地酒専門店に聞く! カップ酒の魅力とおすすめ9銘柄+αをご紹介
飲みきりサイズで気軽に楽しめる日本酒として人気の「カップ酒(ワンカップ)」は、日本酒好きの方にはもちろん、日本酒初心者や若い方にもおすすめしたい魅力たっぷりのお酒です。全国のカップ酒を120種類以上取り揃える地酒専門店「味ノマチダヤ」の番頭・印丸さんに、カップ酒の魅力と今おすすめの銘柄9種類を教えていただきました!
お気に入りの日本酒に出会えるカップ酒
この方にお聞きしました
印丸佐知雄(いんまる さちお)さん
地酒に特化した日本酒専門店「味ノマチダヤ」で番頭を務め、日本酒の仕入れや日本酒業界の活性化を図る企画などを行う。「日本酒をもっと知ってもらいたい、カジュアルに楽しんでもらいたい」という思いから蔵元さんに直接依頼し、地酒のカップ酒を数多く企画・商品化してきた。
そもそもカップ酒とはどんな日本酒?
印丸 カップ酒は名前の通りガラスコップに詰められている日本酒のことで、そのほとんどは180ミリリットル(1合)くらいの量で作られています。
カップ酒に詰められているお酒は基本的には一升瓶と同じお酒が入っていて、味も新鮮さもまったく変わりません。ただ、蔵元さんによっては同じ名前の銘柄でも中身はカップ酒限定のブレンドで造られていたり、季節限定酒をカップ酒のために詰めてもらったり、ということが時々あるので、実はカップ酒でしか飲めない貴重な味も販売されています。
また、今では全国各地の地酒カップがたくさん売られていますが、20年くらい前までは種類もあまり多くなく、詰められている日本酒も普通酒や本醸造のものがほとんどだったんです。2004年ころに取引先の立ち飲みバル店から『日本酒をカップ酒で置きたい』と依頼されたことがきっかけで、それまで少なかった地酒のカップ酒を全国の蔵元さんにお願いして商品化に進め、少しずつ増えていったという経緯があります。
地酒専門店の番頭に聞く、カップ酒の魅力
印丸 まず一番は、様々な種類の日本酒を少量ずつ飲み比べできるところです。好きな銘柄が決まっている方やコスパを重視する方なら一升瓶のほうがメリットはあると思いますが、その日の気分で気軽にお酒を楽しみたい方にはカップ酒はとてもいいですよね。たとえば一人暮らしで日本酒を買う場合、一升瓶だと好みじゃなかったり飲みきれなかったりと色々リスクが大きいですが、カップ酒ならトライアル的に銘柄の味を知れるので、失敗が少ないところはカップ酒の強みだと思います。
あとはカップ酒だと少量ずつたくさんの日本酒の味を知れるので、おのずとお酒の経験値が上がるのも嬉しい点の1つだと思います。日本酒は飲むごとに味覚の目盛りが刻まれていくので、私はこれを『ベロメーター』と呼んでいます。
ベロメーターに目盛りを刻んでいくと自分の好みや日本酒の良し悪しがわかるようになり、さらには前まで苦手だと思っていたお酒も経験を積むことでとたんにおいしく感じられるようになることもあります。日本酒の美味しさや奥深さを知りたい人には、カップ酒はうってつけのお酒だと思います。
種類がたくさんあるのでどれにするか迷われると思いますが、カップ酒は値段もお手頃で試しやすいので、まずは難しく考えずフィーリングで選んでみてください。最近は可愛いラベルやユニークなものも増えたので、ジャケ買いみたいな買い方もありだと思います。そんなフットワークの軽さもカップ酒の魅力です。
カップ酒のおいしい飲み方
印丸 カップ酒に限ったことではないですが、日本酒は飲み方によって味わいがガラッと変わるので、色々な飲み方を試して自分の好みの味を見つけていただくのが一番だと思います。
日本酒は度数が高いから苦手だな、と思っている人でしたら、水割りやソーダ割りにして自分がおいしいと思う度数に調整してもらえれば、きっと日本酒のイメージも変わるんじゃないでしょうか。
あとはこれから熱燗がおいしい季節がやってくるので、カップ酒の燗酒もぜひ試していただきたいです。カップ酒はお燗のしやすさも魅力で、フタをとってそのまま瓶ごと電子レンジで40秒~60秒くらい、もしくは55度設定でチンするだけなので、お燗用の道具がいらないのは手軽でいいですよ。ひと手間くわえてカップ酒にラップをかけてチンするか、または沸かしたお湯にフタを半分開けたカップ酒をどぶ漬け燗にすれば、日本酒のいい香りが飛ばずによりおいしく飲めるのでオススメです!
日本酒にはタブーはないと思っているので、なにか割り材を使ったり氷を入れてロックにしたり、いろいろな方法を試してもっと日本酒に興味をもっていただけたらうれしいですね。
カップ酒の賞味期限と保管方法について
というのも日本酒は日光などの光に弱く、一升瓶は瓶の色が茶色や緑で遮光性が高いものが多いのに対して、カップ酒は透明瓶のものがほとんどです。なので、日が当たりやすいところに置いておくと液体の色がだんだん茶色くなっていって、熟成が早く進みます。
なるべく新鮮な状態を保ちたいなら、冷暗所で保管するようにしてください。また夏場だと気温の高さで熟成がより進みやすくなるので、冷蔵庫に入れていただくのがいいと思います。カップ酒によっては「要冷蔵」と書かれたものもあるのでラベルをよく読んで保管してください。
地酒専門店がおすすめする人気のカップ酒5銘柄を教えてもらいました
※紹介順は順不同です
■上喜元 純米吟醸(山形県)
内容量:180ml
税込価格:316円
原料:米、米麹
■超辛口 こなき純米(鳥取県)
内容量:180ml
税込価格:385円
原料:米、米麹
印丸さん
ゲゲゲの鬼太郎の子泣き爺がデザインされた「こなき純米」は、飲みごたえがあり雑味が残るオールドスタイルの超辛口です。このシリーズは他にも目玉の親父と鬼太郎、ねずみ男デザインのカップ酒がありまして、それぞれ異なる味わいで個性が出ていて面白いので、機会があれば飲み比べてみてください。
■貴 特別純米(山口県)
内容量:180ml
税込価格:316円
原料:米、米麹
印丸さん
蔵元の永山本家酒造場さんの特徴として、米の旨味をしっかりと引き出して酒造りをおこなうので、「貴(たか)」もキレのある味わいながら優しい米の甘みを感じられる仕上がりになっています。
■紀土 純米(和歌山県)
内容量:180ml
税込価格:255円
原料:米、米麹
印丸さん
鶴梅のリキュールシリーズが人気の平和酒造さんが十数年前に立ち上げた清酒ブランド「紀土(きっど)」です。メロンやバナナのような穏やかな香りとみずみずしいシャープな味わいを感じられると思います。
■豊盃 apples&dogs(青森県)
内容量:180ml
税込価格:364円
原料:米、米麹
印丸さん
お店オリジナルデザインの「豊盃(ほうはい)apples&dogs」は、地元では手に入らないからなのか青森からのご注文がとても多い商品(笑) 青りんごのようなフレッシュな香りと酸味、ほどよい甘みがある日本酒です。
今飲みたい! 旬のトレンドカップ酒4銘柄を教えてもらいます
印丸 ここ最近の流行りは、酸がしっかりある甘口の日本酒ですね。一口目からジューシーでフルーティな飲みやすいものがすごく人気が出ている印象です。そういうお酒は日本酒度が低いいわゆる甘口の酒が多く、ただ甘口なだけだと口の中にベタッと残ってしまうんですけど、最近のものは高めの酸を加えることで甘すぎずキレよくすっきりとした飲み口に仕上がっています。
\日本酒度とは? 酸度とは? 詳しくはこちら/
ほかに最近の流行りとしてはアルコール度数低めのものも増えてきました。今までの日本酒は17~18度くらいの原酒に割り水をして15~16度に落とすのが一般的なスタイルだったんですけど、最近のものは水を加えなくても元々14~15度程度まで度数を低くした原酒を醸造できる蔵が増えています。
度数の低い日本酒を醸造すると糖分やうま味が残りやすくなるので、昔ながらの日本酒とはまた違うおいしさの日本酒が次々出ていて日本酒業界はとても面白く進化しているんです。
■仙禽 モダン無垢(栃木県)
内容量:180ml
税込価格:385円
原料:米、米麹
印丸さん
鶴の頭をモチーフにしたラベルが印象的な仙禽(せんきん)の「モダン無垢」です。今回紹介する春夏版はスッキリとした酸の軽快な「モダン無垢」を、秋冬は味わい深い生酛造りの「クラシック無垢」という同ブランドの銘柄を、旬の食事に合うように詰めてもらっています。
■月の輪 無農薬米酒(岩手県)
内容量:180ml
税込価格:350円
原料:米、米麹
印丸さん
今年の春ころにようやく完成した「月の輪」は、ひょうたん徳利をモチーフに蔵元さんと一緒にデザインしました。女性杜氏が造るこのお酒は、カップ酒ではとても珍しい無農薬米のみで造られたお酒です。熟成感があって無農薬米の力強さを感じられるどっしりとした飲みごたえが特徴です。お燗にして飲むのがおすすめです。
■長珍 特別純米(愛知県)
内容量:180ml
税込価格:357円
原料:米、米麹
印丸さん
うっすら黄色みを帯びている「長珍(ちょうちん)」は、程よく熟成感があってまるでビターチョコレートのような深いコクが感じられます。55度くらいの飛び切り燗で飲んでいただいても、キリッと冷やしても、ソーダ割りでもおいしく飲めるお酒です。
■日高見 純米(宮城県)
内容量:180ml
税込価格:330円
原料:米、米麹
印丸さん
大の寿司好き、魚好きな社長が作った、寿司や刺し身によく合う日本酒「日高見(ひたかみ)」です。透明感がありつつ、芳醇な旨味も感じられる日本酒です。
【番外編】ほしとたきびカップ
印丸さん
こちらはキャンプ場限定で販売しているお店オリジナルデザインのカップ酒です。カップのデザインはこの2種類ですが、中の日本酒はその時々で違う銘柄を詰めている、一期一会がコンセプトのカップ酒です。キャンプ場で見つけたらぜひ買ってみてください。
編集部でさっそく飲み比べ。みんなのお気に入りはどれ?
編集部員F
地酒のプロにおすすめいただいたカップ酒9種類のうち、みなさんはどちらが気に入りましたか?
編集部員Y
私は「上喜元」と「こなき」が気に入ったなぁ。
どっちも全然違う個性を持った日本酒なんだけど、しっかりどっしり日本酒らしいうまさを味わえるところがよかった。
編集部員S
うん、「こなき」おいしいよね。どっしり重めな「こなき」ならカップ酒のサイズ感がちょうどいいかも。僕が一升瓶で買いたいくらい気に入ったのは「長珍」かなぁ。コクがあってしっかりした味わいだけど飽きることなく飲み続けられそうでいいよね。
編集部員E
「長珍」日本酒好きもそうじゃない人も、割と万人に好まれそうな味わいですよね、私も気に入りました。
私の一番は「仙禽」の冷やかな。冷酒だと酸味が強めに出て個性的だったけど、常温になると私的にはバランスの良いさっぱりした日本酒に感じられて美味しかったです。
編集部員J
僕は「貴」が気に入りました! 普段あまり日本酒を飲まないんですが、「貴」はまるで水のように透き通った爽やかな味わいで、アルコール感が強くなくて飲みやすかったです。
家飲みにぴったりのカップ酒を楽しんでみては
今回ご紹介した9種類以外にも、味ノマチダヤさんのオンラインショップでは常時120種類のカップ酒が1本から購入できます。家飲みに日本酒を取り入れてみたいとお考え中の方は、気になるカップ酒を試してみてはいかがでしょうか。
※ほしとたきびカップは取り扱いのあるキャンプ場のみの販売でオンラインショップでは購入いただけません。
※記事の情報は2021年10月20日時点のものです。
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印丸さん
フルーティさの中にお米の味わいがしっかりあるお酒で、リピーターも多い人気の銘柄「上喜元(じょうきげん)」です。このカップ酒のためにブレンドされた特別仕様の日本酒で、甘味と酸味のバランスのよさが特徴です。