イタリアの地方料理に学ぶ家飲み(2)~シードルとガレット~
「シードル」「ガレット」と言えばフランスのもの? いえいえ、実はイタリアでも愛されているんです。シードルにぴったりなイタリアのガレットのレシピもご紹介します。
イタリアの初夏の食卓を彩るスパークリング、スィドロ
イタリアのスパークリング・ワインといえば、やはり「プロセッコ(Prosecco)」が一番人気でしょう。ヴェネト産の辛口白のスパークリングです。同じ辛口白でも、高級スパークリングなら「フランチャコルタ(Franciacorta) 」。シャンパンと同じ製法のイタリアを代表するワインです。ほかにも、赤のスパークリングなら「ランブルスコ(Lambrusco) 」、ロゼのスパークリグなら「ブラケット(Brachetto)」、といったところがよく知られた名前だと思います。
しかしもう一つ、日本ではあまり知られていませんが、この時期に人気のスパークリング・ワインがあります。それは「スィドロ(Sidro)」。フランス語で「シードル」という、あのリンゴで作るワインです。温暖な気候に恵まれたイタリアも、アルプスの麓に位置する北の寒い地域ではブドウの栽培がままなりません。そんな冷涼な地域では、古くからリンゴが栽培され、スィドロが好んで飲まれてきました。
フランスのシードルはガレットとの相性が抜群
そしてこの地方のシードルの楽しみ方として、最もポピュラーなのが「ガレット(Galette)」との組み合わせです。ソバ粉を使ったクレープ生地に、チーズやハム、目玉焼きなどをトッピングして、四角に包み込むあれです。私は初めてパリを訪れたとき、ノルマンディー出身のご夫妻が営む小さな食堂で、ガレットとシードルをいただいのをきっかけに、その虜となりました。
今でも五月の声を聞くと、無性にシードルが恋しくなります。ちょうど、私が通うワイン・ショップにもシードルが並ぶ季節となりました。そこで今回、イタリアとフランスのシードルを飲み比べ、またガレットとの組み合わせも比較して、家飲みのヒントにしたいと思います。
東京で本格的なフランス風ガレットとシードルを味わってみました
まずはシードル選び。「辛口」「中甘口」「甘口」とありますが、ガレットとの組み合わせなら、とおすすめの「辛口(Brut)」をたのみます。
続いて、ガレットの登場。今回たのんだのはブルターニュ辺りで最もポピュラーな「コンプレ(complete)」。ハム、チーズ、卵をのせた伝統的なお味です。これをフランス人シェフがカリッと焼き上げてくれました。その味わいは…。
そこにシードルを合わせます。リンゴの風味は感じられるものの、果実の甘みはなく、渋みとコクが強調され、苦味さえ感じます。語弊を恐れずにいえば、辛口ジンジャーエールにも似た印象。それが実に、ガレットの香ばしさとマッチして、粉物の料理をサラッと洗い流すようにしてくれます。絶妙の組み合わせですね。堅苦しくなく、温もりを感じるマリアージュ。目を閉じれば、モン・サン・ミシェルの修道院がたたずむサン・マロ湾の風を感じるようでした。
フランスに対抗! イタリアのガレット”フリコ”とは
さて、イタリアには、先ほどのフランス風のガレットはないのですが、北部に「フリコ(frico)」と呼ばれる伝統料理があります。これは別名「フリウリ風ガレット」とも呼ばれる一品。フリウリとは、トレンティーノ=アルト=アディジェ州の東隣にある、フリウリ=ヴェネツィア=ジュリア州の一地域のこと。そのガレットは、ジャガイモで作ります。そのレシピはとてもシンプル。私もイタリア滞在中にお世話になった大家さんに教えてもらいました。今回自宅で再現してみたので、ご紹介しましょう。
シードルをより美味しく味わうための家飲みメニューを作ってみました
材料
- ジャガイモ 1個
- タマネギ 1個
- ピザ用チーズ 100~150g程度(好みで調節)
まずは、ジャガイモの皮をむき、写真のように薄切りにします。タマネギも同じく薄切りにしておきます。
それらを、オリーブオイルとともにフライパン(またはテフロン加工の鍋)で10分程度炒めます。
ジャガイモが柔らかくなり、ヘラでも簡単に潰せ、やがてペースト状になったならば、一度別の皿に上げて休ませます。
さて粗熱が取れたら、このペーストをもう一度フライパンに戻します。
私は今回、厚めに仕上げるために、一回り小さめのフライパンを使います。こうすると、側面まで焦げ目がしっかりついて、サクサク感が出ます。もし大きめのフライパンに移せば、薄く広げることができるので、クレープ状の仕上がりになります。お好みで調節してみてください。
蓋をして、焼き上げていきます。片面1分程度。
ひっくり返して、両面に焦げ目が付けば、出来上がり。
一方、フランス産シードルは酸味と渋みがしっかりあります。それには生地にそば粉の香ばしさが残る、フランス風のガレットがしっくりくると思います。「同じ産地の料理とワインを組み合わせる」という、イタリア料理の基本がここにも現れていました。初夏のさわやかなひとときに、ぜひお試しください。
※記事の情報は2018年5月15日時点のものです。
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