ギリシャの食卓におじゃまします!【後編】〈家飲みオリンピック①〉

ギリシャの家飲み文化を探る今回の取材。前編につづき、後編ではフラギスさんのお宅のリアルな食卓を拝見! ギリシャのお母さん仕込みのレシピも詳しくご紹介します。

メインビジュアル:ギリシャの食卓におじゃまします!【後編】〈家飲みオリンピック①〉
ギリシャ出身のフラギス・アサナシオスさんのお宅で、ギリシャの家飲み文化について探る今回の取材。【前編】ではギリシャの一般的なお酒事情や食文化についてお聞きしましたが、【後編】ではフラギスさんがふだんの食卓で何を飲み、何を食べているかをご紹介します。現地の家庭料理の詳しいレシピもしっかり教えてもらいました。

どの料理にも「オレガノ」を効かせるのがギリシャ流

日本に来て18年になるというフラギスさん。日本食も大好きだとのことですが、ギリシャの家庭の味を忘れることはありません。編集部が取材でお宅におじゃましたこの日も、フラギスさんのお母さんが良く作っていたという故郷の料理をフラギスさん自らが腕を振るい、テーブルにずらりと用意してくれていました。

まずは、【前編】でも登場したフェタチーズをふんだんに使った「ギリシャ風サラダ」。現地では“村のサラダ(ホリヤティキ・サラタ)”とも呼ばれているそう。野菜は日本でもおなじみのものですが、「カラマタ」というギリシャ特産の黒オリーブが入っています。上からオレガノとオリーブオイル、ビネガーを振りかけて完成。味付けはフェタチーズの塩味だけで十分とのこと。
ギリシャ風サラダ
サラダは食べる直前に良く混ぜて、フェタチーズを崩しながら食べる。奥様の由美子さんは食べた後に残ったソースをパンにつけて食べるのが大好き

次は「フタポディ カパマ(タコの赤ワイン煮込み)」。タコを多めのオイルで揚げるように炒め、赤ワインやトマトで煮たもの。月桂樹やオレガノで香りづけをします。フラギスさんによると、ギリシャ人も日本人と同じようにタコやイカなど、海から採れるものは何でも食べるのだといいます。
フタポディ カパマ
温かいままはもちろん、冷めても美味しい「フタポディ カパマ」

このミートボール状のものは「ケフテデズ」。ミントやオレガノを混ぜたミンチをボールにして、揚げ焼きしたもの。「シャジキ」というギリシャヨーグルトのソースを添えることでさっぱりいただけるそう。冬場はこのケフテデスを、トマトソースで煮込んで食べたりもするのだとか。
ミートボールとシャジキ
ミートボールに添えられたヨーグルトソース「シャジキ」は、野菜スティックやピタパンに付けて食べてもおいしい

ここまででも十分にご馳走ですが、フラギスさんは、さらにメインのお料理も用意していました。「コトプロ レモナト メ パタテス(ローストチキン&ポテト レモンソース)」です。食べる前の日の晩からオリーブオイルやにんにく、オレガノでマリネしたチキンをじゃがいもと合わせて、レモンソースをかけてオーブンでローストしたもの。チキンが良い色に焼けていて、食欲をそそります。
コトプロ レモナト メ パタテス
本日のメイン料理。チキンの中にチーズを入れて焼くこともあるそう

ここで気づいた方もいるかもしれませんが、ギリシャ料理には「オレガノ」が実に多く使われているんです。オレガノは地中海沿岸が原産。古代ギリシャでは幸運のハーブとされていて、食用としてだけでなく、結婚式ではオレガノの冠をかぶる風習もあったのだとか。オレガノもオリーブオイルやチーズのように、昔からギリシャの人々に欠かせない食材なんですね。

さて、お料理の紹介はここまでにして、早速乾杯しましょう!
テーブルに並んだギリシャ料理

ギリシャ語で、乾杯は「ヤマス!」

この日の食事に合わせてフラギスさんが選んだお酒は、「マラグジア」という品種のブドウで造られた白ワイン。もちろんギリシャ産で、フラギスさんは「ギリシャ全土の白品種のうちでも最も香りの高いワイン」と太鼓判。その香りを楽しむため、あえてキンキンに冷やさずに飲むのがおすすめだそうです。
マラグジア
フルーティで柑橘の香りが豊かなマラグジア種の白ワイン。ほんのりミネラルも含む。熟成したチーズやグリルした焼き魚、鶏肉料理に合う

「取材は終わった? じゃあ君たちも一緒に食べよう!」と、私たちにもワインを注いでくれたので、ありがたく頂くことにしました。ちなみにギリシャでは、みんながテーブルに着席しないうちに、誰かひとりが先に食べ始めるというのはマナー違反。すべての料理を並べお酒をグラスに注いでから、みんなで一緒にいただくのが決まりです。
ワインを注ぐフラギスさん
ギリシャでは、ワインを注ぐのは男性の役割

「乾杯は、ギリシャ語で『ヤマス!』というんだよ」
フラギスさんはそう言って、隣に座る由美子さんとグラスを合わせました。
フラギスさんと由美子さん
ヤマス!のかけ声で、グラスを合わせる二人

ヤマス! 私たちも早速いただきます。ギリシャでは、複数人で食卓を囲むときには、今回のように大皿にボンボンと料理を盛って、銘々が食べる分だけお皿に取り分けていただくのだそう。一品ずつお皿に取っていくと、海のもの、畑のものが色どりよく、見ているだけで食欲がわきます。どのお料理にもオリーブオイルがたっぷり使われていますが、まったくしつこなく、むしろオレガノの清涼感や、レモンやビネガーの酸味のおかげでさっぱり。アロマティックな白ワインがすすみます。
料理を取り分けたお皿

なかでも印象的だったのが「ケフテデス(揚げ焼きミートボール)」。ミントと肉という組み合わせが斬新!と思っていましたが、ミントが爽やかなアクセントとなり、いくらでも食べられそうです。「シャジキ」というヨーグルトソースを添えて食べると、さらに味がエキゾチックになるように感じました。

ともに過ごす「時間」が一番大切、それがギリシャの家飲みスタイル

ちなみに今回用意してくれた料理は、決して特別な日に食べるものではなく、ふだんからフラギス家の食卓に上っているものなんだそう。こんな素敵な夕飯だったらさぞお酒もすすむことでしょう。飲み過ぎて二日酔いになったりはしないんでしょうか?
「平日はワインならグラスに1~2杯くらいにしておくかな。みんなで集まってわいわい飲むときは、お酒の合間に水をたくさん飲むことを忘れないようにしている。それが長く飲む秘訣だね」

日本では「酒をあおる」という言い方をすることもありますが、ギリシャの人々にとってお酒はあくまで「会話を滑らかにするために飲むもの」とフラギスさんはいいます。家族や友人たちとテーブルを囲んで、一日の出来事やら、政治の話やら、ご近所の噂話やらをする。ギリシャの方たちにとって家飲みは、そんなリラックスしたひとときなのだと今回の取材で感じました。
会話を楽しむフラギスさんと由美子さん
食後もテーブルで2時間くらい会話をするのが普通だというフラギス家。一日の中でも、家族との食事の時間を一番大切にしているそう

次のページでは、今回フラギスさんが作ってくれた現地ギリシャの家庭料理のレシピを詳しくご紹介。フラギスさんが営むギリシャ食材の輸入会社「ノスティミア」では、チーズやワインの通信販売も行っているそうなので、ギリシャの食文化に興味を持たれた方は、ぜひこちらものぞいてみてください!
「ノスティミア」公式HP

フラギスさんのお宅の家飲みレシピはこちら!


●ホリヤティキ・サラタ(ギリシャ風サラダ)3人分

材料

  • トマト 2個
  • きゅうり 1本
  • ピーマン 2個
  • 玉ねぎ 1/2個
  • カラマタオリーブ(黒オリーブ) 6粒
  • フェタチーズ 100g
  • ドライオレガノ 適量
  • エクストラヴァージンオリーブオイル たっぷり(60mlくらい)
  • 白ワインビネガー 適量

作り方

  • トマト、きゅうりはひと口大に切り、ピーマン、玉ねぎはスライスし、サラダボウルに入れる。
  • 黒オリーブとフェタチーズを上に飾る。
  • 上からオレガノをかける。
  • 最後にオリーブオイルとビネガーをかけて、フェタチーズをフォークでつぶして、よく混ぜて食べる。

●フタポディ カパマ(タコの赤ワイン煮込み)3人分

材料

  • タコの足 200g程度
  • 玉ねぎ(みじん切り) スプーン1杯
  • トマトペースト スプーン1杯
  • エクストラヴァージンオリーブオイル 30ml
  • 赤ワイン グラス1杯
  • ローリエ 1枚
  • ドライオレガノ 適量
  • 塩・こしょう 少々

作り方

  • タコの足を切らずにそのままオリーブオイルを入れたフライパンに投入し、よく裏返しながら5分程度炒める。
  • 別のフライパンにオリーブオイルを少量入れて玉ねぎを炒める。
  • タコの入ったフライパンに赤ワインを加え、約2分間、水分が蒸発するまで炒める。
  • ③に、炒めた玉ねぎ、トマトペースト、ローリエ、オレガノ、塩・こしょうを加える。
  • さらにタコが隠れる程度の水を加える。
  • 様子を見て必要であればさらに水を加えながら、タコが柔らかくなるまで煮る。
  • タコを食べやすいサイズに切って、器に盛る。

●ケフテデズ(揚げ焼きミートボール)

材料

  • ひき肉(牛か、牛・豚の合い挽き) 250g
  • パン粉 1カップ
  • 玉ねぎ(みじん切り) 小1個分
  • にんにく(みじん切り) 1片
  • 1個
  • エクストラヴァージンオリーブオイル 適量
  • ワインビネガー 少々
  • ミント(ドライまたはフレッシュ) 適量
  • ドライオレガノ 適量
  • 塩・こしょう 少々
  • 小麦粉 少々

作り方

  • ボウルに、ひき肉、パン粉、卵、玉ねぎ、にんにく、ワインビネガー、ミント、オレガノ、塩・こしょうを入れて良く混ぜる。
  • 混ぜたら冷蔵庫で1時間程度寝かせる。
  • ひき肉を小さいボール状にし、小麦粉を薄くまぶして、多めのオリーブオイルでコロコロ転がしながら揚げるように焼く。

●シャジキ(ギリシャヨーグルトのソース)

材料

  • ギリシャヨーグルト 200g
  • 小さめのきゅうり 1/2本
  • にんにく(みじん切り) 1/2片
  • 白ワインビネガー 小スプーン1杯
  • フレッシュディル(みじん切り) スプーン1杯
  • 塩・こしょう 適量
  • エクストラヴァージンオリーブオイル 少々

作り方

  • きゅうりを細かいみじん切りにし、塩を振ってしばらく置いておく。ペーパータオルなどで水分をよく切る。
  • ボウルにギリシャヨーグルト、みじん切りにしたにんにく、きゅうり、白ワインビネガー、ディル、塩・こしょうを加え、良く混ぜる。最後にオリーブオイルを入れてもう一度よく混ぜる。
  • 食べる前に、1時間程度冷蔵庫で寝かせる。
  • お皿に盛り、ディルを飾って出来上がり。

●コトプロ レモナト メ パタテス(ローストチキン&ポテト レモンソース)

材料

  • 鶏もも肉 4枚
  • じゃがいも 1kg
  • エクストラヴァージンオリーブオイル 100ml
  • にんにく(すりおろし) 1片
  • ドライオレガノ 適量
  • 塩・こしょう 少々
  • レモン果汁 2個分
  • (好みで)熟成したハードチーズやブルーチーズ 100g

作り方

  • オリーブオイル、オレガノ、にんにく、塩・こしょうでマリネ液を作り、そこに鶏肉を浸けて2時間から一晩寝かせる。
  • じゃがいの皮をむき、ごろごろとした大きさに切る。
  • 鶏の皮の部分を外向きにして二つ折りにし、つまようじで止める。チーズを入れたいときは、二つ折にした部分にはさんでつまようじで止める。
  • 鶏肉とじゃがいもをオーブントレーに並べ、レモン果汁と①のマリネ液をかけて、さらにトレーの下から5㎝程度まで水を入れる。
  • 180℃に予熱したオーブンで、50分程度焼く。じゃがいもが柔らかく、鶏肉にもきれいな焼き色がついたらできあがり。

※記事の情報は2019年5月12日時点の情報です。
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