失敗できない彼女とのデート、入店後のスマートな振る舞いとは?

渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主・林伸次さんによる連載第3回〈バー店主が語るお店の使い方〉。前回のお店予約の作法に続き、今回は知っておくべき入店後の所作やマナーについて、語っていただきました

ライター:林 伸次林 伸次
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お店に早く着くほど良い、というわけではない

以前、高級温泉宿を経営している知人から、こんなことを言われました。

「僕の宿はチェックアウトが10時で、チェックインが15時なんです。でもその10時から15時の間に僕たちの宿に来て、『ちょっと荷物だけ置かせておいて』、とか『チェックインの時間までちょっと休ませて』とかって仰るお客様がいるんです。僕たちって真夜中もずっと勤務時間で、お客様がいなくて休めるのってその10時から15時の間だけなんです。銀行やデパートに時間外に入ってくる人っていないですよね。どうして宿には入ってくるんでしょう」

すいません。僕も同じようなミスをしたことがあるかもしれません。温泉宿の方はチェックアウトからチェックインまでの短い時間が「ホッと出来る休み時間」なんですね。本当にそういう「働いている人側の事情」って聞いてみないとわからないものですね。

同様に、19時開店のレストランに、18時50分に到着してしまって、「料理は19時からで良いから、先に中で休ませて」って仰る方がいるそうなんです。すいません、19時開店のお店には19時に入店してあげてください。

「壁側」か「通路側」かが、見極めポイント

さて、彼女とお店に入ります。席の方に案内されました。男性のあなたはどこに座りますか? そして彼女をどの席にすすめますか?

はい。女性は必ず壁側に座ってもらいましょう。いわゆる上座です。そして男性は通路側の下座に座りましょう。そしてこれを読んでいる女性の方、もし自分が壁側の席を男性にすすめてもらえなかったら、その男性との交際は少し考えた方が良いかも知れません。

というのは、やっぱり「壁際に座る方が落ち着く」んです。その席を女性のあなたに勧めずに、男の自分が座ってしまうってあまり良い男性とは思えません。僕も24年間バーテンダーをしていますが、男性が壁際に座ってしまった場合、男性が偉そうで女性は不幸せそうなことが多いです。女性を「落ち着ける席」に勧める男性を選びましょう。

ちなみにこれはマナーで、決まっていることではありません。全世界人種を問わず、女性を大切に扱う男性は「通路側」に座って、女性を「壁際の席」に勧めます。ダメだなって男性は、自ら「壁際の席」に先に座ってしまいます。一度、周りを観察してみてください。見事に「ああ、このカップルはダメだなあ」っていうのがわかります。

お酒が「仲良くなりたい」気持ちを高める

さて、スタッフがメニューを持ってきてくれます。まず「飲み物」を決めましょう。

もしアルコールが苦手でなければ、せっかくですので何かお酒をいただきましょう。理由はこうです。アルコールって脳の大脳新皮質という箇所に麻酔がかかった状態になります。ここは理性的な行動をとるように指令するところです。ここがぼんやりしてしまうと、かわりに本能や欲望のままに生きろという旧皮質が表舞台にでてきます。この旧皮質のおかげで、お酒に酔うと本能である「仲良くなりたい」という気持ちがあなたにも、彼女にもでてきます。そして緊張していたあなたの心もほぐれます。

「お水で結構です」に、お店側が困る理由

ちなみに「居酒屋に入って、『お水で結構です』という方」というのが何度もネットで話題になっています。実はですね、日本の飲食業界の「ダメなところ、改善しなくてはいけないところ」でもあるのですが、「日本の夜の飲食店は飲み物の売り上げで成立している」という状況があるんです。

日本の飲食店の料理の金額が、海外と比べてすごく安いのはご存じですか? これはバブル崩壊以降ずっと景気が悪くて「値段を上げられない」というのもあるのですが、とにかく安く抑えられたままずっと30年も経ってるんです。

例えば「千円の壁」というのがありまして、料理を千円以上にしてしまうと「パタッ」とお客様が注文してくれなくなるんです。

飲食店の原価率というのがありまして、「値段の3割」というのが鉄則なんです。例えば、「サンマの塩焼き定食700円」というメニューがあれば、その定食の材料は30%の210円で抑えなくてはいけません。サンマと大根下ろしとお米とお味噌汁の具材とちょっとした小鉢と漬け物の合計が210円までなんです。

だから料理人は、本当は面白い食材を試してみたいのですが、1000円までの壁というがあるので、安い卵やモヤシやタマネギや鶏の胸肉といった食材をたくさん使うことになります。そして料理を安く抑えて、ドリンクをたくさん注文していただいて「経営が成り立つ」という方法をとっています。

もちろん本当は料理の値段をちゃんと高くして、良い食材を使ったら3000円以上のメニューもあって、という風にしたいのですが、どうしても「安いお店」にお客様は流れてしまうので、どのお店も「料理を安くして、飲み物でそれを補う」という方式をとっています。

というわけですので、何か「飲み物」を頼んでいただけるとお店のほうも助かるんです。

では、そのお酒は何を頼めばいいのか? 次回に続きます。

※記事の情報は2019年7月23日時点のものです。
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