イギリスのビールを飲んでみた!~ソムリエ厳選のおすすめを紹介~
世界のさまざまな国で飲まれているビールですが、国によってそのスタイルは多種多様。そんな各国のビールを、ソムリエの資格をもつ名古屋の酒類卸の青田が紹介する企画。今回は歴史のあるビールの国、【イギリス】にスポットを当てご紹介します。
イギリスのビールをご紹介!
今回は【イギリス】のビールについてご紹介したいと思います。
イギリスのビールの歴史と文化
イギリスのビールの起源は紀元前1世紀頃と言われています。そもそも寒冷なイギリスではブドウの栽培が難しいため、他のヨーロッパ諸国のようにワイン文化が育ちませんでした。その代わりに根付いたのが寒冷なイギリスでも栽培ができる穀物を使ったお酒、すなわちビールでした。
5世紀以降、キリスト教の布教とともに巡礼者のための宿泊や飲食のできる施設が整備されていきます。この飲食施設はエールハウスと呼ばれ、今日のパブの前身と言われているのですが、このエールハウスの登場により大衆にビールが広がっていきます。
この頃のイギリスのビールには「グルート」と呼ばれるハーブやスパイスを添加するのが主流で、ホップが使われるようになったのは15世紀のことです。その後、17世紀にはホップをふんだんに使った防腐効果の強いペールエールが醸造されはじめ、その長期保存のしやすさから19世紀にはペールエールがイギリスビールの主流となりました。
イギリスのビールのスタイル
中でも代表するスタイルと言えば、まずはペールエールでしょう。イギリスのバートンで誕生したスタイルで、“ペール=淡い”色合いから名付けられました。
ペールエールの代表と言えば「バス ペールエール」ですが、2018年に正規輸入の取扱いがなくなったため、今は正規ルートで入手できません。とても好きなビールだったので、残念な限りです。
現在日本で流通しているものだと「フラーズ ロンドンプライド」や「サミエルスミス オーガニックペールエール」などが有名です。
大航海時代、イギリスの植民地だったインドへの長い航海を耐えられるビールとして、防腐作用のあるホップを大量に使ってつくられた、非常に強い香りと苦みが特徴のスタイル。クラフトビールでは最もメジャーと言っても過言ではないくらい、どこのブルワリーでも必ずラインアップされているスタイルです。
もうひとつ、ペールエールにちなんだスタイルとしてはブラウンエールがあります。バートンで誕生したペールエールに対抗し、ニューカッスル・アポン・タインで誕生したのがこのブラウンエールです。ニューカッスルはホップの産地から遠かったため、ホップの使用量を減らしてつくられたことから、ホップの苦みと香りが抑えられた、モルト由来のカラメル香が強調されたスタイルとなっています。
このブラウンエールから派生して生まれたのがポーターです。ポーターの起源は、売れ残ってしまった古いブラウンエールに、新しいブラウンエールとペールエールを混ぜたスリースレッドという安いビールだと言われています。これを注文のたびに混ぜるのは面倒なので、初めから工場で混ぜ合わせた「エンタイア(ひとまとめという意味)」と呼ばれるビールが、のちのちポーターと呼ばれるようになったそうです。
このポーターという名称には、スリースレッドを運んでいたのがポーター(荷運び人)だったからこの名がついたという説や、そのポーター達が好んで飲んだことからこの名がついたという説など、諸説あるそうです。
代表的な銘柄として「フラーズ ポーター」や「サミエルスミス ポーター」が輸入されてはいるものの、あまり店頭で見かけることがないのが残念なところです。日本のクラフトブルワリーではこのスタイルを定番のラインアップに入れているところも多いので、そちらのほうが比較的入手しやすいかと思います。
そんなポーターが海を渡り、アイルランドに上陸してできたのが、黒ビールの代表的なスタイル、スタウトです。
スタウトの発祥は1778年、当時は麦芽に税が課せられていたことから、ギネス社のアーサー・ギネスが税負担を軽減するため麦芽化されていない大麦をローストして、原材料として使用したことが始まりです。
スタウトとは英語で“どっしりとした、丈夫な”といった意味で、文字通り、強い香りと濃厚でコクのある味わいが特徴のスタイルです。代表的なのはやはり「ギネス」になるわけですが、こちらもギネス以外はあまり流通しているのを見たことがありません。ただスタウトは日本ではかなりメジャーなスタイルなので、大手、クラフト問わず入手しやすいです。
飲むべきイギリスビール3選!
厳選イギリスビール①|ドラフトギネス
ギネスは1759年にアイルランドで誕生したブランドで、世界150カ国以上で親しまれています。独自の特許技術による極めてクリーミィな泡となめらかな喉ごしが特長のスタウトです。
その秘密は、缶の中に入っている「フローティング・ウィジェット」と呼ばれる窒素を閉じ込めた小さなボール。このボールには無数の微小な穴が開けられており、開封と同時に解放される圧力の作用で独特の泡立ちが引き起こされることによって、最大の特徴であるきめ細やかでクリーミィな泡が生まれるそうです。
味わいは言わずもがな。黒ビールなので苦いというイメージを持たれがちですが、実際は少しほろ苦いくらいで、アルコール度数も4.5%と低めなので、意外と飲みやすいビールです。
また「ドラフトギネス」は意外にも料理と合わせやすく、その香ばしい味わいと炭火で焼いたお肉との相性は抜群! さすが世界中で愛されるスタウトです。
厳選イギリスビール②|オールドトム
先ほどのギネスとは一転、この「オールドトム」は日本であまりなじみのないビールですが、 イギリスでは最も古く、最も有名なビールの一つと言われています。
「オールドトム」を手掛けるのは、マンチェスター近郊にある170年もの歴史をもつ老舗ブルワリーのロビンソン醸造所。麦芽をネズミから守るために飼われていたネコに由来すると言われているラベルのデザインがチャーミングな1本。
こちらはバーレイワインというスタイル。直訳すると“麦のワイン”となるように、ワインを思わせる薫り高さが特徴の高アルコールの上面発酵のビールです。古くはオールドエール、広義ではストロングエールとも呼ばれています。通常の数倍にも及ぶモルトを使用して麦汁濃度を高め、短いものでも6か月程度熟成させた濃厚なボディの力強い味わいが魅力のスタイルです。
しっかりとしたモルトの甘みにフルーティなチョコレートのような風味、見た目に反して苦みはまろやかで心地よい味わい。アルコール度数は8.5%とそこそこ高いのに重たくないので、飲み飽きすることなく楽しめます。まさにバーレイワインの傑作とも言える逸品で、個人的にも一押しの1本です。
単品でゆったりと楽しむのはもちろん、こちらも意外と料理とも合わせやすいのでおつまみと一緒に楽しむこともできます。イギリスを代表する料理、フィッシュアンドチップスとの相性も抜群です。
またチョコレートっぽい味わいなので、バレンタインのプレゼントとしてお使いいただくのもおすすめ。ぜひ、この驚きの味わいを体験いただければと思います。
厳選イギリスビール③|ブリュードッグ パンクIPA
ご多分に漏れず、イギリスでもクラフトビールブームの真っ最中なわけですが、イギリスのクラフトビールシーンを語るうえで避けては通れないのがスコットランドにある「ブリュードッグ」の存在です。
ブリュードッグは2007年に「青年2人+犬1匹」でスタート。革新的な製法で生みだされたビールと独創的なマーケティングで多くのビールファンの心を魅了する、イギリスを代表するクラフトブルワリーです。
そのブリュードッグを代表するビールがこの「パンクIPA」です。ブリュードッグのパンク精神を象徴する1本で、かつてパンクがポップを吹き飛ばしたように、英国のビール文化を粉砕したいとの希望を込めて、この商品を「パンクIPA」と名付けたそうです。
スタイルはその名のとおりIPA(インディアペールエール)。ただ、このIPAがすごいんです。
味わいもIPAなので確かに苦いのですが、ただただ苦いというわけではなく、どこか爽やかな苦さが柑橘の香りと相まってとても心地の良いものになっています。熱狂的なファンが多いというのも納得できる、ここにしかない味わいです。
こちらはスパイスとの相性が抜群に良いので、カレーや麻婆豆腐などスパイシーな料理に合わせて楽しむのがおすすめです。
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ちなみに私はフィッシュアンドチップスを実際に作って合わせてみましたが、もちろんどのビールとも相性は抜群でした! 家飲みでイギリス気分、ぜひ味わってみてくださいね。
【商品概要】ドラフトギネス
- 生産国:アイルランド
- 原材料:麦芽、ホップ、大麦
- アルコール度数:4.5%
- 容量 / 容器:330ml / 缶
- 参考小売価格:278円(税抜)
- 輸入元:キリンビール
【商品概要】オールドトム
- 生産国:イギリス
- 原材料名:麦芽、ホップ、コーン、小麦、糖類
- アルコール度数:8.5%
- 容量 / 容器:330ml / 瓶
- 参考小売価格:507円(税抜)
- 輸入元:池光エンタープライズ
【商品概要】ブリュードッグ パンクIPA
- 生産国:スコットランド
- 原材料名:麦芽、ホップ
- アルコール度数:5.6%
- 容量 / 容器:330ml / 缶
- 参考小売価格:410円(税抜)
- 輸入元:ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン
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