「酢」は二日酔い軽減に効果的? 栄養やおすすめの種類について、管理栄養士が解説

おせちの定番「紅白なます」を始め、酢を使った食べ物はとても身近です。料理の味を引き立てたりまろやかにするだけではなく、栄養も豊富。そんな「酢」に含まれる注目の成分や、お酒と一緒に摂るとどんな効果が期待できるのか?など、管理栄養士の森由香子さんが教えます。

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栄養豊富な「酢」は人類最古の調味料

洋の東西を問わず、酢は昔から使われており、人類最古の調味料ともいわれています。一説によると、およそ3000年前から酢が使われていたという記録も残っているそうです。

日本で酢の製造が始まったのは3世紀ごろで、中国からお酒とともに製法が伝わりました。古くは、辛酒(からざけ)とよばれ、酒かすや悪くなった酒からつくっていました。

酢は、すっぱい(すい)という意味で、「す」と呼ばれるようになったそうです。ちなみにポン酢のポンは、オランダ語pons(だいだいのしぼり汁)に由来しています。

酢にはどんな種類がある?

いろいろな酢
酢は、製法や原料により、醸造酢合成酢に分けられます。 

醸造酢は、穀物や果実を酢酸発酵させてつくり、米が原料であれば米酢、ブドウが原料であればワインビネガーと呼ばれ、数多くの種類があります。食品成分表には、食酢類として黒酢、穀物酢、米酢、果実酢(バルサミコ酢、ぶどう酢、りんご酢)が掲載されています。

一方で合成酢は、酢酸に糖類、醸造酢、化学調味料などを加えてつくったものです。全国食酢協会中央会・全国食酢構成取引協議会ホームページによりますと、合成酢は生産量も少なく、現在では家庭用として使われることはほとんどないということです。

酢にはうれしい効果がたくさん!

酢は、料理に酸味をつけることのほかに、味付けの濃い料理に加えることでマイルドな味に変えたり、料理の油っこさを和らげたりしてくれます。

また、野菜の酵素のはたらきを抑えて色が悪くなるのを防ぐほか、魚の身の臭み消しや身を柔らかくするのに役立ったり、大根おろしに含まれるビタミンCの酸化防止、昆布を柔らかくするなど、さまざまな効果が得られます。

ほかにも、カルシウムの吸収を促す、血圧上昇を抑制する、血糖値の上昇をゆるやかにする、内臓脂肪を減らすなど、健康効果も期待できます。 

酢に含まれている栄養成分は?

食酢
食酢の主成分は、酢酸です。

ほかに、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸と、糖質、たんぱく質、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、ナイアシン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミン12、パントテン酸なども若干ふくまれています。酢は意外にも、栄養豊かな調味料であることがわかります。

二日酔いに効果あり? 注目の「酢酸菌」に期待される効果とは

酢の主成分である酢酸は、原料(米、ブドウなど)に由来するアルコールに酢酸菌がはたらいて生成されますが、今この酢酸菌が注目を浴びています。

酢酸菌は、アルコール脱水素酵素とアルデヒト脱水素酵素という2つの酢酸菌酵素を生産し、アルコールを酢酸に変換しています。

そのため、酢酸菌酵素が胃ではたらくと、アルコールが肝臓で分解される前に胃で分解され、飲みすぎによる二日酔いを軽減できるのではないかと期待されています

また、免疫機能を整えるはたらきも示唆され、花粉症の人が酢酸菌を摂取して症状が和らいだという報告もあります。

「酢酸菌」はどんな酢に含まれる?

酢と柄杓
残念ながら、現在市販されているお酢の多くは製造の過程でろ過され、酢酸菌が取り除かれています。

では、酢酸菌が存在する酢、つまりろ過されていない酢はあるのでしょうか。

答えは、あります。昔ながらの製法でつくられている、にごりのある黒酢やバルサミコ酢、香酢には酢酸菌が含まれています。

しかし、にごり酢から摂取できる酢酸菌は、残念ながらごくわずか。そこで、あるメーカ-では、酢酸菌酵素を高濃度に含むにごり酢を生産し、酢酸菌酵素を濃縮したサプリを販売しているようです。

酢を上手に取り入れて、健康的な家飲みを

タコの酢の物
お酢は、調理における作用だけでなく、秘められたパワーも解明されつつあります。今晩はお酒のお供に、にごり酢をつかった酢の物はいかがでしょうか。材料の持ち味にさわやかな酸味と香りが加わり、お酒の美味しさを際立たせてくれるでしょう。

美味しい酢の物と一緒に、健やかな家飲みライフをお過ごしください。

※記事の情報は2022年1月10日時点のものです。
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