イタリア人直伝の夏向きレシピ! 暑さを乗り切るおつまみとワイン(2)

強烈な日差しが降り注ぐ空の下でも食を楽しむイタリアの人々。そんな彼らの知恵を取り入れてみませんか?

ライター:京藤好男京藤好男
メインビジュアル:イタリア人直伝の夏向きレシピ! 暑さを乗り切るおつまみとワイン(2)

ヴェネツィアで食べた夏バテ知らずのパスタはこれだ!

イタリアの夏の気候は、日差しが強く乾燥するのが特徴です。そのため、気温が高いわりに、日陰に入れば暑さをしのぎやすいのですが、海に囲まれたヴェネツィアだけは湿度が高く、日本に似た蒸し暑さを感じます。すると、あの「夏バテ」の症状が現れやすくもなるのです。

ところが、意外にも人々の食事の様子は普段と変わらず、日陰を作ったテラスにテーブルを並べて、誰もがにぎやかに飲食を楽しんでいます。そんな彼らとともにした、夏バテ知らずの一皿をご紹介しましょう。


ギリシャ風冷製パスタ(Pasta fredda alla greca)

ヴェネツィアを含むイタリア北部では、パスタはとりわけ「温かい」料理です。しっかり煮込んだソースと絡めたり、スープ仕立てにしたり。つまり、パスタを「冷やして」食べるという発想はしばらくなかったようです。

「従来のイタリアの食材では、冷えたパスタに合うものはなかなか見当たらなかったの。でも、ギリシャの食材なら、冷えたパスタにも合うことがわかったのよ」

そう教えてくれたのは、私の恩師アンジェラ・カラッチョロ先生。一年間の講義も終了し、夏休みに入ってリラックスする先生が、私を真夏のランチに誘ってくれたときのことです。先生手作りのこのパスタをいただくと、ヴェネツィアで夏バテ気味の胃が、瞬く間に回復して感激しました。今日は、そんなレシピを再現してみます。

ヴェネツィアで教わったギリシャ風パスタを作ってみた

まず材料です。今日は1人分。人数が増えれば、この量を倍にしていってくださいね。
※1 今回はファルファッレを使いますが、ペンネ、コンキリエ等、なんでもオーケーです
※2 黒オリーブとオレガノを混ぜ合わせている市販のものを使用。量はお好みで増減してください

材料

  • ショートパスタ※1 100g
  • ミニトマト 5~6個
  • キュウリ 1本
  • バジル 2~3枚
  • フェタチーズ※2 10g程度
  • 塩,コショウ,オリーブオイル それぞれ適量
材料
「ギリシャ風」のパスタと呼ばれるゆえんは、とりわけこの「フェタ」というチーズにあります。羊や山羊の乳から作られる、ちょっと塩味の濃いフレッシュチーズで、ギリシャの特産です。これに黒オリーブとオレガノを混ぜ込めば、ギリシャ風のサラダに使うトッピングの完成です。

写真右下の器に混ぜ合わせたものが写っていますが、実はこの具材を合わせた便利なパック入りのものが、イタリアでは簡単に手に入ります。日本でも、輸入食材店で見かけるようになりました。こんな感じのものです。
フェタチーズは、日本でも、輸入食材店で見かけるようになりました
今回は手間を省いて、これを「ぶっかけ」ちゃいます。それはのちほど。

まずは、トマトとキュウリを食べやすい大きさに切っておきましょう。
トマトとキュウリを食べやすい大きさに切っておきましょう
トマトは4分の1にカット。キュウリはピーラーなどで皮を取ってから切るのがイタリア式(またはギリシャ式)。これらにバジルの葉を手でちぎって合わせ、塩、コショウ、オリーブオイルで軽く味をつけます。
トマトとキュウリをあわせ、下味をつけておきます
さらに、先ほどの「ギリシャ風サラダのトッピング」ともいうべき、フェタのパックを一気にぶっかけます。
フェタのパックを一気にぶっかけます。
すると、これで「ギリシャ風サラダ」のでき上がり。

「「ホリアティキ」という夏向きのサラダがギリシャにあるのだけれど、まずはそれを作って、それにパスタを混ぜ合わせるだけなのよ」

このようにアンジェラ先生に教わったのですが、「ホリアティキ」とはギリシャ語で「田舎風」という意味。ギリシャ風サラダは基本的にこれがベースになっているらしいのです。

ぬるめが美味しい! ヴェネツィア流の冷製パスタ

さて、続いてパスタです。パスタはあらかじめ、軽く塩を入れたお湯で茹でます。サラダにはすでに味がついているので、それほど強い塩味でなくても美味しくいただけます。

パスタが茹で上がったら、お湯を切り、そのままお皿などに上げて冷まします。このとき、すぐにオリーブオイルをふりかけて、パスタがくっつかないように、まんべんなく混ぜておきましょう。
すぐにオリーブオイルをふりかけて、パスタがくっつかないように
実は、私が教わったこのパスタは、このまま5分ほど常温で冷ますだけ。流水にさらしたり、冷蔵庫に入れるなどしません。ですから、日本の「冷やし麺」の感覚からすると、

ぬるい…です。

しかし、イタリア流はこのまま押し通します。

適当に冷めたパスタの上からサラダをかけて、
しっかり混ぜ合わせたら完成です。
しっかり混ぜ合わせたら完成です。

美味しく食べる秘訣は、アレとの組み合わせだ

ただし、重要なのはここから。パスタはたしかに「ぬるい」のですが、代わりに、ワインをキュッと、しっかり冷やしておきます。もちろん、冷やして美味しいのは「辛口の白ワイン」ですね。

ヴェネツィアでは特に、このパスタをいただくときに「ソアーヴェ(Soave)」という地元ヴェネト産の白ワインと合わせていました。典型的な辛口白で、冷やして飲むのにもってこいです。このワインを作るブドウは「ガルガネガ(Garganega)」という品種なのですが、ギリシャ原産と言われています。どことなくギリシャとイタリアの融合ぶりを感じさせ、相性が抜群です。
さあ、いただいてみましょう。
さあ、いただいてみましょう。このように冷たいワインと一緒にいただくことで、むしろパスタの口当たりがやさしく感じ、喉越しも柔らかくなって、ツルンと食べやすい。ああ、この感覚、よみがえってきました。ワインとの組み合わせを念頭に入れて、パスタの仕上がりを計算しているあたり、さすがイタリア人の発想ですね。

蒸し暑いとはいえ、ヴェネツィアも地中海性気候に属する地域。日没以降は、涼しく乾いた風が街を吹き抜けます。日没といっても21時頃まで明るさのある夏の時期は、人々の夕食も22時頃からなんて普通のこと。心地よい空気に包まれて、夜更けまでたっぷりと時間をかけながら、工夫された夏向きの料理とワインをいただきます。これなら、夏バテ知らずでも不思議はありませんね。


※記事の情報は2018年8月21日時点のものです。
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