歩いて楽しむ酒①「シャルトリューズ」~アルプスの麓の修道院でつくられるリキュール~
世界中のオーセンティックなバーには必ず並ぶ名酒の蒸溜所を訪ねたときの模様をレポートします。
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
透明なボトルにグリーンの液色が美しく映える、フランス産のリキュールです。もともとリキュールは修道院などで薬用酒として発達しました。それが薬学の発達とともに「薬」としての役割方解き放たれると、おいしさや美しさを求めるようになります。こうした流れに拍車をかけることになったのが、1800年代後半に欧州のワイン産地が壊滅的な打撃を受けたフィロキセラ禍です。新大陸から入り込んだフィロキセラという害虫がブドウをことごとくダメにしてしまい、ワインやブランデーの供給が滞ります。この時に「カンパリ」のようなリキュールや、スコッチウイスキーが欧州でポピュラーな酒になっていきます。「シャルトリューズ」も例外ではありませんでしたが、今もなお秘伝のレシピに基づき修道士がつくっています。今回は2012年秋に「シャルトリューズ」の蒸溜所を訪ねた時のことをレポートします。
最寄駅はアルプスの麓ヴォワロン(VOIRON)
ボタニカルの肝は「シナモン」「スターアニス」「バニラ」
「シャルトリューズ」にはたくさんのボタニカルが使われていますが、なかでも3大ボタニカルとされているのが「シナモン」「スターアニス」「バニラ」です。受付ロビーから無料で見学できる資料館へと進むと、『シャルトリューズ』だけでなく酒や蒸溜の歴史が順序立てて説明されていました。素材として使われるボタニカルは、欧州がアフリカやアジア、新大陸と貿易範囲が広がるとともに新しいものが次々に取り入れられ、レシピは洗練を重ねていきました。
修道僧に伝わる秘伝のレシピ
世界一長いリキュールの地下貯蔵庫
奥深いアルプス周辺の蒸溜酒文化
アブサンの本場としてはフランスのポンタルリエ (Pontarlier)が知られています。北イタリアでもアルプスに近い地域や、南部ドイツ、オーストリア西部など、スイスを囲む一帯は蒸溜酒づくりが盛んです。放っておけばすぐに失せてしまうボタニカルやフルーツの香りを、蒸溜することで長くとどめておこうとした、蒸溜の本質的な意味を感じられる地域です。
日本でも俄かにクラフトジンに注目が集まっています。ジンはオランダで生まれロンドンを経て広く飲まれるようになったスピリッツです。そこに通底するのがアルプス周辺の魅惑のリキュールであり、ぜひ、一度試して欲しい酒たちです。
おすすめカクテルは「アラスカ」と「サンジェルマン」
そしてレモンやグレープフルーツの果汁と卵白を加えてシェイクする「サンジェルマン」。卵白が入るので酔いがゆっくり回るような気がします。
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