ナチュラルワインとはどんなもの? その魅力や特徴をソムリエが解説します!

ここ数年ブームとも言われ、もはや日本でも定着してきた「ナチュラルワイン」。定義が幅広いため、実はいまいちどんなワインなのかわからないという方も多いかもしれません。この記事では、ナチュラルワインの基本情報から、自然派ワイン、ビオワインとの違い、おすすめの商品まで、ソムリエがわかりやすく解説します。

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ナチュラルワインとは?

ナチュラルワインとは、一般的には「限りなく自然につくった(人為的にコントロールをしていない)ワイン、または化学肥料や化学薬品を使っていないワイン」 を指します。ただし世界基準の定義はなく、あくまでもつくり手や飲み手によって解釈に幅があります。

また、日本ではナチュラルワイン以外にも「自然派ワイン」「ヴァン・ナチュール」「ビオワイン」「オーガニックワイン」と呼ばれるワインがあるため、混同されがちです。これらの違いについては、以下で解説していきます。

ナチュラルワインの魅力は?

ブドウ栽培
化学肥料や化学薬品を使わずにつくることそのものが、ナチュラルワインの目的ではありません。そうして生まれた味わいの中に、ブドウ本来のおいしさや、栽培された土地のテロワール(風土)、生産者の哲学や理念といった人となりが感じられることこそが、ナチュラルワインの魅力です。

また、「サスティナブル」や「エコ」、「エシカル」、「SDGs」への関心が高まっている昨今、消費者の選択意志も変わりつつあります。「自然にやさしいつくり方を体現している」という面でも、ナチュラルワインを魅力に感じる人が増えています。

ナチュラルワインと自然派ワインの違いは?

こちらは単に英語か日本語かの違いであり、英語の「Natural Wine(ナチュラルワイン)」が、日本語では「自然派ワイン」になります。

また、フランス語では「Vin Nature(ヴァン・ナチュール)」とも呼ばれます。たまにそれぞれの言語が混じって「ナチュールワイン」や「自然派ナチュール」といった誤用を聞くこともありますが、これらは一般的には正しい言い方ではありません。もちろんニュアンスは伝わるかもしれませんが、「ナチュラルワイン」「自然派ワイン」「ヴァン・ナチュール」のいずれかで覚えておくのがよいでしょう。

ナチュラルワインとビオワイン、オーガニックワインの違いは?

ナチュラルワインと混同されがちなのが「ビオワイン」や「オーガニックワイン」です。

ビオワインやオーガニックワインには、化学肥料や農薬を使わずに栽培したぶどうが使われますが、添加物をはじめとした人為的なコントロールをして醸造されているのが特徴です。また、ビオやオーガニックは世界と日本で認証基準が異なるため、販売あるいは提供側によっても見解が変わります。

一方で、前述した「ナチュラルワイン、自然派ワイン、ヴァン・ナチュール」と呼ばれるワインは、地球環境への配慮、そして自然との共生を目的として化学肥料や農薬を使用せずにぶどうを栽培すること、そして醸造にもなるべく人の手を加えないことが条件になります。

具体的には培養酵母でなく野生酵母で発酵させるなど、できる限り自然の力を引き出す方法を取っています。栽培や醸造の方法については以下で解説します。

ナチュラルワインのつくり方

ブドウ
前述したように、ナチュラルワインの定義は世界共通ではっきりしないため、どこまでを「ナチュラル」と表現するかは生産者の理念にもよります。

ナチュラルワインをつくるには自然栽培のぶどうを使うのが基本ですが、自然栽培といってもさまざまな農法があります。代表的なのは「ビオロジック農法」、「ビオディナミ農法」、「リュット・レゾネ」で、それらの違いは以下の通りです。

●ビオロジック農法
除草剤や殺虫剤といった農薬を使わず、肥料も化学肥料ではなく有機肥料を使うのが特徴。EUの規定では有機農法に転換した後、3年以上たたないとビオロジックとは認められないと決められています。ビオロジックには人の干渉を最小限に抑えた「自然農法」や、水やりを意図的にコントロールすることで乾燥状態を保つ「ドライファーミング」、農地を耕さずにありのままを保つ「不耕起栽培」など、さまざまなアプローチがあります。

●ビオディナミ農法
ビオロジック農法の中の一つに「ビオディナミ」があります。ビオディナミはドイツやオーストリアで活躍した学者、ルドルフ・シュタイナーが提唱した理論に基づいて生まれた農法です。土壌や生物だけでなく、天体の動きまでも反映した栽培方法で、畑を限りなく自然に近づけるため、月や惑星の動きとぶどうの成長を調和させることを重要視しています。土壌やぶどうの木本来が持つ力を最大限に発揮させるため、非常に手間のかかる栽培方法です。

●リュット・レゾネ
リュット・レゾネは2004年にフランスで導入された「減農薬農法」です。‟農薬や化学肥料をできるだけ使用しない方が自然にとって望ましい“という考え方はビオロジックと共通していますが、無農薬栽培は病気や害虫による被害といった多くのリスクが伴います。そのため、必要なときにだけ最低限の農薬や化学肥料を使用するというのがリュット・レゾネです。

また、ナチュラルワインの醸造において重要なのは、「野生酵母」と「亜硫酸」です。ナチュラルワインは「培養酵母」ではなく、醸造所や畑、ぶどうの果皮にもともとついている自然の酵母を使用します。酸化防止剤として使用する亜硫酸を使わない、もしくは最小限に抑えることも重要です。本来亜硫酸は発酵のコントロールや、バクテリア汚染を抑えるために使われるため、亜硫酸を使わない醸造はリスクが高いと言われていますが、その分繊細な味わいが表現できるようになります。

ナチュラルワインの保存方法は?

冷暗所で横置き
保存方法については一般的なワインとの大きな違いはなく、冷暗所で横置きするのがベターです。ワインセラーがあれば間違いありませんが、お持ちでない場合、特に夏季は冷蔵庫での保存をおすすめします。

ナチュラルワインの澱(おり)や濁りは静かに保管すれば底に沈むので、抜栓する際は揺らさないように慎重に開けるようにしましょう。澱や濁りを混ぜて飲むのもナチュラルワインの醍醐味ですが、まずは上澄みのクリーンな状態で楽しみ、半分ほどになってきたら澱を混ぜて飲むと2度楽しめるのでおすすめです。

また、ナチュラルワインは一般的なワインと比べると抜栓後の酸化や劣化が進みやすい傾向にあります。ワイン保存器具のバキュバンなどで瓶内の空気を抜くことはもちろんですが、2-3日で早めに飲み切ることをおすすめします。

ナチュラルワインは二日酔いしにくいって本当?

ナチュラルワインは亜硫酸無添加だから二日酔いしない、と聞いたことはありませんか?

筆者もなんとなくそう感じることもあるのですが、これに科学的な根拠はありません。やはりワインと同量の水を飲むことや、すきっ腹で飲まないこと、食事と一緒にバランスよく楽しむことが重要です。ナチュラルワインは口当たりがやさしく料理との相性もよいことから、ついつい飲みすぎてしまいがちなので注意が必要です。

ナチュラルワインの味わいは?

太陽にワイングラスをかざす
ナチュラルワインは、生産地や使っているぶどうが同じでも、つくり手によって味わいが大きく変わります。産地の土壌や収穫された年の天候条件によって、計算された思い通りの風味になるとは限らない部分も含めて、新しい発見や感動に出会えるのがナチュラルワインの魅力です。

染み渡るようなうまみが感じられたり、澱が入って濁ったりしているナチュラルワインは、個性がありつつも食事とも非常に好相性。和食やエスニック、中華など、ジャンルを問わずに寄り添うことができるのも人気の理由の一つと言えます。

初心者におすすめのナチュラルワインは?

イタリアやフランス、ドイツといったヨーロッパ諸国をはじめ、カリフォルニアや日本でも多くのナチュラルワインがつくられています。

泡、白、オレンジ、ロゼ、赤と多種多様ですが、エントリークラスの方に親しみやすいものとしては、まずは微発泡の白ワインをおすすめします。クセが少なく、やさしいバブルで飲みやすいので、アペロや食前酒にも最適です。

例えば、イタリアのエミリア=ロマーニャのつくり手「イル・ファルネート」は果実味と酸のバランスがよく、質の高いナチュラルワインを数多くリリースしています。

中でもイル・ファルネートの微発泡ワイン「フリザン・ビアンコ」はフルーツサラダや揚げ物、魚料理などとも合わせやすいので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。カジュアルでキャッチーなエチケットも印象的で、いろんなシリーズを買い揃えてみたくなるかもしれません。

『フリザン・ビアンコ 2022 / イル・ファルネート』
生産者:イル・ファルネート
生産地:イタリア(エミリア=ロマーニャ)
品種:スペルゴラ
タイプ:白微泡
容量:750ml

 

まとめ

農業技術やITを駆使して生産されるワインも多くありますが、地球にも人にも優しく、つくり手の思いがこもったワインをエシカルな視点で選ぶ傾向は世界的にも年々高まっています。

ナチュラルワインはもはや流行り廃りのあるものではなく、一つのジャンルとして定着してきているので、ぜひさまざまな産地のワインを飲んで、生産地の空気やつくり手の思いを感じてみてはいかがでしょうか。

※記事の情報は2024年1月31日時点のものです。
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