【バイヤーズレポート出張編】挑戦する酒蔵、岡山・宮下酒造へ行ってきた。(前編)

名古屋の酒問屋イズミックの青田が、いま注目のお酒の情報をバイヤー目線でお届けします! 今回は岡山出張編、日本酒「極聖(きわみひじり)」の醸造元、宮下酒造が密かにウイスキーを造っているという噂を聞きつけ、営業担当の林さんにお話を伺ってきました。

ライター:青田俊一青田俊一
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挑戦する蔵元「宮下酒造」

注目のお酒の情報を家飲みでレビューしてきたバイヤーズレポートですが、今回は新シリーズとして出張編をお送りします。取材と称していつもの家飲みから飛び出し、各地の酒造りの現場を巡るバカンス、もとい出張をレポートしたいと思います。仕事ですよ、仕事。  今回は以前バイヤーズレポートにてご紹介しました「クラフトジン岡山」を造る蔵元、岡山市にある宮下酒造を訪問させていただきました。
宮下酒造
宮下酒造は1915年(大正4年)創業の老舗の日本酒の蔵元。より良い水を求めて1967年(昭和42年)に現在の場所に移転してきたそうです。代表銘柄は「極聖(きわみひじり)」ですが、以前ご紹介したクラフトジンを筆頭に、クラフトビール、焼酎、リキュール、そして今回の取材の目玉であるウイスキーと幅広い種類のお酒を製造しているのが特徴の蔵元です。とはいえ、本業の日本酒がおざなりになっているかというと、決してそんなことはなく、全国新酒鑑評会にて7年連続で金賞受賞のその実力は折り紙つきです。

というわけで早速、蔵を見学させていただきます。

全国新酒鑑評会7年連続金賞受賞「極聖」

岡﨑杜氏にお話を伺いました
まずは日本酒蔵から見学です。全ての酒造りを統率している岡﨑杜氏にお話を伺いました。


—— 7年連続で金賞を受賞していると伺いましたが、何か秘訣はありますか。

岡﨑 毎年同じようにやっているようで、常にマイナーチェンジは心がけています。大きく造り方を変えることはないのですが、新しい手法や機材を取り入れたり、新しい原料を試したり、少しずつブラッシュアップしてます。現状に満足することなく、常に新しいことに挑戦している結果でしょうか。


—— 原料についてこだわっているところは。

岡﨑
 岡山県産の雄町を主に使用しています。鑑評会への出品酒は兵庫の山田錦を使いますが、それ以外のものについては地元、岡山のものを使うようにしていますね。


—— 目指す酒造りは。

岡﨑
 これは日本酒もビールも同様なんですが、香りも味も主張しすぎず、きれいなお酒ですね、食事に寄り添うような。


たしかに香りがほんのり華やかで、口当たりの良いお酒のイメージがあります。では、この味の秘密を探るべく、蔵見学といきましょう。
この日はちょうど大吟醸の仕込を行っていました。
この日はちょうど大吟醸の仕込を行っていました。
蔵人が若くてとても活気がある
驚かされたのが、わりと近代的な設備が導入されていることと、蔵人が若くてとても活気があること。林さんによると、宮下酒造では20年以上前から積極的に若手を採用し、世代交代を進めてきているとのこと。攻めの姿勢がうかがえます。

この攻めの姿勢が宮下酒造の酒造りの一番の特徴かもしれません。
雄町米を15%まで削った純米大吟醸、お値段なんと100,000円
ちなみに攻め過ぎた結果、雄町米を15%まで削った純米大吟醸、お値段なんと100,000円なんて商品も販売しています。もう何本か売れたというので驚きです。他にも純米大吟醸のにごり酒など、他の蔵元さんでは手を出さないところに攻めちゃってる姿勢が素敵です。

個性あふれるクラフトビール「独歩ビール」

個性あふれるクラフトビール「独歩ビール」
次はクラフトビール「独歩」です。
独歩ビールは1995年、中国地方初のクラフトブルワリーとして醸造を開始、ドイツ人ブラウマイスターのウォルフガング・ライアール氏の技術指導のもと、 ドイツ製の醸造プラントを導入して、伝統的なドイツビールを徹底研究してできたビールです。
 
ドイツ製の醸造プラントを導入して、伝統的なドイツビールを徹底研究してできたビール
独歩ビールでまず驚かされるのは、その種類の豊富さ。マスカットやピーチなど岡山ならではの副原料を使ったフルーツビールや、ウナギに合う黒ビールや牡蠣に合う白ビールのような個性的なものまでバラエティに富んだラインナップ。新しいことにどんどん挑戦するといった姿勢で商品開発をした結果、気がついたらこんなに種類が増えてしまったみたいです。これもまた独歩ビールの魅力のひとつでしょう。


それでは工場へ。
クラフトビール担当の伊藤さん
ご案内してくれるのはクラフトビール担当の伊藤さん。伊藤さんはクラフトビールの担当ですが、日本酒造りのほうにも携わっているマルチなお方。他のブルワリーではあまりお見かけしないタイプの醸造家さんです。これもまた独歩ビールの個性かもしれません。
“ビール釜のベンツ”と呼ばれる「シュルツ社」の釜
そして何よりの驚きはこの釜。“ビール釜のベンツ”と呼ばれる「シュルツ社」の釜、たぶんお値段お高めです。林さんに聞くと「うちは設備にはめちゃめちゃ金かけとるけえ。」とさらっとお話してくれました。さすがです。
ここでもやはり挑戦していくという姿勢にただただ感服です。


と、ひととおり工場を見せていただいたところで「せっかくじゃけえ飲んでいきられー」と林さんがおっしゃるので、お言葉に甘え、昨年できたばかりの工場併設の施設「独歩館」の中にあるレストラン「酒星之燿」にて試飲させていただくことに。時間は11時、昼の早いうちからビールをいただけるなんで幸せです。あ、あくまで試飲です、仕事ですよ。

というわけで飲み比べセットをいただきます。
運ばれてきたのは、ヴァイツェンとデュンケル、ピルスナーの3種
運ばれてきたのは、ヴァイツェンとデュンケル、ピルスナーの3種。これでお値段1,200円と、かなりお得な価格設定。

まずはヴァイツェンからいきます。バナナのようなフルーティーな香りが特徴的で、味わいもほんのり甘さの残る、すっきりとした飲みやすいビールです。1杯目にちょうどいいです。
次はピルスナーにいきます。こちらは正統派のピルスナー、苦味とモルトの旨みのバランスが非常によく、飽きが来ないので何杯でも飲めそうです。
最後はデュンケル。色的にずっしり系かと思ったのですが、想像していたよりかはライトな口当たり、それでもモルトの香ばしさを感じるほどよい厚み。苦味もマイルドなので、じっくりと飲みたい1杯です。

3種ともに伝統的なドイツビールのスタイルを忠実に守りつつ、独歩らしいエッセンスをプラスした、そんな味わいに仕上がっていると思います。美味しくいただきました、ごちそうさまです。

と、美味しいビールをいただいたところで、いよいよ林さんにウイスキー製造についてお聞きします。が、そのレポートについては大人の都合でまた次回。というわけで次回、いよいよウイスキー造りに迫ります。お楽しみに。



※記事の情報は2018年2月5日時点の情報です。
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