冷蔵庫に残る食材の活用法をイタリア人の奥さまに教えてもらいました(2)

今回は余ってしまった「アンチョビ」を使って、バーニャカウダソース作りに挑戦します!

ライター:京藤好男京藤好男
メインビジュアル:冷蔵庫に残る食材の活用法をイタリア人の奥さまに教えてもらいました(2)

アンチョビをたくさん使えるあの人気ソースを教えてもらいます

第1回では、黒オリーブとケッパーを活用して「スパゲッティ・アッラ ・プッタネスカ(娼婦風スパゲッティ)」を作ってくれたクラウディアさん。そんな彼女のサルベージ(冷蔵庫の残り物活用)に感心しきりのリサさんが、ふと、こんなつぶやきを。

「うちではよくアンチョビを買うんですけど、これがいつも余ってしまうんですよねえ」

すると、クラウディアさんも大いにうなずいて、

「さっきのケッパーもそうだけど、アンチョビのように味の濃い食材は一度にたくさん使えないのよね。それに、毎日使うわけでもない。そんな食材はイタリアでも余りやすいわ。じゃあ、次はアンチョビをたくさん使えるレシピを教えようかしら」

その声に、リサさんの顔も輝き、

「グラッツィエ・ミッレ!(ありがとうございます!)」

すると、クラウディアさん、食材保存用の容器からオイル漬けのアンチョビを取り出してきました。

「アンチョビがたくさん使えて、作り方はとてもシンプルな料理。それは、バーニャカウダ」

そのメニューを聞くや、リサさんの笑顔がさらに弾け、まるでピッツァ・マルゲリータのような丸々になっています。

「バーニャカウダ、大好き。あの香ばしいソースがやみつきになります。野菜もいっぱい摂れるから、ヘルシーでよく食べてますよ。ただ、いつも既製のソースばかりで、自分でソースを作ったことはなかったなあ」

それを聞いて、クラウディアさんもうれしそう。

「ちょっと時間はかかるけど、一度作ってみれば簡単よ。一回覚えれば、いろんなものに応用できるから、サルベージにはぜったい知っておくべきだわ」

意外にシンプル! バーニャカウダのソースを手作りします

それでは、冷蔵庫のアンチョビを活用できる「バーニャカウダ」を作ってみましょう!

まずは材料3人分です。

材料

  • アンチョビ (濃いめの味が好きな方は量を増やして味を調整します) 100g
  • オリーブオイル 100ml
  • ニンニク 3片
  • バター 50g
材料
「今日は最もシンプルなものを教えるわね。その方がいろいろな物に応用しやすいから。というのも、実はバーニャカウダのレシピも1通りじゃないの。市販のものでよくあるのは、トロッとした感じのソース。それには、生クリームや牛乳が加えてあるのよ。今日はそれを入れないわ」

そう言いながら、クラウディアさん、手際よく材料の仕込みに入ります。

作り方

  • まずはアンチョビのおそうじ。目立つ小骨を取り除き、尻尾のあたりも切り取ります。それから、流水で軽くアンチョビを洗うようにします。ペーパータオルで水気を取ったら、みじん切りに。
  • ニンニクは皮をむき、堅い芯の部分を取り除いた後、スライスします。
  • 小さめの鍋にニンニク、バター、そして半分の量のオリーブオイルを入れて、火にかけます。
  • ニンニクが薄く色づき、木べらで簡単に潰せる柔らかさになったら、みじん切りのアンチョビを投入。
  • 火加減は弱火。そして、ひたすら木べらで混ぜます。とにかく、ニンニクを焦がさない。
  • しばらくすると、アンチョビが溶け出してきます。ニンニクも同じように簡単に潰せるようになっているので、一緒に潰して混ぜます。こうして鍋の中でニンニクとアンチョビのペーストができたら、ソースの完成です。
小さめの鍋にニンニク、バター、そして半分の量のオリーブオイルを入れて、火にかけます。
「これはイタリア北部のピエモンテ州の郷土料理なのよ。アルプス山脈の麓だから、冬はとても寒く、夏も冷涼な気候。だから、冷たいものはあまり食べない傾向にあるのだけど、このソースは、生野菜をしっかり摂れるよう、よく工夫されていると思うわ。ちなみに、じっくり煮込むために、現地ではテラコッタという陶器の鍋を使ったりするけど、今日は普通の鍋で作ってみるわね」

慎重な手つきで火加減を弱火にセットしながら、クラウディアさんがそう教えてくれます。

「バターが溶け出し、油がクツクツと煮立ってきたら、木べらでかき混ぜるようにします。ニンニクが焦げたり、くっついたりしないようにね。特にニンニクが焦げた匂いが付いたら最悪。もう食べられないから、気をつけてね。火加減は変えず、ずっと混ぜる。ここが大変だけど、美味しくなるために辛抱よ」
火加減は変えず、ずっと混ぜる
そう言いながら、以後、しばらく木べらで鍋のお世話を続けています。リサさんも交代でお手伝いしながら、おしゃべりタイム。すると、こんな質問が。

「バーニャカウダって、どういう意味ですか?」

「バーニャ(bagna)は「ぬらす」や「浸す」という意味。カウダ(cauda)はピエモンテの方言で「熱い」。共通語だとカルダ(calda)というのね。つまり、温かいソースってことかな。そのままね」

そう言って、クラウディアさんは笑っていますが、リサさんは真顔で関心しています。言葉の意味を知るのって、楽しいことですね。

そのように30分ほど過ごしていると、ニンニクが薄く色づき、木べらで簡単に潰せる柔らかさになったら、みじん切りのアンチョビを投入。
火加減は弱火。そして、ひたすら木べらで混ぜます。
やはり火加減は弱火。そして、ひたすら木べらで混ぜます。とにかく、ニンニクを焦がさない。それが命。

しばらくすると、アンチョビが溶け出してきます。ニンニクも同じように簡単に潰せるようになっているので、一緒に潰して混ぜます。こうして鍋の中でニンニクとアンチョビのペーストができたら、ソースの完成です。

ソースは、そのペーストだけでなく、オイルも一緒に器に入れましょう。好みの野菜を添えたら、シンプル・バーニャカウダの出来上がりです。
シンプル・バーニャカウダの出来上がり

イタリアの定番!!バーニャカウダに最適の食材とおすすめワインは?

「野菜なら、何でもオーケーよ。温野菜でも大丈夫。北海道でじゃがバターを食べたことがあるけど、あのように、ジャガイモ丸ごとにこのソースをかけてもいいわ。あとは、鶏肉や白身魚、エビ、イカ、ホタテなどの貝類なんかも、このソースで食べたらすごく美味しくなるのよ。それから、パスタのソースにもなるの。フライパンにこのソースを引いて、茹でたてのパスタを絡めたら、あっというまにアリーオ・オーリオ・ペペロンチーノ(日本では主にペペロンチーノと呼ばれるシンプル・パスタ)が完成。とにかく、このソースがあれば前菜からメインまで、様々に応用が効くの。だから、自宅のパーティーには欠かせないわ」

と、やや興奮気味に解説してくれるクラウディアさん。すると、奥から袋を取り出してきて、

「これ、何だかわかる? グリッシーニというの。このバーニャカウダと同じ、ピエモンテ地方発祥の堅いパンなのよ。これも、ぴったり。カリカリのパンを、このソースにつけると少し柔らかくなって、香ばしさが増して、本当に美味しいわ。もちろん、食感が似ているポテトチップスでもオーケーよ。でもこのグリッシーニ、最近では日本の輸入食材店でも簡単に手に入るから、日本のみなさんにぜひおすすめしたいわ」

と、そのテンションもマックスといった感じで、器にさしてくれました。  さあ、それではいただいてみましょう。Buon appetito!!
それではいただいてみましょう。Buon appetito!!
ワインは、クラウディアさんのおすすめでミディアム・ボディの赤を選択。この日は産地を合わせて、ピエモンテ産のバルベーラを用意しました。

メインの食材は野菜ですが、オイリーで、ニンニクの効いたソースにはやはり軽めの赤が合うようです。

まずはバーニャカウダをお味見。

「いつもと違う! とってもあっさり味。でも、しっかりニンニクの香ばしさがあります。オイルにしっかり風味が付いていますから、少し付けるだけで野菜に合って、すごく食べやすくなりますね。生クリーム入りのソースより、もっと量が行けるかも。たっぷり付ければ、溶けたニンニクとアンチョビの塩味が絶妙で、どんどん食欲をそそる感じ」

食べ慣れた料理とは言え、この味の変化にはリサさんも驚き。そこにワインを一口。

「すごく合います。ニンニク効果ですね。この赤、さっき一口いただいたときは、やや酸味が強い感じがしましたが、バーニャカウダといただくことで、まろやかになります。さらに、軽めのボディなので、さらっと洗い流される感じで、すごく飲みやすくなりました」

すかさず、クラウディアさんおすすめのグリッシーニもチャレンジ。

「このサクサク感がいいです。食感が変わっておもしろいし、ソースにもピッタリ。野菜ばかりに飽きたら、このグリッシーニで変化をつければ、またさらに食が進みそう。サラダにトッピングされるクルトンのような役割かしら。これ、ぜひ家飲みに使わせてもらいます」

そうリサさんが笑うと、

「冷蔵庫にも、健康にも、いい。家計にもやさしいのよ。もう毎日パーティーやっても大丈夫」

高らかなクラウディアさんの笑い声が響きます。今日は最後まで、笑顔が耐えませんでした。作っても、食べても、笑いが生まれる。これぞ、イタリアの万能ソースの真骨頂。冷蔵庫のお掃除の際には、ぜひお試しください。


※記事の情報は2018年6月18日時点のものです。
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