【加齢と飲酒の関係】なぜ歳を取るとお酒に弱くなるのか?
二日酔いが以前よりひどくなったと感じている方、それ、もしかすると「加齢」のせいかもしれません。管理栄養士の森由香子さんが、加齢による飲酒ダメージのメカニズムを解説。「飲酒歴を重ねるとお酒に強くなる」説についても解き明かします。
肝機能の衰えや胃の萎縮でアルコール代謝が低下
人間の体は60兆個の細胞でできています。アルコール代謝のときに発生する活性酸素などが、肝臓の細胞にダメージを与えたりすることが肝臓の働きに悪影響を及ぼします。
そして肝臓の細胞を修復するスピードも、加齢とともに機能性が衰えるため、アルコール代謝も若い時のようにはいかなくなります。
たとえば、加齢と共に肝臓の色は、明るい茶色から暗い茶色へ色調の変化がおこり、大きさもだんだん小さくなり、それにともない血液量も減少していき機能が衰えていきます。
肝臓のほかに、年齢を重ねるにつれて胃の粘膜が委縮することもアルコール代謝を低下させることの原因をつくります。
体内水分量の減少も原因の1つ
少し脱線しますが、私自身が体内水分量の減少を実感するのは入浴の時です。年齢とともに体が温まりやすくなり、長く湯ぶねにつかることができなくなりました。体の水分量が減り、比熱が低くなったせいではないかと自己分析しています(実際のところはわかりませんが)。
高リスクな飲酒傾向のある中高年層
しかし、中高年の方ほど、生活習慣病のリスクを高める飲酒をしていることが「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」から判明しました。
それによりますと、生活習慣病のリスクを高める飲酒をしている者の割合は、男性14.9%、女性9.1%、年齢階級別にみるとその割合は男性では40歳代、女性では50歳代が最も高くそれぞれ21.0%、16.8%ということです。
①男性:「毎日×2合以上」+「週5~6日×2合以上」+「週3~4日×3合以上」+「週1~2日×5合以上」+「月1~3日×5合以上」
②女性:「毎日×1合以上」+「週5~6日×1合以上」+「週3~4日×1合以上」+「週1~2日×3合以上」+「月1~3日×5合以上」
清酒1合(180ml)は、次の量にほぼ相当する。 ビール・発泡酒中瓶1本(約500ml)、焼酎20度(135ml)、焼酎25度(110ml)、焼酎30度(80ml)、チュウハイ7度(350ml)、ウィスキーダブル1杯(60ml)、ワイン2杯(240ml)
出典:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
中高年の方は、「飲めなくなってきた」と感じたら、節酒を心がけたほうが健康寿命の延伸が期待できそうです。
「鍛えるとお酒に強くなる」は本当?
お酒は、飲酒歴を重ねることで鍛えられるのでしょうか?
答は、「選ばれた人だけがその恩恵を受けることができるが、万人に対してではない」です。
“選ばれた人”というのは、ALDH2(アセトアルデヒド脱水酵素)活性型をもち、MEOS(ミクロソームエタノール酸化系)の代謝比率が高まっている方です。
少し、詳しく説明しましょう。
お酒に強い、弱いは、ALDH(アセトアルデヒド脱水酵素)をもっているかどうかで決まります。ALDH(アセトアルデヒド脱水酵素)は、ALDH1とALDH2の2つの酵素があり、アセトアルデヒドは主にALDH2で代謝されますが、日本人の中には遺伝子的にALDH2がうまく働かない人が多くいます。ALDH2活性型をもっている人はお酒に強いのですが、低活性型の人はお酒に弱く、非活性型の人はお酒を全く飲めません。
次にMEOS(ミクロソームエタノール酸化系)酵素群です。聞き慣れない方も多いでしょう。こちらは、アルコールをアセトアルデヒドへ代謝する経路なのですが、酔いが進むと働いてくれるもので大量飲酒を続けることで増えてアルコール代謝を活発にしてくれます。
通常は、主にADHによる代謝ですが、アルコール常飲者ではMEOSによる代謝の比率が高くなります。しかし、代謝できる量には限界があるため、底なしに飲めるというわけではありませんのでご注意ください。
末永く健康的な家飲みライフのために、加齢に応じた節酒を
アルコールを長期にわたり大量に摂り続けると、脳が委縮して脳梗塞を起こしやすくなり、認知症の危険性も高まると考えられています。特にアルコールを原因とする認知症は、突然症状が進んだ状態で発症することが少なくないと聞きます。
認知症予防、ひいては健康寿命の延伸のために、加齢とともに少しずつトータルの飲酒量を減らすことや休肝日をもう1日増やすことなど自助努力も必要になります。
個人の自由ではありますが、いつまでも美味しく楽しく家飲みライフを過ごしていくには、歳を重ねていくごとに節酒するのが無難かもしれません。
※記事の情報は2021年4月15日時点のものです。
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