世界が称賛するライ・ウイスキー「ホイッスルピッグ」を飲んでみた
日本ではまだまだ認知度の低いライ・ウイスキー。そんなライ・ウイスキーの常識を覆し世界的に称賛されるウイスキーブランド「ホイッスルピッグ」が2021年に日本に上陸。ライ・ウイスキーの概念の覆すその味わいとは。
ライ・ウイスキーの新星「ホイッスルピッグ」
最多の受賞歴を誇るということで、さぞかし歴史のある蒸溜所なのかと思いきや、設立は2007年とつい10数年前のこと。メーカーズマーク蒸溜所で14年間マスター・ディスティラーを務めた後、数多のクラフト蒸溜所をコンサルタントとして支援し、伝説のマスター・ディスティラーと呼ばれたデイヴ・ピッカレル氏が率いるチームによってアメリカ、バーモント州に設立された比較的新しい蒸溜所です。
「ホイッスルピッグ」のこだわりとは?
それは原料であるライ麦へのこだわりです。
そもそもライ・ウイスキーは、アメリカとカナダで生産されているウイスキーですが、いずれの国でもライ・ウイスキーを名乗るためには原料として51%以上のライ麦を使用することが義務付けされています。ただ、コスト上の観点から、法定ぎりぎりのライ麦比率51%でつくられることが多いのが現状でした。
そんなライ・ウイスキーの現状に一石を投じたのがこの「ホイッスルピッグ」というわけです。
「ホイッスルピッグ」の原料はほぼ100%がライ麦。ライ麦の比率が高ければ高いほど、ライ麦の豊かな香ばしさと甘みを強く感じられるようになります。ですが、ライ麦のデンプン質は糖化が難しいこと、また作業過程で粘着性が高くなるなど、取り扱いが難しいことから、比率が高くなればなるほど高い技術力が要求されることになります。
そんな高い技術力も要求される中で、「ホイッスルピッグ」はライ麦ならではの力強いフレーバーを信条とし、ライ麦比率100%での製造にこだわり研究を重ねた結果、控えめな甘さと豊かな風味を存分に引き出した、これまでのライ・ウイスキーの概念を覆す複雑な味わいを実現させました。
そしてもうひとつ忘れてはいけないのが樽での熟成です。アメリカでのライ・ウイスキーの定義には「チャーリングした新しいオーク樽にて2年間の樽熟成」という決まりはあるものの、それ以上に長期で熟成されることは珍しく、10年を超えるような熟成年数の長いライ・ウイスキーというのは極めて稀です。対してホイッスルピッグは、熟成年数が日本でのラインアップの中で最も短いものでも10年と、非常に長いのが特徴となっており、丁寧に熟成されたその複雑な味わいもまた高く評価されています。
と、ここまでの説明で飲みたくならないわけがありません。今回は輸入元のご協力のもと、この贅沢なライ・ウイスキーを試飲させていただく機会をいただきましたので、早速試飲してみたいと思います。
ホイッスルピッグ 10年 スモールバッチ・ライ
ウイスキーの味を確かめたいので、シンプルにストレートで試飲します。
飲み口はとてもスムースで、ほんのりスパイスとバニラのフレーバーが鼻を抜けます。伝統の100プルーフ(アルコール度数50%)ですが、アルコールの刺激をあまり感じることなく、まろやかな口当たりです。
ちょっと贅沢に、ハイボールでも試してみましたが、表情が変わってさらにスムースで飲みやすい印象に。個人的にはハイボールのほうが好みでした。
ホイッスルピッグ 12年 オールドワールド・ライ
まずアメリカンオークの新樽で10年以上熟成させた後、個性的な味わいの3種類の樽、ポートワイン樽、フランスのソーテルヌワイン樽、マデイラワイン樽でフィニッシュしています。仕上げのワイン樽一つひとつがもたらすユニークな個性により、オールドワールドの土壌、気候、熟成の伝統が織り込まれた、オールドワールドを感じるアメリカンライ・ウイスキーというなんとも挑戦的な1本です。
こちらもまずはストレートで。
こちらはやっぱりストレートで飲んでもらうのがおすすめです。グラスの中の香りだけでも1時間は楽しめるのではないかというくらい、素晴らしい香りのウイスキーです。これは個人的にとても気に入った1本です。
ホイッスルピッグ 15年 エステートオーク・ライ
樽にはバーモントエステート(蒸留所の敷地)の木材を使用し、独自のチャーリングおよびトーストを施されたカスタムメイドのバーモントエステートオーク樽で追加熟成をするという、ホイッスルピッグのこだわりが詰まった1本です。敷地内で伐採されたオークは、通常のウイスキーに使用される標準的なアメリカンオーク樽よりも年輪が密に詰まっているそうで、熟成の際に多くの年輪に触れることで豊かな風味が加わるのだとか。
こちらももちろんストレートで。
味わいも芳醇でリッチな印象。ライ・ウイスキーならではのスパイス感と樽由来のロースト感、この熟成年数だからこそ成しえた複雑で奥行きのある味わいは、なんとも表現しにくいのですが、とにかく感嘆の一言に尽きます。時間を忘れそうなくらい惹きこまれてしまう、そんな1杯でした。
試飲をするまでは、違うのは熟成の度合いだけで味わいのベクトルは同じ線上にあるものと思っていましたが、これは三者三様、それぞれがまったく異なるコンセプトのウイスキーです。いずれも個性的で、ライ・ウイスキーの可能性を感じさせてくれます。
これは本当に驚かされました。日本ではまだライ・ウイスキーの認知度は低いかもしれませんが、ヨーロッパのシングルモルトなど、今まで当たり前に手に入ったウイスキーですら日に日に手に入りにくくなっている今だからこそ、こういう冒険をしてみるのも面白いような気がします。
お値段はさすがに少し張りますが、秋の夜長の家飲みをよりリッチな時間にしてくれること間違いなしです。ちなみにいずれも専用のケースに入っていますので、贈答にもおすすめ。ライ・ウイスキーの概念の覆した味わい、ぜひお楽しみください。
【商品概要】ホイッスルピッグ 10年 スモールバッチ・ライ
- 原材料:ライ麦
- 生産国:アメリカ
- アルコール度数:50%
- 容量 / 容器:700ml / 瓶
- 参考小売価格:10,000円(税抜)
- 輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
【商品概要】ホイッスルピッグ 12年 オールドワールド・ライ
- 原材料:ライ麦
- 生産国:アメリカ
- アルコール度数:43%
- 容量 / 容器:700ml / 瓶
- 参考小売価格:14,000円(税抜)
- 輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
【商品概要】ホイッスルピッグ 15年 エステートオーク・ライ
- 原材料:ライ麦
- 生産国:アメリカ
- アルコール度数:46%
- 容量 / 容器:700ml / 瓶
- 参考小売価格:27,000円(税抜)
- 輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
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