イタリア人がデイリーワインを高級な味に変える方法

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが在住していたヴェネツィアをはじめイタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。イタリア人に教わった安価なワインを美味しくする方法についてご紹介します。

ライター:京藤好男京藤好男
メインビジュアル:イタリア人がデイリーワインを高級な味に変える方法

イタリア人直伝のワインをまろやかにする方法

前に書いた「ローマの最安値ワイン」というコラムで、イタリア人は必ずしも高級ワインばかりを飲んでいるわけではなく、むしろ普段は安価なワインで過ごしていることがわかってもらえたと思う。だが、そんな安いワインを、ただガブガブと飲み干しているわけでも、またない。それに工夫を凝らして、さらに美味しく飲めるようにするのが、「ワイン大国」に生きるイタリア人の洒落たところである。

そこで、先に訪ねたロッサーナさん直伝の、とっておきの方法をお教えしよう。日本で言えば1000円を切るワインが、3000 円~5000 円級のワインに変身する(私の勝手な基準でございます)裏ワザだ。

それは「デキャンティング」である。

簡単に言えば、ボトルから別の容器に一旦ワインを移すのである。そうして、しばらく空気に触れさせることで、ワインの味に丸みが出たり、渋みが和らいだりするのだ。高値がつくワインの特長に、熟成期間が長いことが挙げられる。いわゆるビンテージというやつで、付加価値が増す。安価なワインはそれが浅いのだが、デキャンティングによって熟成を補うことができる。

日本の家庭でも簡単にできる! デキャンティングの優れもの

だが、普通の日本の家庭には、ワイン用のデキャンターなどはないだろう。そこで、オススメなのが「デキャンティング・ポワラー」である。これはワインのボトルに直接取り付けて、それを通過させることによってデキャンティングの効果が現れる、という優れものだ。ただ注ぐだけなので簡単だ。検索してもらえば、たくさんの種類が見つかるだろう。1000 円以下から5000 円超ぐらいのものまで値段も様々、日本製も外国製もあるが、どれでもワインのまろやかさが増すことは変わりがない。私の経験では1000 円程度のポワラーで十分効果がある。特に若い赤ワインに有効だと思う。

ロッサーナさんのすすめで、私が愛用している「ポワラー」はイタリア製のCentellino というメーカーのものである。これは注ぎ口にフラスコのようなものが付いたクラシックなタイプである。ちょっと理科の実験をしている気分にもなる。ガラスなので取り扱いに非常に注意しなければならないが、ワインが一旦このガラス管をめぐって注がれることで、いい感じのまろやかさになるから驚きだ。先日は、赤のテーブルワイン、モンテプルチャーノ・ダブルッツォをこの愛用ポワラーで注ぎ、マグロのカマのグリルと合わせてみたが、トスカーナの人気リゾート地ヴェルシリア(Versilia)で訪れた高級シーフード・レストランを思い出すほどの、至福の気分をもたらしてくれた。
日本の家庭でも簡単にできる! デキャンティングの優れもの
※記事の情報は2017年4月25日時点のものです。
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