バーと上手に付き合うには【後編】〈お酒のたしなみ入門⑥〉

「バーで女性に連絡先を聞いても良い?」「店にお土産を持っていくのは?」 そんな気になるアレコレに、バーテンダーの林伸次さんがお店側の立場から本音で答えてくれました。

ライター:林 伸次林 伸次
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キャンセルや人数変更の連絡はお早めに

以前、テレビであるタレントさんが、「デートの時は洋食と和食、2種類のお店を予約しておいて、女性がどっちのお店でも選べるようにしている」と自慢していたことがありました。

ええと、もし彼女が「和食のお店」を選んだとしたら、もちろん「洋食のお店」はキャンセルするんですよね。お店を経営する人間として変な習慣が流行るのは困るなとすぐに思いました。

洋食のお店の人、例えばコースだったらその分の食材や料理を用意して待っているんですよね。あるいは他の「予約をとりたいお客様」にも、「その日は予約で満席なんです」って断っているんですよね。お店としてはすごい損失です。
空席
もし予約をしたのなら、必ずお店には行ってください。どちらかが病気でなんて時には出来るだけ早めにキャンセルの連絡をしてください。そうしてもらえれば、そのお店も例えばお昼のうちにSNSで「キャンセルが一組出ました」って告知することが可能です。

人数の変更も具体的に伝えていただけると助かります。バーによっては「カウンターに3人以上は座らせない」と決めているお店、あります。というのはカウンターで3人以上になると、声が大きくなって他のお客様に迷惑がかかってしまうからです。
 

バーではウーロン茶よりもノンアルコールカクテルを

「体質的にアルコールが受け付けないのですが」とか「お酒はすごく弱いのですが、バーの雰囲気が好きで」といったことをよく質問されます。バーテンダー側としましては、色んなお酒やフルーツなんかを用意しているのに、「ウーロン茶ください」って言われて、そのままずっとそれだけっていうのがとてもつらいんですね。

ですので、「お酒が一滴も飲めない」という方はノンアルコールカクテルを2~3杯は注文していただきたいです。あるいは「ビールをコップに半分くらいなら飲める」っていう方もいらっしゃいます。そういう方は「ビールにコップ半分くらいでしたら飲めます。今日は3杯カクテルを飲むつもりなので、3杯飲んでちょうどそのくらいの薄さのカクテルを作っていただけますか?」と最初に言っていただけると、そのくらいのアルコール度数のカクテルを3杯用意します。

初対面の女性客に連絡先を聞くのはご法度

バーの醍醐味は他のお客さんと知り合いになるということです。僕も20年、渋谷でバーをやってきて、ここで知り合って結婚した人もいますし、ここで仕事が決まったなんて人もたくさんいます。

でも、バーによっては「マスターが紹介してからでなくては話しかけてはいけない」というお店もあります。あるいは「隣の人に1杯おごるのもダメ」というお店もありますし、もちろん「ナンパ目的は禁止」というお店も多いです。初めての場合は周りを観察した方が良いですね。

でも、一般的なカジュアルなバーでしたら、もしあなたに金銭的な余裕があれば、若い人や女性には「何か僕からおごります。好きな飲み物をどうぞ」と言ってしまうのも、お店としても売り上げが上がるので喜ばれます。かといって女性に「連絡先」を聞いたり、「今度、食事でも」とかって誘わない方がもちろん紳士的です。先にあなたが席を立って軽く名刺を渡す程度がスマートですし、そのバーでも気に入られます。

お店側にとっては微妙なお土産問題

バーにお土産を持ってくる方がいます。もちろんどこかの旅行のお土産の「お気持ち」は嬉しいのですが、お店側としてはお客様との間で「借り」が出来るのがちょっとだけ困ります。お土産を渡しても「何かで返してもらおう」とは思わない方が良いです。

お酒を持ってくる方がいますが、それをカウンターの常連のみんなで飲んでしまうと、売り上げが伸びないので困ります。もし「すごく珍しいお酒をみつけたから」ということで持ってくるのでしたら、「お店が終わったらみんなで飲んで」と伝えるか、「値段付けて他のお客さんに出しても良いよ」と伝えてもらえると助かります。

あと、絵や置物といった「お店に飾れるもの」を持ってくる方がいますが、もちろんご想像通り「迷惑」ですので、よろしくお願いいたします。

戻すなら「便器の中」が正解

ちょっと汚い話になるので、お食事中の方、申し訳ありません。どうしても体調が良くなくて、「戻したくなるとき」ありますよね。これ、是非、覚えておいて欲しいのですが、「戻すときは洗面台の方ではなくて「便器の中」です。洗面台の洗面受けは排水が細くて詰まる可能性が高いです。



そしてバーテンダーに「トイレが汚れている」とか「詰まっている」っていう情報を、こっそりと伝えていただけるとすごく助かります。

二度目のバーに行くときのコツ

「二度目にそのバーに行ったときに覚えてもらえているか」という問題があります。一回目に話しすぎて、二回目、なんとなく行けなくなるってこともありますよね。そんなときは、例えば電話で「今から五分後に二人でうかがいます。三ヶ月ほど前にそちらにうかがってブルゴーニュワインの話をした広告代理店に勤めている林です」とかって言っていただけると、来店するまでの間に思い出せるので助かります。あと、このバーテンダー覚えていないなと思ったら、「先日、こんな状況でこんな話をしました」って早めに教えていただけるとそれも助かります。お願いします。

僕はこういうバーに関する文章を書いているので、よく「バーにとって良いお客さんってどういう人ですか?」って質問されるのですが、たぶん日本全国どのバーテンダーに聞いても返ってくる言葉は「綺麗にさっと飲んで、長居しないでさっと帰る方」って答えると思います。

でもそんなことあまり気にしなくて良いかと思います。バーって楽しいところです。バーを自由に使えるようになると、「大人になって良かった」って思いますよ。今夜も世界中のバーであなたのご来店をお待ちしております。

※記事の情報は2019年4月24日時点のものです。
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