20年越しで証明された「白ワインはお通じがよくなる」説!?

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが在住していたヴェネツィアをはじめイタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラムがスタートします。

ライター:京藤好男京藤好男
メインビジュアル:20年越しで証明された「白ワインはお通じがよくなる」説!?

健康と美容には「白」の裏づけ

いまや美容と健康には「白」がイタリアの定番となりつつある。

私の20代前半、ヴェネツィア留学時代にお世話になった下宿の大家さん、マリア・フェッリさんは、白ワインばかり飲んでいた。当時おそらく50代後半だったと思うが、ぽっちゃりして愛嬌のある女性だった。ある日私が、

「赤より白がお好みですか?」
と聞いてみると、
「白はお通じが良くなるのよ」

ケラケラ笑って、私の背中をドンと叩く。咳き込む私を見て、さらに高笑いする彼女の朗らかさに、その時は民間療法的なもの、まあ実家の祖母が自家製の梅酒を飲むようなものか、と笑ってやり過ごしていた。

それから約20年後、2015年4月の科学誌『Plos One』にミラノ大学のアルベルト・ベルテッリ教授の論文が掲載され、「白ワイン含有のフェノール酸の1つ、コーヒー酸が体内の一酸化窒素の産生を調整し、酸化ストレスから体を守る」と発表して話題となった。

参考:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0117530
これ以降、それまで赤ワインのポリフェノール一辺倒だった「健康ブーム」が、白ワインにシフトしたのだった。

以来、私も「白ワインの効能」について目が離せなくなった。例えば、アメリカの4大健康ポータルサイトの1つ『Healthcentral.com』なども、近年の研究に基づいて、白ワインに「心臓疾患に対する予防効果」、「ダイエット効果」、「がん予防効果」が期待できることを報じている。

参考: http://www.healthcentral.com/heart-disease/c/215658/161148/benefits-champagne/

さらに情報に目を配ると、なんと、
「便秘のときは赤より白ワイン」
というものまである。

参考: http://josei-bigaku.jp/sirowainbiyou35773/

フェッリさんの白ワイン信仰が科学的裏づけを得ているようで、再び私は咳き込んだものだ。今や*地中海式ダイエットの母国イタリアでは、健康と美容には「白」なのだ。しかし、家飲み好きのノンベエとしては、ケンコウばかりを気にしても気勢が上がらない。

ヴェネツィア流白ワインとつまみの組み合わせ方

私流に白ワインの優位を挙げるとすれば、「キーンと冷やして飲める」という点である。地中海性気候によって、気温が高いわりにはすっきりと乾燥し、比較的過ごしやすいイタリアの夏において、ヴェネツィアだけは、海に囲まれた独特の環境から、かなり蒸し暑い。日本に似た「夏バテ」の症状も出るのだ。そんな時、氷でキリッと冷やした白ワインを昼間から、細身のグラスでクイっといくと、それだけでエネルギーが満たされる思いなのだ。これは赤ワインにはできない芸当だぜ。
ワインを冷やす
そして、そんな暑い日の白ワインのおつまみに、フェッリさんがよく振舞ってくれたものがイカ料理だった。ヴェネツィアの郷土料理に、イカを使ったものは多い。

  • イカとセロリのヴェネツィア風サラダ
  • イカのフリット、塩とレモンで
  • イカのグリル、こちらもレモンをたっぷり
  • イカのリピエーニ(詰め物)
これらの伝統料理は、文句なしに辛口白ワインとの相性がよい。
そして、これぞおすすめなのが、

・イカの墨煮

そう、イカスミ・スパゲッティで有名な、あの真っ黒な墨でそのままイカの身を煮込んだもの。実はこれにも、白ワインは抜群に合い、おまけにイカのタウリンが、なんとも夏の弱った体に良さそうなのだ。
イカの墨煮
ちなみに、フリット(揚げ物)やリピエーニ(詰め物)で使うイカは主にヤリイカで、イタリア語ではcalamari[カラマーリ]やtotani[トターニ]という。が、墨煮の方はモンゴウイカを使う。こちらはイタリア語でseppia[セッピア]。そう、白黒写真を「セピア色」などと表現するときの、あのセピアである。梅雨から夏へ、蒸し暑い日の午後、冷たい白ワインのグラスを傾けると、私はフェッリさんと過ごしたヴェネツィアの夏を思い出す。あのキラキラした笑顔こそが、白ワインの効能といっていい。

脚注*地中海式ダイエット-地中海沿岸の伝統的な食生活(特にイタリア南部、ギリシャ・クレタ島)に高い健康効果があることを検証した米国ミネソタ大学のアンセル・キーズ博士らの研究を基に、その食事法をダイエットに取り入れたもの。

参考: http://www.sevencountriesstudy.com/about-the-study/investigators/ancel-keys/


※記事の情報は2017年4月25日時点のものです。
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