【ゆる燗コンビの燗酒サミット】極寒名古屋のとある会議室で秘密の会合が。

列島が記録的寒波に見舞われた2月の半ば。名古屋の街にも冷たい風が吹きまくり寒いのなんの。そんななか、酒問屋イズミックの会議室に二人のバイヤーの姿が。机の上には業務用の燗床と日本酒が数本。これから開催されるのは、二人だけの燗酒サミット。燗にオススメの酒と燗酒の魅力を語り合いました。

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バイヤー藤井青田の燗酒サミット

サミット参加者は、イズミックの藤井信宏さん(商品政策部:利き酒師・焼酎きき酒師)と、イエノミスタイル・バイヤーズレポートでおなじみ青田俊一さん(Web事業部:ソムリエ)のぬる燗コンビ。部類の燗酒好きのお二人による燗酒談義、ゆるゆるとお楽しみください!

燗床にちろりで準備万端

燗床にちろりで準備万端
電気でお湯をあたためる燗床の温度は、72度。燗の容器は「ちろり」です。これで1分半ほど燗をつけると、飲みごろのぬる燗に。準備万端整いまして、最初に燗つけるのは……?
藤井:まずは、このへんから。

青田:オーソドックスに行きますか。

オーソドックスな本醸造を燗で飲む【吉乃川 杜氏の晩酌 本醸造(新潟県)】

オーソドックスな本醸造を燗で飲む【吉乃川 杜氏の晩酌 本醸造(新潟県)】
藤井セレクトの最初の一本は本醸造。
藤井:これは、去年リニューアルしたばっかりのお酒。味わいは、そんなに甘くはないですね。酒米は五百万石です。旨味がほどほどで、最後にきれいにキレていく感じが、料理に合わせるのには良い。やっぱり、こういう本醸造ぐらいが一番燗に向いている。温度は30度ぐらいかな。

青田:それぐらいが、「化けさせる」には一番いいですね。
吉乃川をちろりに注いで、お湯にちゃぽん…。
吉乃川をちろりに注いで、お湯にちゃぽん…。
ほどなくして、お燗が整いましたようで。さっそくぬる燗を、利き猪口で味わってみます。

青田:んー、柔らかい

藤井:ちょっとぬるめだけど調度いい感じだね。これぐらいが料理に合わせるにはいい。

青田:あ~、うまい。

藤井:燗をつけると、甘み、旨味がちょっとすっきりしてくるね。本来のキレも楽しめる。酒の甘みも感じて、これぐらいが良いね。あまり主張しすぎていないところが良い。

青田:これは、毎日晩御飯のときに飲みたいですね。これにおでんがあったらもう、最高ですね。気取らない感じで、オーソドックスにゆるゆると。
気取らない感じで、オーソドックスにゆるゆると。

純米吟醸に燗をつける冒険【醉心 純米吟醸(広島県)】

純米吟醸に燗をつける冒険【醉心 純米吟醸(広島県)】
藤井:これは、有名な日本画家の横山大観さんが大好きだったお酒だそうです。画料の代わりにこの醉心をもらっていたという逸話があります。ただ、横山大観さんは醉心の蔵には一回も行ったことがないらしいんです。酒だけもらってたという(笑)。嫌味のない吟醸酒です。今回は、この純米吟醸を燗にするという冒険をしてみます。

これもぬる燗で……。さて、お味のほうは?

青田:
純米吟醸を燗にするなんて、ぜいたくですね。

藤井:これもぬるめでいい感じだね。

青田:さっきと全然ちがいますね。

藤井:これはすごく膨らみがある。ちょっとぬるめがちょうどいい。やっぱり華やかだね。華やかな香りと膨らみのある味。さっきの吉乃川よりもずいぶんあとくちの余韻が長い。

青田:燗しても吟醸香がいやみにならない。

藤井:ふだんは、純米吟醸を燗にする機会はないんだけど…

青田:いい感じに吟醸香が残っている

藤井:燗すると香りが飛んじゃうことが多いけど、これはいい感じで残っている。いまちょっとひやで飲んでみたけど、これは、ぬる燗のほうがいいね。

青田:余韻に、華やかさがのこりますね。

燗に一押し【山廃純米 末廣(福島県)】

燗に一押し【山廃純米 末廣(福島県)】
藤井:これが今日の一押し。ここの杜氏さんは現代の名工に選ばれていますね。自然の乳酸菌を使う、山廃造りが上手な蔵元さんです。お酒の旨味をしっかり感じられて、お酒の醍醐味が丸々味わえます。

藤井さん一押しの山廃純米酒。ぬる燗のお味はどうよ。

青田:
くぅー、うまいですね。

藤井:これは旨味が押し寄せてくる感じ。

青田:ちょっとこってりした料理で飲みたいですね。ポイントは山廃ですかね。

藤井:山廃は、旨味がすごく出る。幅も出るし。

青田:うーん、北国らしい。

藤井:フルボディ! 旨味の広がり具合がすごい。燗をするとじわーっとくる。

青田:クセのあるつまみで、旨味と旨味をどーん、とぶつけ合わせたいですね。ザッツ珍味が合うんじゃないでしょうか。

藤井:味噌おでんとか、がっつりした味付けがいいね。

青田:うまいですね、うまい。どっしりして力強い。これなら、もっと熱くしてもいいんじゃないスかね?

藤井:よ、よし、もっと熱くしよう!(鼻息…)

さて、さらに燗つけて……50度の熱燗できました!
 
さて、さらに燗つけて……50度の熱燗できました!
青田:どれどれ。

藤井:おいしいなあ。

青田:全然変わりますね、でもうまい。ちょっと柔らかくなった。

藤井:結構キレもでてるね。

青田:キレいいっすね。この酒、人肌から熱燗まで、温度帯も幅広く楽しめますね。

有機の純米酒を燗で飲む【千代菊 有機純米酒  光琳(岐阜県)】

有機の純米酒を燗で飲む【千代菊 有機純米酒  光琳(岐阜県)】
藤井:有機栽培のお米にこだわったお酒です。清酒の中では、この「BIO(有機加工食品の国際認定)」をとるのは珍しいんです。手間暇かけて有機栽培のお米を作り、じっくり醸したお酒です。

お米にこだわったお酒の燗の味わいは、いかに?

青田:
お、今までと全然違うのがきた。

藤井:んーん。甘みは多くなくて、酸がとてもいい感じでキレていく。

青田:水が少しかたい感じ。ピリっとしますね。

藤井:ちょっと苦味が出てきたかも。

青田:でも、これはこれで、いいいかも。量が飲める酒かな。脂ののった中トロあたりで飲みたいですね。さっぱりと脂を流してくれそう。有機栽培の米は粒が揃わないので、それを使ってきれいな酒をつくるのは難しいんですよね。これは結構イケる。

藤井:燗をつけることによって、キレがより強調されてより美味しくなったね。

青田:すーっと入ってきて、すっといなくなる感じ。

本日の燗酒No.1は?

青田:僕は吉乃川。燗酒はこうあるべき、っていう感じで、エンドレスで飲みたくなる。

藤井:酒中心で考えるなら末広。料理との相性が一番いいのは吉乃川。ちょっと違う感じが欲しい人には醉心がオススメですね。

人はなぜ日本酒を燗するのか?

青田:夏でも大皿料理の居酒屋なんかだとついつい燗酒頼みたくなりますね。作り置きの冷えたつまみには温かいのが欲しくなる。

藤井:燗酒が良いのは、体にやさしいっていうところかな。結構、お酒で失敗する人に多いのは、気がついたら飲みすぎて酔っぱらっていた、というやつ。冷やで飲んでいると、飲んでから酔うまでにタイムラグがあるので、そうなっちゃう。

青田:おやじの小言ですね(笑)、あとで効いてくるっていうやつですね。

藤井:燗酒だと、アルコールが吸収されるのが早くて、酔いもすぐ感じて飲む量を調整しやすい。

青田:確かに。

藤井:酒そのまんまを温めて飲むのは日本酒だけなんだけど、昔むかしの人たちは、おもてなしの心で燗をつけていたはず。ねぎらいの気持ちであったかいものを飲んでもらった。そういうやさしい心遣いが、燗酒にはあるよね。

青田:私は燗すると量が飲めちゃう。下手すると5時間でも6時間でも(笑)。それに、燗したお酒はどんな料理にも合うと思うんですよ。

藤井:確かにね。燗つけると甘みとか旨味がつよくなるので、料理との相乗効果が生まれやすくなる。

青田:白飯のかわりに熱燗がある、みたいな(笑)。

藤井:(笑)

青田:私のオススメは、チロリで燗つけて、飲んで減ったら、その分冷酒を足してまた温める…自転車操業方式が好き。

藤井:私は、片口(かたくち)に入れてレンジでチン、というのもよくやる。ただ、片口は冷めやすい。だんだん冷えていく味の変化を楽しみたいなら、おすすめですね。

最後はカップ酒

最後は、究極のお気楽燗酒。カップ酒をそのままちゃぽんと燗つけちゃいました。

青田:
なんだかんだ言って、カップ酒、最強ですよ。お湯にそのままどぼんと。こういう、商品名とかがカップにプリントしてある瓶は、お湯にいれてもラベルがはがれてこないので良いですよね。かわいいの多いし。

藤井:地方に行くとカップ酒買いたくなる。いろいろ飲みたいから。だからどんどん集まってきちゃう。

藤井:そろそろいいかな。

青田:どれどれ。

藤井青田:かんぱーい!

青田:屋台のおでん屋気分っすね。

藤井:うん。そうそう。


午後の4時から始まった二人だけの燗酒サミットももうそろそろお開きです。ほろ酔い気分、窓の外もいい感じにたそがれてきましたよ。では、みなさん、まだまだ寒いこの季節、素敵な燗酒ライフを!
かんぱーい!
※記事の情報は2018年2月23日時点のものです。
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