有機純米酒「禱と稔」(いのりとみのり)
金沢の老舗・福光屋が発売した有機認証酒に迫ります。
酒米を「有機」で契約栽培
長年の契約栽培で築いた信頼関係をもとに、福光屋が有機栽培での米づくりを持ち掛けたのは10年以上前だそう。嫌がる農家を説き伏せ何とか実施にこぎつけたものの、最初の何年かは思うように育たず、安定するまでに5年近い時間が必要だったと言います。さらにできた有機栽培米で酒を仕込んでみると、一般米と違った変化を見せ、コツをつかむのに時間がかかりました。農家からは「苦労してつくった有機のコメの酒はいつになったら飲めるの?」と問われて、答えに窮する数年間だったと言います。
そして、ようやく納得できる味わいになったのが、今回発売された有機純米酒「禱と稔」(いのりとみのり)です。「禱と稔」は八百万神(やおよろずのかみ)に禱りを捧げることで稔を手にするという、日本の伝統的な文化のエッセンスを表すワード。名付け親は松岡正剛氏(編集工学研究所所長)。
米だけでなく蔵も有機認証
さらにJAS有機認証は法的に諸外国と相互に認証できるようになっており、日本で認証されたものはそのまま海外でも認証されますが、清酒の場合は輸出先でその国の有機認証をひとつひとつ取らなければなりません。そのため「禱と稔」はアメリカやEUでも有機認証を受けました。ちなみに諸外国から入ってくる有機認証ワインはそのまま日本でも有機表示されています。清酒メーカーからは不平等だとして改善を求める声がでています。
酒類に限らず日本は有機認証制度がまだ十分整備されていません。欧米では業種横断型で有機認証制度が整えられ、農作物、農産加工品、化粧品などが同じ制度の下で認証されます。日本では縦割りの行政がそれぞれに認証する形になっており、なかなか統合されません。
オーガニックな食材とともに
「おいしい」を超えて
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
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