今日からあなたもワイン通! 実は難しくないワインラベルの読み方
「ワインラベル(エチケット)」の正しい読み方をご存知でしょうか? 実はワインラベルが正しく読み取れるだけで、ワインの味が想像できたり、その価値を知ることができたりと、ワインをより深く楽しむことができます。今回はワインラベルの読み方を、ソムリエが分かりやすく解説します。
ワインラベルの読み方、知っていますか?
前回の記事では、おいしい家飲みワインを見つける際に大切なのは品種と産地だとお伝えしました。
今まで「なんとなく直感で」「かわいいラベルだから」といわゆるジャケ買いをしていた方も、この記事を参考にして理解を深めていきましょう。
ワインラベルは「エチケット」とも呼ばれる
これは単純に言語の違いで、英語読みでは「ラベル(label)」、フランス語読みでは「エチケット(etiquette)」と表記するため、意味合いは変わりません。
一般的にエチケットは「礼儀作法、身だしなみ」という意味がありますが、フランスではその昔、宮廷に出向く際に礼儀を示すお札を「エチケット」と呼んでいたことから、本来は「荷札」という意味もありました(諸説あります)。
どちらの呼び方も正解ですが、プロのソムリエやワイン業界ではエチケットと呼ぶことが多いです。ただ、一般的にはラベルと呼ばれる方が多いので、ここでは「ラベル」と表記して進めていきます。
ワインラベルの基本的な読み方
【ラベルに記載される情報】
- ワイン自体の名前
- 生産地/国
- 生産者名
- ぶどう品種
- ヴィンテージ(生産年)
- アルコール度数(%)
- 容量
- 元詰め先
- 格付け
生産地によって表記内容が変わるのは、それぞれの国によって定めるワイン法が違うためです。ぶどう品種を表記しなくてもよい地域もあれば、ヴィンテージ表記をしなくてもよいワインもあります。
今回は「新世界のラベル」と「旧世界のラベル」、そして「日本ワインのラベル」の3つに絞って読み方を解説していきます。
そもそも「新世界」「旧世界」とは?
これらに正確な定義はありませんが、旧世界は古くから伝統あるワイン造りを行っていたヨーロッパ諸国のことを指し、具体的にはフランスをはじめとしてイタリア、ドイツ、スペインなどが該当します。
一方、新世界のカテゴリに入るのは、旧世界の国々に比べてワイン造りの歴史が浅い国。南米のチリ、アルゼンチンをはじめとしてアメリカ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、日本などの国々が該当します。
かつては「新世界のワインは安価であまり美味しくない」という風潮がありましたが、近年では素晴らしい成長を遂げている新世界。単一ぶどうで造り、既存の伝統に縛られずに新しい技術を入れていく傾向があります。
また、コスパが高いワインが多いのも新世界の特徴です。生産量も増え、技術や土壌共に高品質なワインを造っているので、ニューワールドのワイン愛好家も世界中にいます。
新世界のワインラベルの読み方
①ワイン名
「120」
②品質補足用語
「Reserva Especial」
③ぶどう品種
「CABERNET SAUVIGNON」
④生産地
「VALLE CENTRAL CHILE」
⑤ヴィンテージ(生産年)
「2018」
⑥ワイナリー名
「Santa Rita」
と書いてあります。新世界のラベルはシンプルで見やすいものが多いので、順番に見ていきましょう。
①120
ワインの名前で、スペイン語で「シェントベインティ」と読みます。
②Reserva Especial
こちらは品質を補足する用語ですが、記載義務はないので、書かれていないことも多いです。
③CABERNET SAUVIGNON
赤ワインの王道ぶどう品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」です。チリの場合は表示した品種が75%以上使われていなければなりません。
④VALLE CENTRAL CHILE
原産地呼称はチリでは「DO」(Denominacion de Origen)と呼ばれています。表示してあるエリアのぶどうが75%以上使われていることが条件です。
⑤2018年
生産された年です。
⑥Santa Rita
ワイナリーの名前、または生産者の名前が入ることもあります。
その他「アルコール度数」と「容量」が表記されますが、デザインのバランスをとるために、表ラベルか裏ラベルに小さく表記されることが多いです。
旧世界のワインラベルの読み方
①ワイン名
「CHATEAU DUTERTRE」
②格付け
「GRAND CRU CLASSE EN 1855」
③生産地
「MARGAUX」
④ヴィンテージ(生産年)
「2014」
⑤元詰め先
「MIS EN BOUTEILLE AU CHATEAU」
と書いてあるのが分かるかと思います。順番に見ていきましょう。
①CHATEAU DUTERTRE(シャトー・デュテルトル)
CHATEAUは「シャトー」と読み、主に生産者のことを指しています。ボルドーでは生産者の名前がそのままワインの名前になっていることが多いです。
②GRAND CRU CLASSE EN 1855
ここがフランスワインの難しいところなのですが、フランスワインには「格付け」の概念があります。
1855年に、メドック地区で約60のシャトーが第1級から第5級まで格付けされ、この格付けに選ばれたシャトーだけがこのようにグラン・クリュと名乗ることができるのです。
ただ、ボルドーだけでなく、地方によってグラン・クリュの概念の違いがあるので注意が必要です。また、近年では格付け対象になっていないシャトーでも高い評価を得ているワインがたくさんあるため、一概に「グラン・クリュ」の表記があればいいワイン、ともいい切れないのが現状です。
③MARGAUX
こちらはボルドーの中でも5大シャトーと言われているうちのひとつ、「マルゴー」です。このワインはマルゴーの5級ラインですが、ラベルに表記されていないので、ある程度のフランスワインに対する事前知識が必要になります。
④2014
こちらは新世界と同様、生産された年を表記しています。
⑤MIS EN BOUTEILLE AU CHATEAU
シャトー元詰め、という意味です。この表記をすることによって、自社畑で栽培したぶどうで醸造して、瓶詰めまで行っていることの証明になります。
また、ブルゴーニュやその他の地方でもそれぞれの格付けや規律が決まっているので、フランスのラベルはそれらの知識が全く無いままラベルを読み解くのは難しいです。
〈旧世界ワインに品種表記がない理由〉
旧世界のワイン(特にフランス)は、複数のぶどう品種を混ぜて造られることが多いため、ぶどう品種の表記がないラベルが多く存在します。
また、産地によって栽培する品種がおおよそ決まっているため、ぶどう品種の表記義務がないのも理由です。この場合、生産地の記載はあるので、その産地で栽培されているぶどうがどんな品種なのかを事前に把握しておかなければなりません。
そういった理由から、それなりにワインの知識がある方でないとラベルからフランスワインを読み解くのは難しいので、初心者の方にはぶどう品種が書かれている新世界ワインのほうがおすすめです。
日本ワインのワインラベルの読み方
今までは日本のワインに関する規律は海外に比べるとあいまいで、厳格に決められていませんでしたが、2018年から日本のワインのラベル表示のルールが変わりました。
国産ワインは、海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を使って、日本国内で製造したワインのことを指し、日本ワインは国内製造かつ国産ぶどうのみが原料で、以下の条件を満たせば、地名、品種名、収穫年をラベルに表示できるようになりました。
地名
その地域で栽培されたぶどうを85%以上使用し、醸造地がその産地内にあること。
収穫地名
同一の地域のぶどうを85%以上使用していること。
収穫年
表記した年に収穫したぶどうを85%以上使用していること。
ぶどう品種
・単一品種
そのぶどう品種を85%以上使用していること。
・2品種
2品種の合計が85%以上であること。表記順は使用割合の大きさで決まる。
・3品種以上
表示する品種を合計85%以上使用していること。表記順は使用割合の大きさで決まる。
これらを踏まえて日本ワインのラベルを見ていきましょう。
●北海道の余市で栽培されている
●ツヴァイゲルトレーベというぶどうを85%以上使っていて
●かつ醸造も余市でされていて
●2018年に収穫されているぶどうを
●85%以上使っている日本ワイン
ということになります。もちろん母国語というのもありますが、フランスのラベルに比べるとスッキリしていて分かりやすいラベルが多いです。
上の大きな星のマークと「GRANDE POLAIRE」はワインのブランド名です。
ワインラベルをマスターしてワイン通になろう
最近ではデザイン性を重視して、表示義務がある必要最低限の情報だけを記載しているワインも増えています。近年トレンドになっている「自然派ワイン」や「ヴァン・ナチュール」のラベルはデザイン重視のオシャレなラベルが多く、気難しく考えずに直感でセレクトする楽しみも選択肢のひとつになってきています。
それでもラベルを正しく読むことによって、より一層ワインに詳しくなれるのは間違いありません。ぜひワインをセレクトする際の参考にしてみてください。
※記事の情報は2020年9月30日時点のものです。
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