フランスでソムリエが「チーズには日本酒」と言い出した! Kura Master2018表彰イベントより
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
フランスのトップソムリエが評価したSAKE
笑顔がこぼれるTOP12の蔵元たち
【純米部門】
「幼馴染の友人と2人で酒をつくっています。酒づくりの技術はまだまだ未熟ですが、皆さんに喜んでいただけるようおいしいお酒を一生懸命つくります」『ちえびじん 純米酒』(中野酒造:大分県)
「広島は杜氏たちが研究を重ねて、軟水での吟醸酒づくりの技術を確立しました。その系譜を受け継ぐことを誇りに思っています。2年連続でTOP12に選出されたことは本当にうれしく、こんなにフランスとご縁があるとは思ってもみませんでした」(『富久長 白麹純米酒 海風土』今田酒造本店:広島県)
「(一度栽培の途絶えた米を)復刻栽培した米で精米歩合は77%です。食事中に飲んでおいしい酒を常に目指してきました」(『七本鎗 純米 渡船』冨田酒造:滋賀県)
「社長自らが酒を仕込んでいる家族経営の小さな酒蔵です。熟成させ酸のある味わいが評価されたことを嬉しく思います」(『杉錦 山廃純米 天保十三年』(杉井酒造:静岡県)
【純米吟醸・純米大吟醸部門】
「365日醸造する蔵です。私が杜氏になって8年で技術はまだまだ学ぶべきことが多いと思っています。飲んでいただいた方に感動を与える酒を精一杯つくってまいります」(『羽根屋 純米吟醸 富の香』富美菊酒造:富山県)
「この酒はキャプテンハーロックで有名な松本零士先生にラベルを描いていただきました。今も木製の槽(ふね)で搾っており、独特の香りがあります」(『純米大吟醸 白鷺の城 戦国のアルカディア〜黒田官兵衛〜』(田中酒造場:兵庫県)
「伊達藩の御用酒屋でサムライのための酒をつくってまいりました。ふくよかな米のうまみを味わえる自信作です」(『勝山 純米吟醸 献』(仙台伊澤家勝山酒造:宮城県)
「夫婦二人で酒づくりをしています。3人子供がいますが、いつも4人目の子どものつもりで酒を仕込んでいます」(『青雲 純米大吟醸』後藤酒造場:三重県)
「鮨の発祥の地和歌山で赤酢のメーカーでもあり、鮨に合う酒、酢の物に合う酒を目指しています」(『山田錦 純米大吟醸 雑賀』(九重雜賀:和歌山県)
【デザートとしてのにごり酒部門】
「熊本県菊池の人・米・水でつくる小さい酒蔵です。今回の受賞は大変光栄です。ありがとうございます」(『美少年 にごり酒』美少年:熊本県)
「お菓子の本場であるフランスで(デザートとしてのにごり酒と)認められたことを本当にうれしく思います」(『八鹿 にごり酒』八鹿酒造:大分県)
プレジデント賞は純米部門(精米歩合60%超)の「ちえびじん純米酒」
そして最後にグザビエ氏が、最高賞であるプレジデント賞を『ちえびじん純米酒』と発表すると会場がどよめきました。純米大吟醸・純米吟醸部門ではなく、精米歩合の低い純米部門の酒がトップに評価されるのは異例のことです。ワインに精通したソムリエたちには、繊細でバランスがよいだけでは物足りないのかもしれません。あるいは複雑でボディのしっかりした味わいを重視する傾向があるということでしょうか。この商品はグザビエ氏がチーフソムリエを務める名門ホテル「クリヨン」のワインリストに加わります。
トップソムリエが「チーズに日本酒」を推奨
一方、お客さまに食事を楽しませることが仕事であるソムリエは、常に料理との組み合わせを念頭に酒を見ると言われます。今回のKura Masterの審査はそうした傾向が反映されたと考えるべきなのかもしれません。
もともと日本は酒が主で食が従に位置付けられていました。酒の肴といわれるものは、塩辛いものが多く、ほんの少しつまむだけでたくさん酒を飲めるようにつくられています。食事中に飲む酒、つまりご飯を食べながら飲むように変わったのは、まだ30年足らずです。料理との相性の幅が広い日本酒は、万能でありながら、ピンポイントで合う何かが求められているのかもしれませんし、あえて万能性を捨てることが必要になってくるのかもしれません。このあたりは飲み手の嗜好、時代の気分、つくり手の意向が相互に探り合って着地点を見つけていくはずです。
ひとつ確かなことは何事も変化は周辺から起きるということで、海外市場にはその兆しがある可能性が高いということです。今回のKura Masterの表彰イベントでは、冒頭でフランス人の聴衆向けに20分もの時間を割いて、「日本酒とチーズのペアリング」の提案がおこなわれました。審査員長でトップソムリエの中でもリーダー的な存在であるグザビエ氏がこのテーマで話すということは、日本酒の権威が「漬物には赤ワインが合う」とレクチャーするようなものです。
※記事の情報は2018年7月15日時点のものです。
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