日本酒の賞味期限って? 日本酒の保管方法と熟成の楽しみ
日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する日本酒ラヴァー、簗塲友何里(やなば ゆかり)さん。今回は、そう言えば気になる、日本酒の賞味期限と、熟成のお話。
保管を超えて熟成を楽しむ
実は、賞味期限のない日本酒、保管して時間が経っていくと、おいしく熟成していくものもあるんです。「味のり」という言葉もありまして、ちょっととんがったような粗い味から、丸みを帯びたまろやかにコクがある状態になってきます。日本酒を熟成させると、時々良くない菌が日本酒に入り、白濁してしまうものがあり、その場合はあまりおいしいとは感じないので飲むことはおすすめしませんが、だからといって身体に悪い影響を及ぼすわけではありません。
さて、寝かせて熟成させるとおいしくなる日本酒を見つけるのは、なかなか難しいもの。私の経営する日本酒と発酵フレンチのレストランSAKE Scene〼福では、常に50種類以上の日本酒を管理しています。この日々の経験から、大まかですが熟成しておいしいお酒を見極める方法をまとめてみました。生酒か火入れの日本酒かで、味わいや香りにかなりの差が生じますし、保管方法も異なります。
生酒の保管と熟成
・アルコール感、酸味が強いタイプ
開けたてにアルコール感、酸味などなどの味わいが強く感じる生酒は、冷蔵庫で少し寝かせて様子をみつつ飲み頃を探ってみるのも良いと思います。温度と時間が比例して熟成するので、温度を低めに保って保管を続けていけば、綺麗に熟成していきます。
・旨味やコクのあるタイプ
旨味や、しっかりとしたコクや奥行きを感じ、酸味も感じる生酒は、面白く熟成をしていく、長く付き合いたい日本酒である可能性が高いです。このタイプは、未開封はもちろん、開栓してからも味わいが変わっていきます。
・常温熟成も
上級テクとしては、これは行ける! と思う生酒を、室温で熟成してみるという方法も。この方法でもおいしくなる「強固な造り」の日本酒も存在するのです。
・生ヒネ香も楽しみのうち?
生酒を保管すると「生ヒネ香」と言われる、インパクトのあるナッツのような香りがしてくることがあります。日本酒業界では良しとされない香りです。でも、もともと私はワインが好きで、「ワインの視点」から味わうと、ある程度の生ヒネ香も複雑性が出て面白いかもと思ってしまうこともあります。なにしろ、ワインの世界は「馬小屋臭」などをわざわざ付ける生産者もいるぐらいですから。クセのある味わいや香りも時々愛おしく感じてしまう、くせ者的な感覚としては、「生ヒネ香」も一つの個性としてとらえてしまうこともあります。
火入れの日本酒を熟成させると…
熟成の魅力
好きな日本酒を、暗い涼しい場所でゆっくり寝かせてみましょう。その日本酒の新たな魅力に気付くことができるかもしれません。そのお酒を熟成させておいしいと感じるかは、それぞれのお好み次第、いろいろ試して楽しんでみてはいかがでしょうか。
世の中には、「日本酒百年貯蔵プロジェクト」というものもあります。長期熟成酒研究会という、熟成古酒の研究をする任意団体のプロジェクトで、様々な日本酒を100年間保存し、熟成させようというもの。日本酒ファンの間では、今「熟成」の二文字が注目され、早飲みだけではない日本酒の世界が広がりつつあるのです。
※記事の情報は4月17日時点のものです
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