【ピスコ】ペルーの蒸留酒ピスコってどんなお酒?(2)
ペルーの酒「ピスコ」への思いが募り、現地に出向いてお気に入りの商品を探索した石井豊さん(Bar Super Nova)。その商品を懇意のインポーターに輸入してもらうと、バーテンダーの仕事の合間を縫ってプロ向けのセミナーを繰り返しファンづくりに情熱を注ぐ。背景にはペルーで高まったピスコ愛がある。その思いをお聞きします。
バーテンダーの枠を超えたピスコ熱
石井 2021年の4月からです。自分の店の開店10周年に合わせてペルー旅行を計画していました。ほぼ2年前で、現地でこれをという銘柄の輸入を決めて帰国したらコロナ禍で世の中が一変していて、バーは営業できなくなっていました。黙っていて注文が入る商品ではないので、仲間に買ってもらうにも、売れるようにしなければなりません。セミナーでピスコのカクテルを紹介していくということです。
―バーテンダーというよりメーカーやインポーターの営業担当者みたいですね。
石井 まったく。いままで経験したことのない仕事ですが、おもしろみもあっていい経験をさせてもらっています。
石井 バーテンダーでも初めて飲んだという人が多く、複数のものを飲み比べたことがあるという人は稀です。ピスコの話だけでなく、現地の画像を見てもらい、ペルー料理や文化的背景、現地の人との交流なども交えながら紹介すると、おもしろい、おいしいと言ってもらえます。
―石井さんはもう日本のピスコの第1人者、ピスコなら石井だと言われそうです。
石井 開拓者でいたいと思いますが、第1人者と言われるようになるのは違うと感じています。もし私がピスコの権威になってしまうと、ピスコは石井がやっているからいいやという雰囲気が出てきます。セミナーを受けてただ単純に「このお酒を広めてみたい、これでカクテルをつくって提供してみたい」という声が出てくるようにしたいので、自分が出すぎないようにしようと思っています。
全身でピスコを感じたペルー旅行
石井 やっぱり人だなと思いました。私は周期的に頭でっかちになってしまうところがあって、勉強していくと知識や技術を追いかけがちなんです。常に新しいことをやろう、古いことは1から見直してみようとしてしまう。たぶんピスコでもそんな感じになっていたのでしたが、現地で会う人たちはおおらかで魅力的でした。
首都のリマや観光地では英語を話す人が結構いましたが、地方はでは英語もあまり通じません。それでもバーや蒸留所で出会った人は、私が求めているものを提供しようというホスピタリティが溢れていました。
石井 蒸留所(ワイナリーと兼ねているところもある)巡りのツアーなら参加しやすいです。産地にはピスコ街道が定められているところもあって、観光コンテンツ化する動きがあるようです。
私はアレキパ発の日帰りのツアーに参加しましたが、日本では考えられないほどハードでした。朝7時に出発して戻ってきたのは21時です。蒸留所まではかなり距離があり、最初の訪問先に着いたのは昼過ぎでした。スケジュールはタイトなのに、日本からバーテンダーが来ているからカクテルをつくってもらいますと、見晴らしのいい崖の上に車を停めて休憩するなど、マイペースで進みました。
1軒目の蒸留所ではランチで飲んで食べて、それから3軒回りました。歌ったり踊ったりして歓迎してくれる蒸留所もあって、初対面の参加者たちも馴染んでとても楽しいひと時でした。
石井 はい、深くなりました。
―日本でピスコを広めていくにはやはりピスコサワーの普及でしょうか?
石井 海外ではピスコサワーという飲み方が普及を牽引しましたが、ショートカクテルなので日本では別のカクテルも必要だと考えています。
たとえばピスコトニックです。チルカノはジンジャーエールで割るので、ピスコそのものの持ち味がもうひとつ生きないところがあります。トニックならばベースのピスコもわかりやすく、チャンスがあるのではないかと思っています。
石井 店ではこういう小さなきっかけづくりは重要で、ここから話題が広がることがよくあります。ペルーに駐在していた方や旅行したことのある方は結構反応します。マチュピチュはバックパッカーにも人気の観光地で、ペルーに行ったことのある人は思っているよりも多いです。
――そんな手掛かりを活かしながらピスコを広めていくのですね。本日は長時間ありがとうございました。
(2022年3月2日 於 Bar Super Nova 聞き手:山田聡昭)
※記事の情報は2022年5月26日時点のものです。
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