実は白ワインの仲間! シェリーとはどんなお酒? その魅力をソムリエが解説します

日本ではシェリー酒とも呼ばれる「シェリー」は、実はワインの一種です。今回は、特徴的な製法でつくられ、辛口から極甘口までさまざまな味わいを持つ「シェリー」について、産地やタイプといった基礎知識から楽しみ方まで、ソムリエがわかりやすく解説します。

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シェリーとは?

シェリーは、スペイン・アンダルシア地方のヘレス周辺でつくられる酒精強化ワインで、日本では「シェリー酒」と呼ばれることもあります。

酒精強化ワインとは、醸造工程中にアルコールを添加することで、味にコクを持たせて保存性を高めたワインのことを指します。酒精強化ワインは別名「フォーティファイド・ワイン」とも呼ばれます。スペインのシェリーを筆頭に、ポルトガルのポート、マデイラと合わせて世界三大酒精強化ワイン(イタリアのマルサラを加えると世界四大酒精強化ワイン)と言われています。

シェリーの原産地呼称法における正式名称は「ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xerez-Sherry)」と言いますが、これはスペイン語、フランス語、英語でそれぞれ「ヘレス」を意味する地名を並べたものです。アルコール度数は15~22度前後で、辛口~極甘口までさまざまなタイプがあります。

シェリーの産地はどんなところ?

アンダルシア地方
シェリーの産地はスペイン南西部のアンダルシア地方にあり、ヘレス・デ・ラ・フロンテラとサンルカール・デ・バラメーダ、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアの3つの街でつくられています。いずれの産地も年間300日以上晴れが続く乾燥した気候で、保水力に優れた「アルバリサ」と呼ばれる真っ白な白亜質土壌が特徴です。この土壌は世界的にも珍しく、非常に特異性のある土壌と言えます。そしてシャンパーニュ同様、これらの地域でつくられたものだけをシェリーと呼ぶことができます。

シェリーのブドウ品種

シェリーは主に「パロミノ」という酸味と甘みが控えめの白ブドウ品種からつくられています。パロミノは、シェリー酒の産地として名高いヘレスのブドウ栽培面積の約95%を占めています。シェリーはパロミノのほか、「ペドロ・ヒメネス」、「モスカテル」といった品種も使われています。シェリーは品種をブレンドせず、それぞれ単一品種で仕上げるのが特徴です。以下にそれぞれの品種の特徴をまとめます。
白ブドウ
●パロミノ
パロミノはヘレスで栽培されているブドウの大部分(約95%)を占めています。果皮が薄く、粒が小さく、特徴的な香りもなく酸味は穏やかという特徴があり、ワインづくりに適しているとは言えませんが、シェリーづくりには適した品種です。パロミノ・フィノとパロミノ・デ・ヘレスの2品種があり、後者の方がレアで高品質だと言われています。スペイン以外だと、オーストラリアやカリフォルニアでも酒精強化ワイン用として栽培されています。

●ペドロ・ヒメネス
ペドロ・ヒメネスもパロミノと同様、香りが弱めのニュートラルな白ブドウ品種です。果皮が薄いため、太陽の熱を受けて糖度が上がりやすい傾向があります。天日干しでレーズン状にして糖度を極限まで高めてからつくられる極甘口のシェリーは、コーヒーやジャム、いちじく、デーツのようなアロマが感じられます。スペインのアンダルシア地方の他、ポルトガルのアレンテージョなど、温暖な気候の地域で栽培されている品種です。

●モスカテル(マスカット・オブ・アレクサンドリア)
世界中で栽培されているマスカット系ブドウの一種で、イタリアだと「モスカート」、ポルトガルでは「ムスカテル」、フランスでは「ミュスカ」と、各国によって名称が変わります。モスカテルは他のブドウと比べると干ばつに強いのが特徴で、ペドロ・ヒメネスと同様、甘口ワインのみ使用されています。

シェリーのつくり方、独自のブレンド熟成法「ソレラ・システム」とは?

樽を収穫年順に3〜4層に積み上げる
シェリーの醸造を語る上で外せないのが、シェリー独自のブレンド熟成法「ソレラ・システム」です。

ソレラ・システムとは、複数の収穫年のワインを順番にブレンドし、樽を収穫年順に3〜4層に積み上げ、常に最下段の樽からワインを引き出し、その分上の段の樽から補充していくスタイルです。このつぎ足し作業を「ロシオ」と言い、一番下の樽は「ソレラ」、2番目の樽は「クリアデラ」と呼ばれます。最上段の若いワインが少しずつ最下段の樽に至ることで、徐々に熟成させていきます。これを導入することで、収穫年の違うワインがブレンドされ、毎年安定した品質のシェリーを生み出すことができます。

また、シェリーを熟成させた樽はウイスキー熟成にも利用され、「シェリーカスク」としても価値が高いことでも知られています。

シェリーにはどんな種類がある?

シェリーは使用されるぶどう品種や醸造方法、熟成方法によって、辛口から極甘口まで多様な味わいに仕上がります。今回はシェリーの代表的な種類について、それぞれ解説していきます。

●フィノ(Fino)
淡い金色の色調で、アーモンドのような香りが特徴。ドライな辛口で軽めの口当たりで、食前酒に最適。

●マンサニーリャ(Manzanilla)
フィノに似ていますが、マンサニーリャはサンルカール・デ・バラメーダのボデガで熟成されるものを指します。カモミールのような華やかなアロマが特徴で、若干の塩気を感じる傾向があります。

●アモンティリャード(Amontillado)
フィノとオロロソの中間的なタイプ。フィノ(またはマンサニーリャ)の段階を経て、第二段階の酸化熟成をしたワイン。繊細でシャープな香りが特徴です。

●オロロソ(Oloroso)
オロロソは、スペイン語で「匂い」を意味する「オロール」に由来しています。色調は琥珀色からマホガニー色で、フロールが形成されないため、酸化熟成が楽しめるタイプです。木樽やナッツ、胡桃やヘーゼルナッツのような華やかなアロマが特徴です。

●クリーム(Cream)
オロロソをベースにしてつくられ、濃いマホガニーの色調になります。木樽やレーズンを思わせる深みのある香りがあり、なめらかな口当たりと、やや重めで甘い飲み口になるのが特徴です。

●モスカテル(Moscatel)
モスカテル種のぶどうを干しぶどう状にしたものからつくられる甘口のシェリーです。マスカット特有の甘やかな香りがあり、味わいはフレッシュさと軽やかさを備えた甘みがあります。

●ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximenez)
ペドロ・ヒメネス種のぶどうを干しぶどう状にしたものからつくられる甘口のシェリーです。なめらかな口当たりで、食後酒としても楽しめます。

シェリーの楽しみ方は?

シェリー酒とチーズ
シェリーはドライな辛口から極甘口まで幅広い味わいがあるので、多様な楽しみ方があります。一般的には食前酒として楽しまれることが多いですが、辛口のタイプは食中酒としても合わせられます。たとえば、フィノやマンサニーリャは、甲殻類や魚介類を使った冷菜やチーズなどと相性がよいですし、オロロソのようなナッツ香が感じられるタイプは、燻製したチーズや肉の煮込み料理などと合わせられます。

また、モスカテルやペドロ・ヒメネスといった甘口のタイプは、濃厚なアイスクリームやフォンダンショコラ、青かびのチーズなどと合わせて楽しめるので、食後のデザートのお供にも最適です。

シェリーの資格「ベネンシアドール」とは?

ベネンシアドールとは、シェリーの資格、またはその資格保持者のことを指します。ベネンシアドールの資格は、シェリーに関する詳しい知識と、「ベネンシア」と呼ばれる細長いひしゃくを巧みに使って樽からグラスに注ぐ技術を持つことの証明になります。試験内容は1次が筆記、2次が筆記・テイスティング・実技となっています。近年の試験の様子を見ても、合格率は10%前後と狭き門です。

知れば知るほど奥が深いシェリーを、ぜひお試しあれ!

シェリーは食前酒や食後酒として単体で楽しまれることが多いイメージですが、実は味わいによってはさまざまな食材と合わせられます。また、紀元前からつくられていた伝統的なお酒としての魅力もあります。日本だとまだまだ知られていないシェリーですが、ぜひいろいろ試してみてはいかがでしょうか。

※記事の情報は2024年4月19日時点のものです。
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