フィロキセラ禍以前の希少なブドウでつくられた赤ワインを飲んでみた
かつてヨーロッパのブドウ畑に壊滅的なダメージを与えたフィロキセラ禍。そのフィロキセラの影響を受けなかった樹齢100年を超える古木がいまなお現役なブドウ畑がスペインに存在します。希少な古木からつくられるワインの味わいとは。
ヨーロッパのワイン産地を壊滅的な状態に陥れたフィロキセラ禍
フィロキセラとは和名で“ブドウネアブラムシ”と呼ばれる昆虫です。その名のとおりブドウの樹の根に生成する体長1~2mmほどの小さな昆虫で、根や葉に寄生した幼虫が樹液を吸って成長しブドウを枯死させてしまいます。元来はアメリカの東海岸に生息していた昆虫でしたが、大航海時代を経てヨーロッパとアメリカとの交易が盛んになった1800年代中頃に、アメリカからフランスに持ち込まれたブドウの樹に付着していたものからヨーロッパ全土に広がってしまったと考えられています。
最初にフィロキセラの被害が確認されたのが1863年。しかし当時はブドウの樹が枯死する原因が分からず、それから約10年がたった1873年頃、このフィロキセラが原因だということが分かりました。しかし、原因は分かったもののその対策は難航を極めました。というのはフィロキセラは樹の根に生息するため薬剤での駆除ができなかったためです。
このフィロキセラ禍、そもそもブドウの樹をアメリカから持ち込んだのが原因となったわけですが、なぜアメリカではこのフィロキセラの害がなかったのでしょうか。それはヨーロッパと北米ではブドウの系統が異なり、アメリカ系の品種はフィロキセラに対する耐性があったためでした。
それならいっそのこと北米系のブドウに切り替えれば良いのではという話もあったそうですが、北米系の品種ではヨーロッパの品種のような味わいを表現することが難しかったため切り替えるというわけにはいきませんでした。いま世界中で育成されているワイン用ブドウ品種のほとんどがヨーロッパ系品種であることがそのことを証明しているのではないでしょうか。
そこで対策として考えられたのが、フィロキセラに耐性のある北米系のブドウの樹を台木として根元に植え、そこにヨーロッパ系のブドウを“接ぎ木”するという方法でした。これによってフィロキセラの害から免れることになったわけですが、接ぎ木に適さなかった品種が廃れてしまったり、地域によっては栽培する品種が変わったり、そもそも接ぎ木をしたことで自根のブドウと味わいが変わったという説もあったりと、ワイン史においてもっとも大きな変革といっても過言ではない出来事となりました。
接ぎ木による味わいの変化については今となっては分かる術はないわけですが、とはいえやっぱりフィロキセラ禍以前のブドウからつくられたワインにはロマンを感じますよね。そんなわけで今回ご紹介するのは、ボデガス・ビーニャス・デル・セニというスペインのワイナリーの「ビア・セニ」というフィロキセラ禍以前の古木のブドウでつくられた赤ワインです。
今回ご紹介する「ビア・セニ」はそんな古木の残る多数の小さな畑の中から様々な環境のテンプラニーリョの古木を厳選してできたワイン。なんとその平均樹齢は100年と、もうなんだかよく分からないくらいすごいことになっているので、期待に気持ちが高まるばかりです。というわけでお楽しみの試飲タイムです。
フィロキセラ禍以前の古木で作られた赤ワイン「ビア・セニ」を飲んでみた
最近飲んだワインの中では群を抜いてパワフルな味わいですが、それでいて少し繊細さも感じる表現力豊かな味わいです。2017年のヴィンテージですが、もう少し置くとまろやかさが加わってまだまだおいしくなりそうなポテンシャルを感じます。
味わいがかなり力強いので、料理と合わせるなら味付けが濃いめの料理がおすすめです。家飲みなら個人的には塩味のきいた生ハムとクセのあるチーズと合わせてゆったりと楽しみたいワインです。フィロキセラ禍以前の希少な古木にロマンを感じながらお楽しみいただければと思います。
ボデガス・ビーニャス・デル・セニ ビア・セニ【商品概要】
- 生産地:スペイン
- 原料品種:テンプラニーリョ100%
- アルコール度数:15%
- 容量 / 容器:750ml / 瓶
- 輸入元:モトックス
- 参考小売価格:3,150円(税抜)
※記事の情報は2021年6月7日時点のものです。
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