「酒臭い」の原因は? メカニズムと予防法
どんなに香りの良いお酒も、ひとたび体内を通過すると「酒臭い」に変わるのはなぜ? 「酒臭い」が起こる原因と、そうならないための正しいお酒の飲み方について、管理栄養士の森由香子さんが解説します。
香りの良いお酒も、飲み過ぎると「酒臭い」に変わる
海老沢泰久氏の著書『美味礼賛』のなかで次のような白ワインの香りで料理を楽しむ描写があります。
それを口に含み、せせらぎのようなかすかな音を立てながら味を香りをみた。・・空気と一緒に舌の上でころがすようにして、しっかりと味を味わって、それから鼻腔に残った香りで料理を食べればいい。海老沢泰久 『美味礼讃』(文春文庫)
「酒臭い」と言われたり、感じたりするときは、たいてい飲み過ぎたときではないでしょうか。
飲酒臭の原因は胃の内容物にあると考えて、酢酸菌を利用したサプリメントや息清涼製品を利用することで「酒臭い」を防止することもできますが、今回は、お酒の飲み方を中心にお話したいと思います。
「酒臭い」の原因はエタノールとアセトアルデヒド
また、近年の研究で、飲酒後の呼気には不快臭に関与する成分が少なからず存在し、それらがエタノールやアセトアルデヒドに加わり「酒臭い」臭気成分を生み出していることもわかっています。
「酒臭い」を防止するには、「適量」に留めることが大事
●アルコール血中濃度
お酒が楽しく飲めるアルコール血中濃度は0.1%程度といわれています。
●アルコール呼気中濃度
ちなみに、道路交通法による酒気帯運転は、呼気(吐き出す息のこと)1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された状態とされています。
●アルコール分解時間
体重1kgあたり1時間で約0.1gのアルコールを分解するといわれています。こちらはあくまでも目安であり個人差や同じ人でも状況によって差が出てきますが、ご自身のアルコールが抜ける時間を把握しておきましょう。
例)体重50kgの人が、ワイン360ml(アルコール度数12%)を飲んだ場合、アルコール分解にかかる時間は約7時間。
繰り返しますが、「酒臭い」を防ぐには、ご自身の肝臓の処理能力の範囲内、つまり適量の飲酒量に留めておくことです。算出した数値は覚えておきましょう。
口の渇きや歯周病も「酒臭い」を増強する要因に
アルコールの利尿作用により、体内の水分が減ることで唾液の分泌量も減り、口の中が乾きやすくなることが考えられます。ご存じのとおり、まめな水分補給はアルコール分解を促進します。水を飲むことは、口の中をうるおし乾燥が進まないようにすることと、アルコール代謝を促進するという一石二鳥の効果があるのです。
また、ある研究によると、飲酒習慣のある人ほど歯周病になりやすいことが報告されています。お酒に関わる歯の病気に、「酸蝕歯」があるのをご存知でしょうか?
「酸蝕歯」は、固いエナメル質で覆われている歯が、酸性の飲食物(お酒など)に長期間さらされ続けることで徐々に溶けていく病気です。
通常は、唾液の力で中和されるので問題ないのですが、それが間に合わないほど酸性が強い飲食物にさらされたり、毎日ちょっとずつでも、長時間歯に酸性の飲食物がさらされ続けていると、起こる可能性があるようです。この病気になると、歯が黄色くなり、虫歯や歯周病の原因にもなると考えられています。
飲酒は長時間に及ぶことが多いので、それだけ口の中は酸性の状態が続くことになります。ご自宅での飲酒となると、なおさらお酒を飲むペースがゆっくりになるのではないでしょうか。
また、おつまみ無しで飲酒することが多い方は、直接、酸性の飲料(お酒)が歯に触れるので要注意です。
予防として、お酒を飲んだ後、そのまま寝ないで、口の中にアルコールや食べ物が残らないように口をゆすぐことです。
また、おつまみを選ぶ際、意識的によく噛めるものを用意し、ゆっくりよく噛んで唾液を分泌(中和)させ、口の中を長時間酸性の状態にさせないことが肝腎です。
▼「酸蝕歯」についてこの記事もチェック!
これらのことを気に留めながら、健やかな家飲みライフをお過ごしください。
※記事の情報は2021年1月14日時点のものです。
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