牡蠣に合うビールはこれだ!
生でよし、煮てよし、揚げてよし。肝臓によいといわれるタウリンも豊富。冬の最強おつまみ食材、牡蠣とビールのマリアージュを探ります!
一つ目の食べ方は、生だ。牡蠣とビールといえば、生牡蠣とギネスを思い浮かべる人が多いかもしれない。ギネスはドライスタウトというスタイルに分類される、その黒さから想像される焦げ香ばしさと、鋭い苦味とほのかな酸味があるビールだ。しかしあくまでも筆者の経験と感覚で言えば、生牡蠣とドライスタウトを合わせても、特に何も起きない。邪魔をするわけではないが、驚くような美味しい変化も起きない。つまり私たちが実現させたいマリアージュが起きない。
ドライスタウトよりも生牡蠣を美味しくする2つのビアスタイル
もう一つのビールは、フランダースレッドエールだ。こちらもベルギー発祥で、赤小麦が使われることにより赤く、オーク樽で18カ月熟成される工程を踏まえて、フルーティーな香りとともに、上品な甘酸っぱさが印象的な出来上がりになる。これに生牡蠣を合わせると、 グーズランビックと同じくフルーティーさと酸味から絞ったレモンのような効果が得られる。さらに、甘味と熟成感も加わって、まるでバルサミコ酢をかけたようなさっぱりとしていつつも複雑な味わいを楽しめるようになる。
生牡蠣を食べるときの注意点は、殻の中の海水をこぼしすぎないこと。これが天然の塩味とうま味を提供してくれる。殻からむいてある状態のものを食べる場合は、もちろん塩を振ってもいいだろう。いずれのビールも酸味があるから、過度な塩カドは、焼き鳥塩を食べるときのレモンのように、丸めてくれる。
ある小麦のビールが燻製に合う理由
その代わりに合わせてもらいたいのが、ヴァイツェンだ。ヴァイツェンは大麦に対して小麦を同じかそれ以上に使い、その名もヴァイツェン酵母という特徴のある酵母を使ってつくられる。香りはバナナやクローヴ(チョウジ)のようで、味は甘味の他ほのかに酸味があり、苦味は非常に弱いか全く感じない。ろ過をしないので酵母がビールに残っているために激しく濁っていることがほとんどで、このことがさらに強いボディーをもたらす。
ヴァイツェンに燻製を合わせるといい理由は、フェノールだ。クローヴのような香りの素はフェノールという化合物であり、これは含まれ方によって消毒液の匂いや燻製の香りになったりする。そう、ヴァイツェンにも多かれ少なかれ燻製の香りの素が含まれていて、燻製料理と合わせると、同じ特徴が合わさって高まり合うのだ。だから多くのヴァイツェンと燻製料理を合わせると、燻製の香りが強まり、さらに甘味が加わって食べ応えが増す。日本ではどうも、燻製と言えばラウホだけでなく濃色のビールが提案されることが多すぎて、色が濃いビールを合わせるイメージが強いかもしれないが、ぜひやってみてほしい。見た目のイメージに反する美味しい変化が得られるはずだ。
さらに、前述のフランダースレッドエールも面白い。このビールの木を想像させる熟成感と相まって燻製香が強まるだけでなく、酸味によって全体が引き締まる。ちょうど、ヴァイツェンの甘味によって味わいが厚く広がっていくのとは逆の美味しさだ。そして牡蠣の燻製は、自宅で中華鍋などを駆使してこしらえてももちろんいいが、写真のように缶詰でも売っていて、気軽に楽しめる。
みんな大好きな牡蠣フライにこそあのビールを
さらに、再び、フランダースレッドエールを合わせるのもいい。甘酸っぱさと熟成感が相まって、フルーティーさが強いウスターソースのような味わいが口の中に広がる。フランダースレッドエールは、フルーティーな香りと甘酸っぱさでもって、かなり幅広い料理と合わせることができるのだ。そしてドライスタウトと合わせるときもそうだが、味付けは塩だけにしておこう。ウスターソースやタルタルソースをかけてしまうと、ビールと合わさって味わいが複雑になりすぎたり、ビールの味わいの良さを隠してしまったりするだろう。
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