味を数値化する「味香り戦略研究所」が開発に参画した新定番ハイボールとは?
手軽に飲める缶ハイボールでありながら、鹿児島産の芋から手仕込みで作られた本格焼酎を使用。仄かな甘みと、すっきりとした喉ごしで、どんな食べ物にも合う「和のハイボール」という新たな市場を開拓した「鹿児島ハイボール」。開発に参画したのは、大手飲料メーカーではありません。味に関するコンサルティングを行なう「株式会社味香り戦略研究所」などが独自に開発した商品なのです。その誕生には、「味を数値化する」という最新技術が大きな役割を果たしていました。
株式会社味香り戦略研究所 マーケティングサービス部 池田慶一郎さん
最初に開発した商品は、他社にないこだわりのレトルトカレー
味を数値として測れる「味覚センサー」を使って、メーカーさんの販促や商品開発のお手伝いをすることが主体事業となっています。元々のお話をしますと、親会社(総合商研)がチラシなどを扱っている印刷会社でして。食品に関するチラシに、価格や写真だけでなく味のデータなどを盛り込めたら面白いのでは、という発想から生まれた社内ベンチャー企業なんです。今となっては、お客様の大半はメーカーさんで、「鹿児島ハイボール」のような独自商品の開発プロジェクトにも参画しています。
最初に開発したのが「鹿児島ハイボール」なのですか?
最初の商品は、「小麦粉不使用にもこだわったビーフカレー」と「小麦粉不使用にもこだわった野菜カレー」というレトルトカレーです。その名前のとおり、小麦粉を使っておらず、動物性の脂も極力使わないで作っています。コンサルなどの事業を通して、カレー作りのプロの方々との出会いがあり、そこから独自の商品開発へと繋がりました。
市場に少ないコンセプトの商品として、乙類焼酎のハイボールを開発
はい。例えば、市場のカレーのデータを測定してマッピングすることで、「こういう味のカレーは市場に無いんだな」といったことが明確に分かるんです。それらのデータも考慮しながら、弊社が作るカレーの(味の)ポジショニングを探していきました。大手さんがやっているのと同じことをウチのような小さな会社がやっても勝てるはずがないので。市場にあまり無いコンセプトの商品を作るように心がけています。
「鹿児島ハイボール」はどのような経緯で開発されたのですか?
私は直接開発に携わってはいないので、一部は伝聞になるのですが。世の中には「缶チューハイ」と呼ばれる商品がたくさんあるものの、それは甲類の焼酎やウォッカ、スピリッツを使ったものがほとんど。当時、乙類を使っている商品はほとんど存在していませんでした。ときどき新商品として出てきても、ほとんどがすぐに姿を消していたんですね。そういう現状がある中、「宝山」という芋焼酎で知られる鹿児島の西酒造さんと、以前より味覚センサーを通じたお取引などがあったことも関係しご縁をいただきました。「宝山」のようなプレミアムな芋焼酎をベースにしたRTD(割る手間がいらず、蓋を開けるとすぐに飲めるアルコール飲料のこと)があったら面白いのではと考えたんです。また、弊社が「鹿児島ハイボール」を出すよりも前から、飲食店さんでは、乙類焼酎のソーダ割りを出すところも少しずつ増えてきてはいて。そういう状況からも、面白い商品になるだろうと考えたんです。
雑味が少なくスッキリした味は、データでも証明
「宝山」の2種類(黄金千貫と綾紫)の原酒をブレンドし、少しフレーバーも加えているのですが、フレーバーの種類や炭酸の強さなどもいくつか試した中で、今のバランスになったそうです。炭酸の強度によっても香り方が違うので、試作段階を含めて、そこは苦労したポイントだと聞いています。雑味が少なく、スッキリとした味わいなのも特徴なのですが、それは味覚センサーによるデータも見ていただくと、より分かりやすいと思います。
先ほどもお話ししましたが、大手の会社さんと同じことをしても勝てないですから(笑)。CMなどの大規模な宣伝も一切やっていないのですが、発売から約2年、SNSや口コミの力もあって商品の認知も広がり、多くの方々に飲んで頂いています。もちろん、「宝山」というブランドの力も大きかったと思います。しかも、今まで芋焼酎が苦手だった方から「これは飲みやすい」という感想をいただくことが多いんです。若い人の焼酎離れが進んでいる中、もう一度、焼酎を飲んでもらうきっかけの飲料としても、非常に良い味にできあがっているのではないかなと思っています。手前味噌な話ですが、私も「鹿児島ハイボール」を飲みはじめてから、他の缶チューハイが飲みにくくなりました(笑)。
どんな料理にも合い、後味をより際立たせる絶妙のスッキリ感
ご自宅で飲まれる時には、レモンなどの柑橘類を軽く搾ってから飲まれるのも、少し爽やかさが増して美味しいと思います。私も、先日、文旦を刻んで入れたのですが、美味しかったですよ。
では、どんなおつまみや食事が合うと思いますか?
ウイスキーのハイボールや、いろいろな味がしっかりついているチューハイとは違って、シュワシュワ感として感じられるすっきりした酸味があるので、基本的に合わない食べ物はあまりないと思っています。だから、単独で飲んだり、食前酒として飲むのも良いのですが、食中酒としてもおすすめです。酸味には味を洗い流すリセット効果もあるので、濃い味の料理と一緒に飲むとスッキリとするのですが、酸っぱすぎても、せっかくの料理の旨味が感じにくくなってしまいます。でも、「鹿児島ハイボール」は、口の中をスッキリとさせつつ、料理の旨味は後味として楽しめる絶妙のバランスになっているんですよ。これもデータを見ていただくのが分かりやすいと思います。
そういう展開もいずれできれば良いなとは考えています。RTDは、新しい商品が出ては消えていく世界ですが、「鹿児島ハイボール」はそういう商品にはしたくないんです。爆発的に売れたけどパタッと無くなったりするのではなく、乙類チューハイの国民の定番のようなポジションを目指して、地道に頑張っていきたいと思っています。
※記事の情報は2017年10月27日時点のものです。
▼試飲レポートはこちら
本格芋焼酎で作るハイボール「鹿児島ハイボール」を飲んでみた。
- 1現在のページ