イタリアのクリスマス・イブの家飲みを教えてもらった! (1)

12月のイタリアは、町のイルミネーションとともにクリスマス・ムードが一気に高まります。キリスト教の本場で、彼らはどんなイブを過ごすのでしょうか。

ライター:京藤好男京藤好男
メインビジュアル:イタリアのクリスマス・イブの家飲みを教えてもらった! (1)

イブは気心知れた友人と。まずは定番のカクテルで乾杯

当然ながら、キリスト教徒にとってクリスマスは宗教的行事。教会に行ったり、一年を振り返ったり、静かに過ごす時間です。とは言え、食事は美味しく、楽しくするのがイタリア流。どんな伝統と工夫があるのか、NHK-Eテレ『旅するイタリア語』のナビゲーターとして只今活躍中のマッテオ・インゼオさんに教えてもらいました。

「クリスマスにパーティーを開いて、飲んで騒いで、ということは基本的にしないよ。25日のクリスマス当日は、家族や親戚とゆっくり過ごす時間。日本のお正月に似てるね。24日のイブは少しゆるいかな。お祝いの準備をしながら、親しい友達なんかと、ランチや早めの夕食をする感じだね」そんなふうにイタリアのクリスマスを話してくれるマッテオさん。

ここで、彼から1つクイズが。「そんなクリスマスのイブの食卓に、決して出されないものがあるよ」。このコラムでイタリア人直伝の料理を学んでから、すっかり「イタ食通」になったリサさんも、「なんだろう。想像がつかないなあ」とちょっと考え込んでしまいます。

すると、ニコニコ顔のマッテオさん、「それは、お肉と赤ワイン」という答え。「意外です。クリスマスというとチキンとか、ターキーのイメージだったんですけど」、そう言うリサさんに、マッテオさん、こう説明してくれます。「25日は誕生を祝うので、体や血を象徴する肉や赤ワインはしっかりいただくよ。でも、その前日の24日は、まだ生まれる前。聖なる誕生を前に、肉体のイメージにつながるものは慎むという伝統があるんだね」。なるほど、やはりイタリアのクリスマスには深い宗教性が感じられますね。

では、どんな物なら食べていいのでしょうか?「お肉以外ならオーケー。僕の故郷では魚介類が中心だね。ワインなら、白ワインかスパークリング、カクテルなんかもいいよ」。

というわけで、今日はまずマッテオさんが、友達と集まればよく作るという、イタリアン・カクテルで乾杯することに。「スプリッツというカクテルだよ。イタリア製のハーブ・リキュールをスパークリングワインで割る、爽やかなカクテル。今日はあの有名なカンパリで作ってあげるよ」。そう言いながら、マッテオさんが用意したお酒がこちら。
スプリッツを作るのに必要なお酒
「スプリッツというカクテルは、イタリアではプロセッコ(ベネト産の白辛口スパークリングワイン)で割るのが普通だけど、日本ではなかなか手に入らないから、白のスパークリングならなんでもオーケーだよ」。そう言うマッテオさんに、リサさんも、「カンパリ・ソーダとかカンパリ・オレンジなら、飲み会でもよくいただきますよ(笑)」。「そう、日本の居酒屋さんにもカンパリを使ったメニューが置いてあるけど、イタリアではやっぱり、カンパリはスプリッツにするのが好まれるね」。そんな会話をしながら、マッテオさんのスプリッツ作りが進んでいきます。
スプリッツを作るマッテオッさん
「だいたいカンパリ1、スパークリング2で割るよ。濃いのが苦手な人は、さらに炭酸水を1程度足してもいい。口当たりが軽くなり、飲みやすいよ。そしてオレンジをスライスして添えると、爽やかさがアップするね」。
スプリッツ、完成
さあ、完成。薄紅色に透き通るカクテルが、太陽の光になんとも似合います。「早く飲みたーい」というリサさんに、マッテオさんがイタリア語で、「サルーテ!」とかけ声。

マッテオさんが作ってくれたスプリッツ、さてどんなお味?

スプリッツで乾杯
グラスを手にしたマッテオさんとリサさん。マッテオさんがイタリア語で「サルーテ!」とかけ声。「サルーテとは、「健康」という意味。宗教の慣習に従って、健康的に食事をしようという含みもあるよ」。そう説明してくれるマッテオさんをよそに、早速口をつけたリサさん、「飲みやすいです。とても爽やか。2つのお酒しか混ぜてないのに、すごくいろんな味がしますね」と気に入った様子で止まらなくなっています(笑)。

「このスプリッツ、イタリアではアペロールという、別のハーブ・リキュールで作ることもあるよ。カンパリの方が、苦味が強いから、それが好きな人と、苦手な人に分かれる。甘味のあるアペロール派がどちらかというと多いかな。友達と集まってスプリッツを作るときには、アペロールとカンパリ、両方を用意しておき、好みを聞いてから作り分けるよ」。

そう言いながら、マッテオさん、ある実験を思いついたよう。空のグラスに、カンパリだけを注いでいます。「カンパリだけ、ちょっと飲んでみて」。なんと、カクテルにする前の、カンパリを生で味見してもらおうというのです。リサさん、恐る恐る口に運びます。
スプリッツをおそるおそる口にするリサさん

すると、この表情。
微妙な表情のリサさん
「正直、まずいです。薬みたい。漢方薬というか…」。その答えに、マッテオさんも笑って、「そう、カンパリ自体はおいしくないの。このリキュールには、オレンジピール、コリアンダー、キャラウェイ、シナモンといったハーブが入っているから、本当に薬みたいな味なんだよね。実は、リサさんはきっとこの苦味は嫌だろうと思って、今日は甘口のスパークリングワインで割ってみたんだ。気に入ってもらえてよかった(笑)」
オレンジを浮かべたスプリッツ
さすがマッテオさん、カンパリの使い方を熟知していますね。苦味あるカンパリも、甘口スパークリングと輪切りのオレンジで、フルーティーな一杯に変身していました。この組み合わせ、家飲みでもすぐに使えそう。

さて、イタリア式イブの過ごし方を教えてくれるマッテオさん、続いて、イブ定番のお食事を作ってくれるとか。そのメニューについては、次回たっぷりレポートしますよ。カクテルで一息ついて、楽しみに待っていてくださいね。  

※記事の情報は2018年12月4日時点のものです。 
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