チリチリがおいしい本格焼酎ソーダ割
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
いも、麦、米、そば、黒糖など原料素材の風味を楽しめる本格焼酎は、日本独特の蒸留酒です。ポピュラーな飲み方はお湯割りやオンザロックですが、最近、注目されているのがソーダ割。ソーダを常備する家庭が多くなり、強炭酸など無糖炭酸の商品が増えて、ハイボール感覚で本格焼酎を割ってみたら、これがなんともうまかったというところでしょう。今回は本格焼酎のおいしいソーダ割をご案内します。
ソーダを週に4日以上飲む人が4割
酒文化研究所がお酒好きモニターを対象におこなう「酒飲みのミカタ」 でソーダの利用について質問したところ、「ほとんど毎日飲む」方は24%、「週に4~5日」が16%と日常的にソーダを飲んでいる方が4割にのぼりました。ウイスキーハイボールが大ヒットしたのがおよそ10年前、私自身がそうですが、それ以前と比べると家庭でソーダを飲む機会が格段に増えたかたも多いのではないでしょうか。
ソーダで割る酒のトップはウイスキー 2位に本格焼酎
使い方のトップは「お酒を割る」で、もっとも多かったのが「ウイスキー・バーボン」、続いて「本格焼酎」僅差で「甲類焼酎」「ジン」と続きました。ウイスキーハイボールが人気なのはよくわかりますが、お湯割りやオンザロックで飲まれることが多かった本格焼酎が2位に入ったのはちょっと意外でした。焼酎をソーダで割るチューハイは甲類焼酎を使うことが多いですし、居酒屋などでも本格焼酎のソーダ割セットを定番メニュー化しているところは、まだわずかです。
本格焼酎はいもや麦など原料素材によって香りや味が異なります。華やかで独特の香りのいも焼酎、香ばしく甘い香りが特徴の麦焼酎、減圧蒸留という技術で軽やかに仕上げたものには柑橘系のニュアンスのある麦や米の焼酎もあります。
本格焼酎をソーダで割ると炭酸ガスの刺激でさわやかさが加わります。同時に炭酸ガスと一緒に焼酎の香気成分が発散されて香りが立ちます。炭火で焼いた焼き鳥の焦げた感じに、本格焼酎のソーダ割がよく合うのは、香りの相性のよさと油をさっぱりと流してくれるからでしょう。
おいしい氷でしっかり冷やして おすすめは1対1
本格焼酎のソーダ割をおいしくつくるポイントは3つです。
① おいしい氷をたっぷり
② 焼酎を注いでステアしてよく冷やす
③ 冷えたガス圧の強いソーダをゆっくり注ぐ
氷はロックアイスを使った方が圧倒的においしくなります。冷蔵庫でつくった氷が悪いわけではありませんが、短時間で凍らせるため早く溶けやすく、ソーダ割が薄まってしまいがちです。市販のロックアイスはゆっくり凍らせて透明度が高いので、溶けるのも遅く見た目もおいしそうです。
ロックアイスをグラスにたっぷり詰めて、焼酎を加えてクルクルとステアしてしっかり冷やします。焼酎が氷と同じ温度になると、そこから氷はあまり解けません。また、溶けた氷でアルコール度数は2~3割下がって、25度のものは20度弱になっています。
そこに良く冷えたソーダをグラスに沿わせてゆっくり注ぎます。焼酎との割合は好みですが、個人的には1対1くらいがおいしいと思います。これ以上薄めると焼酎の味がわかりにくいからです。アルコール度数はこれで10度弱ですから、最近人気のストロングチューハイと同じくらいです。
本格焼酎のソーダ割はチリチリ シュワシュワならウイスキーハイボール
ところで本格焼酎のソーダ割は、ウイスキーハイボールのようにシュワシュワにつくるのは難しいところがあります。ウイスキーのアルコール度数は40度前後ありますから、ソーダで4倍に薄めてもアルコール度数は8度あり、ウイスキーの味もしっかり残すことができます。けれども25度が一般的な本格焼酎は、4倍に割るとほとんどソーダ水のようになってしまいます。ベースの本格焼酎の味わいを適度に残してソーダ割を味わうには、2倍~3倍に割るにとどめて、微発泡のチリチリ感を楽しんでください。どうしてもシュワシュワ感が欲しい方は、アルコール度数が35度~40度の本格焼酎選ぶことをおすすめします。
ボタニカルをトッピング
また、本格焼酎のソーダ割にはレモンなど柑橘類の果汁を数滴ふったり、ピール(皮)を落としたりすると、別の表情を楽しめます。キュウリのスライスを落とすとメロンのような香りが出てきます。ミントやスライスした生姜を加えるのもおすすめです。好みのボタニカルをトッピングしてみてください。
いもの品種の香り比べ
香りが立つソーダ割では、品種の違ういもでつくった焼酎の飲み比べもおすすめです。いも焼酎の原料になるいもには、白系(黄金千貫、ジョイホワイト等)、紅系(ムラサキマサリ、ベニハヤト等)、橙系(ハマコマチ等)があります。最近の研究でいもの品種によって焼酎の香り成分が異なることがわかってきました。
白系のジョイホワイトは柑橘系の特徴的な香りが出ます。紅系は甘いバニラ系の香りが出るものがあります。橙系のハマコマチは花やトロピカルフルーツのような華やかな香りがあります。ソーダで割るとこうした違いが一層はっきり出るので、楽しく飲み比べられると思います。
【おまけ】ちょっとお勉強。ウイスキーと本格焼酎の違い
ウイスキーと本格焼酎はどちらも伝統的な蒸留酒ですが、さまざまな違いがあります。
まず、ウイスキー(モルトウイスキー)の原料がモルト(発芽した大麦)なのに対して、本格焼酎はいも、麦、米、そば、黒糖など多様な素材が用いられます。麦焼酎は大麦も使いますが、ウイスキーと異なり発芽していないものです。この素材の多様性が本格焼酎の第一の特徴です。
二つ目の特徴は「麹」を使うところです。ウイスキーも本格焼酎も発酵の前に澱粉を糖分に変える工程が入ります。ウイスキーではこれをモルトに含まれる大量の糖化酵素を用います。一方、本格焼酎はカビの仲間の麹菌を用います。米や麦に麹菌を繁殖させ、酵母を大量に培養した酒母(しゅぼ)と言われるスターターをつくり、続く本発酵へと進みます。日本酒も味噌も醤油など日本の発酵調味料のほとんどが麹菌を使っており、「麹」は日本の発酵文化の大きな特長です。
▼酒母に主原料(いも、麦、米、黒糖など)を投入して本発酵(二次発酵)に進む。10日から2週間かけて発酵させ、アルコール度数は14%~20%にまでもっていく。写真は本発酵中のいも焼酎
蒸留はどちらもシンプルな単式蒸留器を使いますが、ウイスキーは2回ないし3回蒸留するのに対して、本格焼酎はほとんどが1回です。そのかわり本格焼酎は蒸留前の発酵時間を長くとって、発酵液のアルコール度数を高くします。また、ウイスキーはモルトを煮沸し、粗く濾して滓を取り除いた麦汁にしてから発酵、蒸留と進みます。本格焼酎は濾す工程がなく、粘土の高い粥状の発酵液を蒸留します。
▼ウイスキーの発酵に使う麦汁は透明で、もろみ(発酵液)は3日~7日でアルコールは7%くらいになる。固形物はわずかで本格焼酎のどろどろのもろみとは対照的。この違いは蒸留にも大きく影響する
▼かつて本格焼酎づくりで使われていた木製の単式蒸留器(レプリカ)
▼現在使われている本格焼酎の蒸留器。蒸留器内の気圧を下げて沸点を低くした減圧蒸留は軽快な酒に仕上がり、気圧を下げない常圧蒸留は原料素材の風味をそのまま残す濃厚な風味の焼酎になる
▼ウイスキーは銅製の蒸留釜(ポットスチル)で2回ないし3回蒸留する
こうした原料や製法の違いから、本格焼酎は短期間の貯蔵でも味がまとまりおいしく楽しめるようになり、ウイスキーは樽で長い時間をかけて熟成し芳香な味わいとなります。
※記事の情報は2018年6月26日時点のものです。