飲むなら?
先程ご紹介したテイスティンググラスは、トワイスアップで飲むときにも使えます。水を注ぐときは、目盛り付きの小さなガラスピッチャーがあると便利です。1ショット(30cc)のウイスキーに少しずつ加水していきながら、自分が一番美味しいと思える割合を探れます。
【ウイスキーグラスの選び方③】オン・ザ・ロックスで飲むなら?
もともとアメリカで親しまれていた飲み方なので、ロックグラスもアメリカナイズされた大きくて、厚くて、どっしりしたものが主流ですが、手になじまないものを無理して使う必要はありません。
例えば下の写真のロックグラスは小ぶりで、女性の手にもしっくりおさまります。片手で無理なく持てるので、本を読みながら、映画を観ながらウイスキーと過ごすことができ、家飲み時間にぴったりだと思います。
【ウイスキーグラスの選び方④】ハイボールで飲むなら?
グラスが薄いほうが見た目に涼し気ですし、手のひらでも冷たさを感じることができます。また実際に飲んだときも、厚めのグラスよりキレ良く感じられるんです。
【ウイスキーグラスの選び方⑤】水割りで飲むなら?
水割りは、タンブラーグラスに氷を入れてウイスキーを注ぎ水で割る作り方が一般的ですが、僕が提案したいのは、氷とウイスキーそして水をミキシンググラスに入れ、バースプーンで1分間くらいステアすることでウイスキーと水をなじませる方法(グラスでステアをしないのは、口径が小さく混ぜにくいため)。
それを一口ビールサイズの小さな薄吹きグラスに注いでくいっと飲むと、「水割りってこんなに美味しかった?」と新鮮な驚きが得られるはずです。
ウイスキーグラスの正しいお手入れ方法は?
関場 グラスを洗うのは、一般的な台所用洗剤とスポンジでOKです。ただし、グラスに傷がつかないように、スポンジは不織布面に研磨剤が付いていない柔らかなものを使用してください。
グラスをすすぐときは少し手に熱く感じるくらいのお湯を使い、すすいだ後すぐにふきんで拭きあげることがグラスに水滴跡を残さないコツです。ふきんの毛羽付きが気になる場合は、グラス専用のマイクロファイバークロスを使うと良いでしょう。
脚が細いデザインのテイスティンググラスは、ボウルと台座をもってひねるようにして拭くと脚が折れてしまいます。片手でボウルのお尻を支えながら、もう片方の手で優しく拭くようにしてください。
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ウイスキーグラス選びは、自分にとって「本当の美味しい」を探る旅でもある、と話してくれた関場さん。
関場さんのお店「創吉」ではグラス販売のほか、大切なグラスが欠けた場合の修理にも対応しているそうです。ぜひ、長く付き合えるウイスキーグラスを探してみてください。
■お店情報
「創吉」
東京都台東区雷門2丁目1-14
TEL:03-3843-1119
営業時間:平日 11:00〜19:00 / 土日祝日 10:00〜18:00
年末年始を除き無休
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※記事の情報は2021年4月13日時点のものです。
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